ATLASとは?
今日の医療や物流をはじめとするスピード重視の産業分野では、業務効率化の鍵はリアルタイムの可視化と効率的なトラッキングにあります。 そこで登場するのが ATLAS(Asset Tracking & Location at Scale) です。 IOSEAとの協業により開発されたATLASは、高度なBluetooth®Low Energy(LE)SoCと独自の到来角/出射角(AoA/AoD)アルゴリズム、および三角測位技術を活用し、超広帯域(UWB)に匹敵する精度を実現します。10cm未満の測位精度を達成するとともに、1台のロケータあたり1,000個以上のタグをサポートします。
ATLASの特長は、過酷なRF環境下や高密度環境における堅牢なパフォーマンスです。クルーズ船内のような電波条件が厳しい環境でも、数千規模の資産を追跡しながら、超低消費電力と容易な導入性を両立します。 小売在庫、医療機器、倉庫内の荷物管理などにおいて、ATLASは既製のロケータ、カスタマイズ可能なタグ、IOSEAのSEAgnal™リアルタイム位置情報システム(RTLS)マイクロサービスを含む、スケーラブルで現場実証済みのプラットフォームを提供します。 システムはタグ、ロケータ、信号処理ソフトウェア、RTLSバックエンドソフトウェアで構成されます。 また、顧客独自のRTLSバックエンドとも容易に統合でき、業界トップクラスのローカライズ型トラッキング機能を提供します。これにより、企業や産業における資産および人のリアルタイムトラッキング・監視・管理の方法を刷新します。
アセットトラッキングには、ポイントインタイム方式とリアルタイム位置トラッキングの2つのアプローチがあります。 ポイントインタイム方式は、NFCやバーコードなどを用いて、一定のタイミングで位置情報を取得する仕組みです。 一方、リアルタイムトラッキングは、クラウド上で多数の端末から情報を収集する「Find My」アプリのようなグローバル型と、特定環境内に限定したローカライズ型に分かれます。 ATLASはローカライズ型に該当し、三角測位に基づく到来角(AoA)技術を活用して高精度な位置測位を実現します。 ルネサスは トラッキング & 位置測位向けに幅広い先進ソリューションを提供しています。 用途に最適なソリューション選定については、「 ルネサスの位置情報トラッキングソリューションによる資産管理の革新」ブログをご覧ください 。
なぜATLASなのか — 他のトラッキング手法との違い
- タグ互換性: AoA/AoD対応タグ、Eddystone、iBeaconなどのレガシータグに対応するほか、柔軟な導入を可能にする独自のATLAS/ATLASlite方式にも対応します。
- 高密度トラッキング: 1台のロケータあたり1,000個以上のタグをサポートし、最大500回/秒の更新頻度に対応します。NLOS(非見通し環境)や厳しいRF環境でも、高精度な位置追跡を実現します。
- 柔軟な設置性: ロケータは垂直・水平・斜めのいずれの向きでも設置可能で、最適なカバレッジを確保するために最大20m間隔(標準10m)で配置できます。
- リアルタイム性能: 100Hzの更新レートを実現し、移動中および静止中のアセットを同時に高精度で追跡できます。
- シームレスな統合: 顧客既存バックエンドやIOSEA RTLSシステムと容易に接続でき、迅速な導入を支援するツールも提供します。
- コストと効率性の優位性: Bluetooth LEベースでUWB相当の精度を実現し、バッテリ消費とコストを抑えながらROIを最大化します。
- 効率的なプロビジョニング: UWBやチャネルサウンディングと比較して必要なノード数が少なく、導入計画を簡素化できます。
ATLASコンポーネント
タグ
ATLASは、既製タグおよびカスタム設計タグの双方に柔軟に対応します。 当社のBluetooth LE SoCは優れたコイン電池寿命を実現しており、使い捨てタグ用途およびバッテリー交換/充電可能タグ用途の両方をサポートします。
ATLAS向けタグオプション:
- 充電式タグ(DA1469x): 高性能位置トラッキング向けに設計された充電式(二次電池駆動)Bluetooth LEタグで、「 アクセスおよび追跡のためのユーザーバッジ」 ソリューションをベースにしています。 3つのCPUコア(Arm® Cortex-M33F®、M0+)、統合電源管理ユニット(PMU)、外部センサ統合を可能にするセンサノードコントローラを搭載しています。 SEAgnal DSP向けに最適化され、高品質な信号処理を実現します。RSSIレンジングおよびWiRAレンジングをサポートし、企業およびコンシューマエコシステムの幅広い用途に対応します。

- パフォーマンスタグ(DA14594): Renesasの 「測距およびアセットトラッキング用Bluetooth Low Energyタグ」 ソリューションをベースににしたタグです。クラス最高水準の電力効率と性能を実現し、3つのCPUコア(M33F、M0+)を搭載しています。フェーズベースレンジング、ATLAS向けAoA(到来角)測位、オプションのNFC充電/タグ起動機能、さらに統合センサ制御をサポートし、スケーラブルかつ高精度なアセットトラッキングに最適です。
- 使い捨てタグ(DA1453x):当社の「スマートアセットトラッキングラベル」技術をベースにしたスマートトラッキングラベルです。超低消費電力Bluetooth LEを採用し、待機時300nA未満の低消費電力動作、効率的なスニフモード、コイン電池または印刷型バッテリに対応します。低コストで使い捨て型リアルタイムトラッキングを実現し、統合データロギング機能を備えています。
SEAgnal
信頼性の高い空間インテリジェンスを実現する、スケーラブルで効率的なソフトウェア定義型位置測位技術です。 IOSEA独自のデジタル信号処理フレームワークを基盤とし、無線周波数(RF)モデリングおよびアンテナモデリングとリアルタイム位置測位アルゴリズムを統合しています。
Telemosロケータ
IOSEAと共同開発した「 アセットトラッキング用ユニバーサルBluetooth Low Energy到着角度ロケータ 」アプリケーションをベースにしています。タグと組み合わせることで、迅速な導入と市場投入までの期間短縮を実現します。 本ロケータはAoA、AoD、ATLAS、ATLASliteタグを同時に追跡可能です。 静止タグおよび移動タグの両方をサポートし、柔軟な設置オプションを備えています。 屋外通信距離は100m以上、実証済みで最大300mの通信範囲を確保しています。 SEAgnalパケットあたり2ms未満という高効率処理により、1台のロケータあたり1,000個以上のタグを追跡できます。

主な特長:
- Bluetooth LE AoA/AoD(到来角/出射角)およびEddystone、iBeaconをサポート
- 高度なアンテナアレイによる高分解能位置トラッキング
- コンパクトな産業向けデザイン
- Power over Ethernet(PoE)およびUSB-C給電対応
- SEAgnalエッジパケットフィルタリングおよびマルチパス軽減機能
- セキュアなOTA(Over-the-Air)ファームウェアアップデート
- エッジおよびクラウド統合に対応したSEAgnal™ API
IOSEA RTLSマイクロサービス
ATLAS(Renesas IOSEA)のRTLSマイクロサービスは、ロケータから取得したIQサンプルをSEAgnalアルゴリズムで処理し、AoA/AoD推定およびマルチパス軽減を実行します。ミリ秒レベルの低遅延で、10cm未満の高精度測位を実現します。 エッジ最適化アーキテクチャにより高密度トラッキングに対応し、アンカー/タグのプロビジョニング、ジオフェンシング、リアルタイムデータストリーミング向けAPIを提供します。
ATLASの仕組み

ATLASは、複数の先進技術をシームレスに統合することで、業界トップクラスの測位精度を実現しています。
- AoA送信タグ: パイプラインの最上流では、 ATLAS対応タグが軽量な「バースト」またはパケットを送信します。 これらのタグは、高度な機能を備えながらも超低複雑性設計を採用しており、消費電力を最小限に抑えつつ、数万規模のアセットへのスケール展開を可能にします。
- AoA受信ロケータ: 次に 、ロケータがこれらのバーストを受信し、ベースバンド信号およびサンプルを抽出します。抽出されたデータはロケータ内の信号DSPレイヤーへ送られます。 このレイヤーでは、測位処理に入る前にRFデータのノイズ除去および信号強調を行います。ここでルネサスの無線技術が真価を発揮し、信号品質を向上させることで、後段の高精度処理の基盤を構築します。
- IOSEA RTLSマイクロサービス: その後、データはシステムの数理演算の中核である 信号測位エンジンに入力されます。 高度なアルゴリズムにより干渉およびマルチパス誤差を除去し、1台のロケータあたり1,000個以上のタグ追跡と、毎秒500回を超える更新処理を実現します。 その性能はUWB(Ultra-Wideband)システムに匹敵しますが、コスト効率の高いBluetoothハードウェアで実現している点が特長です。
- IOSEAコミッションツールサポート: 処理されたデータはSignal Backend Services(バックエンド管理サービス)へ送られます。ここではデバイス管理、ロードバランシング、リソース割り当てを実行し、各種APIを提供します。 このバックエンドにより、エッジ、クラウド、またはハイブリッド構成でのエンタープライズ展開が可能になります。 顧客はAPIやダッシュボードを通じて接続し、アセットの可視化、安全監視、業務ワークフローの最適化といったリアルタイムな成果を活用できます。
完全なカバレッジを実現するため、ATLASはマルチロケータ構成を採用しています。 複数のロケータが同一タグを検出した場合、それぞれの角度データをRTLSバックエンドでマルチラテレーション技術を用いて統合します。 これにより、倉庫やクルーズ船のような複雑な環境でも、正確な2Dまたは3D位置を算出し、連続的かつリアルタイムな追跡を実現します。 ATLASデモ動画 では、静止タグおよび移動タグを高精度に追跡する様子を確認できます。
ATLASはどこで活用できるか?
ATLASは、屋内測位に対応したUWB相当の業界トップクラスのアセット追跡ソリューションです。 本ソリューションは、屋内環境において複数の静止および移動アセットを同時に追跡する必要があるあらゆる用途に適用できます。 現在の導入事例として、ATLASは以下のような分野で活用されています。
- 小売店舗: 食料品店などの小売店舗に導入することで、盗難防止と店舗運営の改善に貢献します。 例えば、未精算のまま一定距離を移動した場合にショッピングカートの車輪をロックする機能や、カートの移動を追跡して顧客行動を分析する用途などがあります。
- ホスピタリティ: ATLASは、21フロア以上のクルーズ船で4,300人の乗客を追跡する、世界最大規模のAoA導入事例などの実績があります。 ホテル、クルーズ船、ショッピングモール、リゾート施設などのホスピタリティ分野において、顧客サービスの高度化に活用できます。 ATLASは屋内環境に最適化されていますが、ロケータを適切な角度で配置することで、半屋外エリアにもカバレッジを拡張できます。
- 倉庫・ビル管理システム: 倉庫や建物内で複数のアセットや人の位置を高精度に追跡できます。既存のバックエンドシステムとも容易に統合でき、スケーラブルかつコスト効率の高い屋内位置サービスを実現します。
- 病院: 病院では、移動可能なアセットの約10~20%が所在不明になると推定されており、これにより年間ベッド1床あたり約4,000ドルのコストが発生しています。 ATLASを導入することで、ベッド、医療機器、患者、医師、看護師などをサブメートル精度で追跡でき、機器の再購入コスト削減、患者対応の迅速化、スタッフの業務効率向上に貢献します。 ジオフェンス機能を活用して院内ドアのセキュリティ管理にも利用できます。
- 家畜管理: 米国では毎年約390万頭の牛が失われているとされています。 ATLASは農場における家畜管理にも有効で、健康状態を監視・レポートするセンサと組み合わせた追跡が可能です。 1ロケータあたり1,000以上のタグを処理できるため、大規模農場でもスケーラブルに運用できます。
- タイヤ空気圧監視システム(TPMS): ATLASは、タイヤの位置追跡と空気圧のリアルタイム監視を可能にし、安全性の向上とスマートフリート管理における予知保全を支援します。
ATLASはBluetoothベースの高精度技術によりアセットトラッキングを再定義し、UWBのような高コスト・高複雑性を伴うことなく、サブメートル精度、大規模スケーラビリティ、そしてシームレスな統合を実現します。 インベントリ、設備、人員の管理において、ATLASは位置データを業務に活用できる情報へと変換し、効率化と高度な意思決定を実現します。
ATLASをご体験ください。 デモをご希望の場合は営業担当までお問い合わせください。 ATLASの詳細および機能については、 大規模資産トラッキングおよび位置測位(ATLAS)をご覧ください。

