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ルネサス エレクトロニクス株式会社 (Renesas Electronics Corporation)

シリコンの枠を超えて:ヒューマノイドロボット設計はチーム戦

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Ivo Marocco
Ivo Marocco
ヴァイスプレジデント兼UX担当ヘッド
公開日:2026年9月8日

世界的な労働力の高齢化と急速に進化するAIインフラという2つのメガトレンドが、ヒューマノイドロボット市場の成長を後押ししています。各種予測では、2035年までの年平均成長率(CAGR)はおおむね35%と見込まれています。この驚異的な成長ペースを維持するには、エレクトロニクス業界がインテリジェントエッジコンピューティングからフィジカルAIへの移行を加速し、クラウドに依存することなく、現実世界の状況を認識し、その場で意思決定できる機械を実現する必要があります。

しかし、求められるのはそれだけではありません。

前回のブログ「インテリジェントエッジからフィジカルAIへ:なぜヒューマノイドロボットがルネサスの次のチャンスなのか」の結びで、私は次のように述べました。「ヒューマノイドロボット分野での成功は、誰が最も高性能なプロセッサを開発するかだけで決まるものではありません。業界全体として、各分野で最高峰の技術をいかに効果的に統合し、相互に補完し合うシステムを構築できるかにかかっているのです。」

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Ivo Marocco Executive Blog

こうした現実が、イノベーションの大きな可能性を生み出しています。なぜなら、ロボットの実用化を成功させるには、多様なエンジニアリングコミュニティが連携し、相互につながる何百ものハードウェアとソフトウェア技術をインテリジェントなシステムへとまとめ上げる必要があるからです。言い換えれば、ルネサスにとってヒューマノイドロボット市場は、単なる半導体ビジネスではなく、新たなエコシステムを構築し、支えていく好機なのです。

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Dexterous Robotic Hand

フィジカルAIが変える設計の方程式

従来の組み込みシステム開発では、演算処理、センシング、電源などのハードウェアサブシステムをそれぞれ別のチームが担当し、個別の技術領域ごとに設計を進め、ソフトウェアの統合は開発工程の後半で行うのが一般的でした。

フィジカルAIでは、その設計の前提が大きく変わります。ヒューマノイドロボットは、周辺環境を常時認識し、数十から数百ものセンサから収集したデータを統合し、複雑な動作を制御し、電力を効率的に管理しながら、ミリ秒単位で意思決定しなければならないためです。

こうしたシステムでは、どのサブシステムも、ほかのすべてのサブシステムの性能に影響を及ぼします。もはや、個々のコンポーネントや機能ブロックを単独で最高のものに仕上げるだけでは不十分なのです。重要なのは、それらを相互に依存し合う、統合された一つのシステムとしてまとめ上げることです。

この違いが大きな意味を持つのは、機能が追加されるほど、システムの複雑性が指数関数的に増していくからです。例えば、より高性能なビジョンシステムを採用すれば、演算性能への要求も高まります。センシング機能を追加すれば、消費電力の配分にも影響します。モーションコントロールが高度になれば、それに合わせてソフトウェアアーキテクチャも変わります。機能安全も、独立した開発項目として扱うのではなく、設計全体を通じて考慮しなければなりません。

エコシステムそのものが製品になりつつある

現時点では、商用ヒューマノイドロボットの実現に必要なすべての技術を、1社だけで保有している企業はありません。

開発者にとって、AIフレームワークプロバイダ、半導体ファウンドリ、半導体ODM、クラウドプラットフォーム、ロボティクスソフトウェア開発企業、システムインテグレータ、標準化団体、そして最終的には実環境で設計を検証する顧客との連携が不可欠です。

このように多岐にわたる連携は、ルネサスにとって初めてのことではありません。実際、自動車業界も、電動化やソフトウェア定義車両(SDV)への移行を進める中で、同じような道をたどってきました。自動車業界では当初、バッテリ、電動モータ、ECUが議論の中心でした。しかしほどなく、EVやSDVの実現には、充電インフラ、熱管理、ソフトウェア、機能安全、ゾーンアーキテクチャ、製造、サプライチェーンの連携までを包含する、まったく新しいエコシステムが必要であることが明らかになりました。こうした新たなエコシステムが成熟して初めて、市場への普及が加速しました。

ヒューマノイドロボットも今、自動車業界がたどったのと同じような大きな転換期を迎えつつあります。

現在は、プロセッサやAIモデルそのものに注目が集まりがちです。しかし、市場での成功の鍵となるのは、増え続ける技術、開発パートナ、設計手法を、各組織がいかに効率よく束ねて連携させられるかです。

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Japanese translated version of the Renesas 365 connects every step of the development cycle with AI-assisted ideation, model-based realization, and cloud-based utilization graphic.

複雑性を紐解く

これまでの経験から分かったのは、複雑な課題を一つの大きな問題として一気に解決しようとしても、うまくいかないということです。そこで、相互に関連するサブシステムに分け、最終的にどのように連携するかを見据えながら、それぞれを個別に最適化していく必要があります。

この考え方は、ルネサスのロボット設計思想にもそのまま生かされています。ヒューマノイドを一つの巨大な設計課題として捉えるのではなく、「ブレイン&モーション」、「センシング」、「アクチュエーション」、「パワーマネジメント」などの領域を軸に開発を進めています。それぞれの領域には固有の技術課題があり、専門的な知見が求められるだけでなく、最適化の目標も領域ごとに異なります。

インタフェース、ソフトウェアフレームワーク、開発ツール、検証手法も、ハードウェアそのものと同じようにシームレスに連携しなければならないのです。つまり、優れたコンポーネントを生み出すことと、それらを一つのシステムとしてまとめ上げることが、同じくらい重要になります。

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Japanese translated version of the graphic showing humanoid development organized around domains such as brain and motion, sensing, actuation, and power management.

サプライヤからパートナへ

こうした開発のあり方によって、エコシステムにおけるルネサスの役割も「開発プロセス全体をよりスムーズに進められるよう支援すること」を主目的にしたものへと変わります。

つまり、半導体ソリューションに加え、サブシステムのリファレンスデザイン、開発キット、ソフトウェアフレームワーク、機能安全に関するリソース、ドキュメントの提供、さらにパートナとの連携を通して、顧客に必要な要素を一つひとつ自力で組み合わせる負担を強いることなく、開発の進行を加速させます。

プロジェクトが高度化するほど、顧客には、さまざまな技術に関する支援が欠かせません。その対象は、センサとアクチュエーションの統合、AI推論とリアルタイム制御の連携から、導入前のハードウェア検証、シミュレーションから実機実装への円滑な移行まで多岐にわたります。

こうした統合の課題を顧客が解決できるようにすることにこそ、システム開発支援の価値があります。

デジタライゼーションはソフトウェアにとどまらない

ルネサスとしてロボティクスエコシステムの一角をどう築いていくべきか検討する中で、繰り返し浮かび上がってきたテーマがあります。それは、デジタライゼーションが、単にソフトウェアプラットフォームやオンライン開発ツールを指すものと捉えられがちだというものです。

ルネサスが考えるデジタライゼーションとは、開発の全工程を切れ目なくつなぐことです。顧客ごとのUX(ユーザエクスペリエンス)に注力することで、調査・選定、評価、設計・シミュレーションから、実装、検証、ライフサイクル管理に至るまで、開発のあらゆる段階で顧客をより的確に支援できるようになります。

こうしたアプローチを踏まえ、ルネサスは、サブシステムのリファレンスデザイン、統合ソフトウェア環境、技術資料、パートナエコシステム、Renesas 365のようなクラウドベースの開発プラットフォームへの投資を進めています。

Renesas 365でロボットハンドの器用性を高める

顧客のUXを重視した取り組みの具体例は、この短いデモ動画でご確認いただけます。ここでは、器用に動くロボットハンドの開発にシステムレベルのアプローチを取り入れています。AIビジョン、触覚センシング、力覚フィードバックを組み合わせることで、ハンドシステムは異なる物体を認識し、作業に応じて把持力を自動で調整します。缶を持ち上げるときは強く、紙コップを持つときはやさしく、卵をつかむときは繊細に力を加えます。Renesas 365は、ハードウェア、ソフトウェア、回路図、ファームウェア、システムロジックを一つのワークフローでつなぎ、開発プロセス全体を通じて設計情報や意図を途切れさせることなく引き継ぐためのデジタル基盤を提供します。

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Screenshot of a system-level approach to the development of a dexterous robotic hand using Renesas 365.

エンジニアは設計をターゲットハードウェアにリモート展開し、プロセッサ使用率、消費電力、フレームレートなどのテレメトリをリアルタイムで監視できます。さらに、開発全体の流れを止めることなく、結果を確認しながらシステム性能を繰り返し改善できます。Renesas 365は、単独で機能するソフトウェアツールにとどまりません。仮想環境での設計と実機への展開を橋渡しすることで、開発者はコンセプトを実際に動くロボットへと、より効率よく形にすることができます。

より良い設計は、より良い開発体験から生まれる

ヒューマノイドロボット市場は、まだ黎明期にあります。それでも、すでに明白な事実があります。複雑なシステム開発にエンジニアが的確に対処できるよう、どれだけ効果的に支援できるかが、成功を大きく左右するということです。

半導体業界でUXというと、ソフトウェアインタフェースやデジタルツールを思い浮かべることが多いでしょう。ルネサスが考えるユーザエクスペリエンスとは、システムのライフサイクル全体を通じて、必要な技術をより簡単に調査・選定し、評価、統合、検証、実装、管理できるようにすることです。

だからこそ、システム開発支援が、フィジカルAI時代の大きな差別化要因になると私たちは考えています。そして、この時代をリードするのは、顧客が開発エコシステム全体を活用できるよう支援し、何百もの技術をシームレスかつ安全に連携させる力を持つ企業なのです。

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