アナログおよびミックスドシグナル製品を長年提供してきたルネサスは、高度な車載安全システムや産業用ロボットから、AIを活用した民生機器やインフラに至るまで、新たな市場の創出に貢献してきました。多くのアナログ半導体ベンダが特定分野に注力する一方で、ルネサスはアナログ、パワー、組み込みプロセッシング、メモリインタフェース、コネクティビティ、プログラマブル技術を組み合わせたシステム指向のポートフォリオを構築し、さまざまなアプリケーションのニーズに応えるソリューションを展開しています。こうした幅広い製品群を組み合わせて、実際のシステム設計に深く入り込んだ統合力を発揮できることが、ルネサスの大きな強みとなっています。
このビジョンをけん引する新たなリーダーとして、Peter Jenkins は2026年にヴァイスプレジデント兼アナログ&ミックスドシグナル担当ジェネラルマネージャーに就任しました。Jenkinsのこれまでのエンジニアとしての歩みは、現在率いる事業の多様性を映し出しています。Jenkinsは、タイミング技術分野でキャリアをスタートし、複数の企業を経てルネサスに加わりました。その後、高度に専門化された垂直統合型ビジネスの運営に携わり、ルネサスのスタンダードプロダクト部門全体の指揮も執ってきました。こうした経験を通じてJenkinsは、物理現象を1と0で表されるデジタルの世界へと変換する、より広範なアナログ技術領域への理解も深めていきました。 新たな役割についてJenkinsは次のように語ります。
「ルネサスは、顧客が期待する基本的な技術基盤を提供するだけでなく、その上で新たな価値を創出するための支援も行っています。幅広い製品群、高い設定自由度、そしてシステムレベルでの発想。この組み合わせこそが、ルネサスならではの強みです。」

強みを組み合わせ、新たなソリューションを創出
Jenkinsが語るように、ルネサスのアナログおよびミックスドシグナル事業は、単なるコンポーネントのラインアップではありません。多様な技術を組み合わせることで、ますます複雑化するシステムレベルの課題解決を可能にする基盤となっています。そのポートフォリオは、オペアンプ、コンバータ、スイッチ、マルチプレクサ、アイソレーション製品に加え、コンフィギュラブルアナログプラットフォーム、センサー、高速メモリインタフェース、耐放射線製品まで幅広くカバーしています。これらに共通するのは、幅広い技術の多様性と、それらをシステムとして統合できる点です。ルネサスは個々のコンポーネント性能の向上だけに注力するのではなく、顧客のシステム設計全体を視野に入れたソリューションを提供しています。
その考え方を示す一例として、ルネサスは従来のアナログ製品とコンフィギュラブル技術やプログラマブル技術を組み合わせることで、ハードウェアシステムの設計や製造のあり方そのものを見直せる環境を提供しています。GreenPAK™、ForgeFPGA™といった製品ファミリは、この戦略の中核を担っています。これらの製品により、顧客はアナログおよびミックスドシグナル機能をカスタマイズして統合し、最適化されたソリューションを実現できます。ルネサスは、Go Configureソフトウェアハブと呼ばれる統合設計環境を通じて、これらの製品ファミリをサポートしています。Jenkinsは、コンフィギュラブルハードウェアの設定、シミュレーション、プログラミングを行えることから、これを「イノベーションの中枢」と表現しています。「
「Go Configureは、イノベーションを生み出すための出発点です。ハードウェアエンジニアの発想力を引き出し、単にカスタムソリューションを開発するだけでなく、本当に必要とするソリューションの実現を可能にします。」

アナログ技術の強みをさまざまな市場へ展開
コンフィギュラブル技術の価値は、新たなAIアプリケーションの分野でさらに高まっています。エッジAIやフィジカルAIシステムの普及が進む中、エンジニアは、現実世界と直接やり取りできる小型で省電力かつ高い適応性を備えたアナログソリューションを求めています。具体的には、センシングや信号調整、パワーシーケンス、モータ制御、さらにはAIコンピューティングシステムと外部環境をリアルタイムでつなぐインタフェース機能などが含まれます。
ルネサスにとって、これはさまざまな市場における新たな成長機会につながっています。特に車載分野ではソフトウェア定義型車両(SDV)が進化を続けており、実世界の状況をデータ化し、中央集中型処理につなげるセンサーリッチなゾーン型アーキテクチャへの進化が進んでいます。産業オートメーションやロボティクスも同様に重要な市場であり、特にヒューマノイドロボットは今後の大きな成長分野として期待されています。Jenkinsは、自動車のセンシングシステムと将来のヒューマノイドプラットフォームには多くの共通点があると考えています。いずれも、現実世界と高度な処理システムを結び付けるために、大規模なセンシングネットワークとアナログフロントエンド技術を必要としているためです。
「自動車で培われてきた技術は、最終的にはヒューマノイドにも応用されていくでしょう。センシングネットワーク、インテリジェンス、そして現実世界との相互作用、そのすべてです。ヒューマノイドは、人間のような機能を実現するための頭脳と、それを支えるセンシングネットワークを備えることになります。」
民生機器向けエッジAIも有望な分野のひとつです。ルネサスの技術はすでに、ウェアラブル機器やヒアラブル機器、AR/VRプラットフォーム、スマートコンシューマデバイスなど、エッジAIを活用する幅広いアプリケーションで使われています。

AIデータセンターと宇宙分野における次世代アプリケーションを支える
ルネサスは、AIインフラおよびデータセンター分野での事業拡大も進めています。同社のメモリインタフェース事業は、RDIMMチップセット市場で高い競争力を有しており、世界中のDRAMサプライヤやサーバメーカと緊密に連携しています。また、AI中心のサーバアーキテクチャを支える高速アナログインタフェースやデータファブリックの領域でも、新たな事業機会を模索しています。
Jenkinsの担当領域には、耐放射線技術も含まれています。ルネサスは、電源、RF、ADC/DACなど宇宙向けの幅広い耐放射線対応製品群を提供しています。さらにルネサスは、拡大を続ける低軌道衛星市場においても事業機会を追求しています。この市場では、商用グレード製品と完全な耐放射線対応製品とのギャップを埋めるデバイスが、衛星配備の拡大に伴って求められています。

設計支援の強化
ソフトウェアツールやデジタル統合がより重要となりつつあるため、ルネサスはマイコンやソフトウェア開発環境にとどまらず、アナログおよびミックスドシグナル事業にもデジタライゼーション戦略を広げていく方針です。
Go Configureソフトウェアハブは、GreenPAKおよびForgeFPGA向けの統合グラフィカル環境を提供し、エンジニアがプログラミング言語やコンパイラを用いずに、完全にグラフィカルな設計プロセスで機能の試作を迅速に行えるよう支援します。一方、ルネサスの非接触角度センサー「誘導型位置センサーIC」の設計ツール「ICOT」では、顧客が独自の誘導センシングレイアウトを設計・シミュレーションできるほか、ルネサスのアプリケーションエンジニアと直接連携しながら、より高度な最適化支援を受けることができます。
Jenkinsはまた、アナログ事業の役割について次のように述べています。「ルネサスのデジタライゼーション戦略をさらに発展させていくうえで、アナログ事業は極めて大きな役割を担います。Go ConfigureソフトウェアハブやICOTは、アナログを単なる部品選定の対象から、システムレベルのイノベーションを実現するためのプラットフォームへと進化させている好例です。」
実際に、これらのツールは今後、ルネサスのクラウドベースの電子機器設計プラットフォームであるRenesas 365に統合されていく予定です。Renesas 365では、アナログ技術がシステムレベルの最適化において重要な役割を果たすことが期待されています。Jenkinsは、将来的にはRenesas 365で利用可能なデバイスのほぼ半数をアナログ製品が占める可能性があると指摘しています。これは、アナログおよびミックスドシグナル事業がルネサスのデジタライゼーション戦略の中核を担っていることを示しています。
同様に重要なのは、ルネサスの新しい開発ツールが、次世代の設計エコシステムへの入り口にもなっていることです。エンジニアが自然にツールや技術を見つけ、活用していく流れを通じて、ルネサスはロボティクスや産業オートメーション、その他のAIアプリケーションにおける高度なセンシングアーキテクチャを実現するうえで、アナログ技術が果たす役割を伝えています。

アナログ統合が切り拓く次世代イノベーション
ルネサスによるアナログおよびミックスドシグナル技術への投資は、単に製品ポートフォリオの拡充を反映しているにとどまりません。自動車のセンシングからヒューマノイドロボット、AIインフラに至るまで、アナログ技術をエッジインテリジェンスとフィジカルAIを支える中核的な実現技術として位置付けるものです。AIシステムは現実世界と相互作用するため、実世界をセンシングし、信号を調整し、電力を供給し、接続する―アナログ技術の重要性は今後ますます高まっていくでしょう。
ルネサスにとって、より大きな価値は顧客のイノベーションを支援することにあります。こうした考え方は、ソフトウェア、ハードウェア、そして高度なシステム統合を組み合わせることで次世代のコネクテッド体験を支える技術を提供し、「To Make Our Lives Easier(人々の暮らしを楽“ラク”にする)」というルネサスのパーパスにも通じています。
Jenkinsは、次のように語っています。「ルネサスは、その幅広い技術力を生かして、特定分野を深く追求することも、幅広い領域に価値を提供することもできます。私は、その両方を最大限に融合したいと考えています。それにより、デジタライゼーションへの取り組みと設計力へのこだわりが大きな価値を生み出すことを示し、ハードウェアエンジニアのイノベーションに対する考え方そのものを変えていきたいのです。」



