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ルネサス エレクトロニクス株式会社 (Renesas Electronics Corporation)

GaNで省スペース化と高出力を実現する方法

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Stockton Wu blog author photo.
Stockton Wu
プリンシパルシステムエンジニア
公開日:2026年10月1日

パワー設計では、効率を犠牲にしたり、熱に関する問題を引き起こしたりすることなく、より小さなスペースでより大きな電力を供給するという課題に、設計者は引き続き直面しています。 これは48Vアーキテクチャにおいて特に重要です。中間バス電圧を12V以下の電圧レールに効率よく降圧する必要があるためです。

このような状況では、受動部品を小型化するためにスイッチング周波数を高くすると、どのような影響が生じるのかが問題になります。 従来のSi MOSFETでは、スイッチング損失によって効率が低下し、熱設計上の課題が増大する可能性があります。そのため、低電圧GaNを採用することで、このトレードオフを改善するために必要な設計余裕を確保できるかどうかが検討課題となります。

48Vから12Vへの電源プラットフォームにおける低電圧GaNの評価

この課題を検証するため、実用的な48Vから12VへのDC/DCコンバータを評価し、GaNとSi MOSFETをそれぞれ使用した場合の測定結果を比較しました。 今回の評価では、図1に示すように、ルネサスの100V・5mΩ GaN FETRTP100E005G1FLを2個と、ハーフブリッジGaNゲートドライバRRP68150を使用した同期整流降圧コンバータを用いました。 評価ボードEVB-RTP100E005G1FLには、パワーデバイス、ゲートドライバ、インダクタ、入力・出力コンデンサ、および測定用端子が搭載されています。 これにより、効率、電力損失、スイッチング動作、熱性能を実際の回路で評価できます。 図2に、GaN FETの3.3mm × 3.3mmのFCLGAパッケージを示します。

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Photo of the EVB-RTP100E005G1FL 48V to 12V synchronous buck evaluation platform.

図1. RTP100E005G1FLを使用した48Vから12Vへの同期整流降圧コンバータ評価プラットフォーム

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Chip image of the REXGaN low-voltage GaN FET.

図2. ルネサスのREXGaN低電圧GaN FET

項目評価条件
入力電圧48V DC
出力電圧12V DC
最大出力電流18A
比較するスイッチング周波数150kHz、250kHz、500kHz
インダクタ4.7µH
GaN FETRTP100E005G1FL、100V、5.0mΩ
ゲートドライバRRP68150

電力スイッチのオン抵抗は導通損失に大きく影響しますが、電力変換効率を左右する要因はそれだけではありません。 スイッチング性能には、ゲート電荷、ゲート-ドレイン間電荷、出力電荷、逆回復特性、スイッチング速度、デッドタイム、さらに電力ループ内の寄生成分も影響します。

測定比較では、100V・5.0mΩのGaN FETと、市販の80V・5.2mΩのSi MOSFETを使用しました。両者は、ほぼ同じ3.3mm × 3.3mmのパッケージを採用しています。 オン抵抗の公称値と実装面積がほぼ同等であり、FET以外の評価用ハードウェアも同一であるため、有用な比較が可能になります。 これにより、スイッチング特性に関連する要因が性能に及ぼす影響を正確に評価できます。

項目ルネサス製低電圧GaN同等のSi MOSFET
ドレイン-ソース間定格電圧(VDS)100V80V
オン抵抗(RDS(on)、typ.)5.0mΩ5.2mΩ
ゲート電荷(Qg、typ.)5.2nC19nC
ゲート-ドレイン間電荷(Qgd、typ.)50V時:1nC40V時:6.4nC
出力電荷(Qoss、typ.)50V時:24.2nC40V時:39nC
逆回復電荷(Qrr、typ.)0nC129nC

GaNデバイスは、スイッチングに必要なゲート電荷が少なく、出力電荷も小さいうえ、従来のボディダイオードに伴う逆回復電荷がありません。 これらの特性により、ゲートドライバの駆動負荷やスイッチングに伴うエネルギー損失を低減できるほか、デッドタイムの短縮にも寄与します。 スイッチング周波数が高くなるほど、その効果は大きくなり、測定結果に見られる効率と温度面での優位性が拡大する一因となっています。

スイッチング周波数の上昇に伴いGaNの優位性が拡大

専門家チームは、4.7µHのインダクタを使用し、同一の48Vから12Vへの降圧コンバータプラットフォームで、GaNとSi MOSFETを使用した回路を150kHz、250kHz、500kHzの各スイッチング周波数で評価しました。 図3の効率曲線を見ると、150kHzでは両方式の効率に大きな差はありません。

250kHzではGaNを使用した回路の優位性が明確になり始め、500kHzでは、測定した負荷電流範囲の大部分で効率の差がさらに広がっています。 出力電流16Aでは、同等クラスのSi MOSFETと比較して、GaNを使用した回路の電力損失が約3.2W低減しています。

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Charts showing the measured efficiency comparison at 150kHz, 250kHz, and 500kHz.

図3. 150kHz、250kHz、500kHzにおける効率の測定比較

この傾向を見ることで、単一のピーク効率値だけでは分からない、より多くの情報が得られます。 低い周波数では、導通損失と受動部品の損失が総損失に占める割合が大きいため、RDS(on)が近い2つのデバイスでは、同程度の結果になります。 スイッチング周波数が上昇するにつれて、スイッチング特性の影響がより顕著になります。 測定結果の曲線は、コンバータの動作周波数が高くなるほど、GaNによって高い効率を実現できることを示しています。

図4の熱測定結果は、効率の比較結果と一致する傾向を示しています。 150kHzでは、GaNとSi MOSFETソリューション間の温度差は比較的小さいです。 スイッチング周波数が250kHz、500kHzと高くなるにつれて、GaNを使用した回路の温度が低いという傾向が、より明確になります。 500kHz、出力電流10Aでは、同等クラスのSi MOSFETの測定温度は約104°Cに達する一方、GaNでは22°C低くなっています。

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Graphs showing the measured device temperature comparison at 150kHz, 250kHz, and 500kHz.

図4. 150kHz、250kHz、500kHzにおけるデバイス温度の測定比較

図5では、EVB-RTP100E005G1FL評価ボードについて、複数のスイッチング周波数における出力電流に対する効率と総電力損失の特性をさらに示しています。 この評価プラットフォームの特定の条件下では、500kHzでの動作時に、測定された効率が最も高くなります。 電力変換効率のわずかな差が、電力損失には大きな差となって現れることがあります。 総損失を低減することで、半導体の温度を下げ、冷却要件を緩和し、熱設計の余裕を拡大できます。また、許容できる効率目標を維持しながら、スイッチング周波数を高くすることも可能になります。

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Graphs showing the EVB-RTP100E005G1FL efficiency and total power loss trends vs. load and switching frequency.

図5. 負荷およびスイッチング周波数に対するEVB-RTP100E005G1FLの効率と総電力損失の特性

GaNの高周波動作の利点を実際の設計に活用する方法

スイッチング周波数を高くすると、受動部品に必要なエネルギー蓄積量を減らし、コンバータの小型化を実現できます。 しかし、Si MOSFETでは、一般にスイッチング周波数の上昇に伴ってスイッチング損失が増加し、効率の低下や熱設計上の課題につながります。 今回の測定比較は、低電圧GaNを採用することで、高周波動作時の効率低下を抑え、このトレードオフを改善できることを示しています。

システムの設計目標に応じて、設計者は以下のアプローチの中から選択することができます。

  • スイッチング周波数を従来のまま維持する:損失の低減を効率の向上と熱設計余裕の拡大に活用します。
  • スイッチング周波数を高くする:受動部品を小型化しながら、システム固有の要件に応じて、効率、温度、EMI、部品サイズ、コストのトレードオフを最適化します。

この柔軟性は、低電圧GaNがもたらすシステムレベルの重要な利点の一つです。 すべてのGaN設計で可能な限り高い周波数を使用すべきという意味ではありませんが、エンジニアがより広い範囲で有効な最適化を行えるようになります。

GaNデバイスの利点を最大限に引き出すには、Si MOSFETを単純に置き換えるだけでなく、パワーステージ全体を最適化する必要があります。 ゲートドライバはGaN FETの近くに配置し、ターンオン経路とターンオフ経路を適切に制御するとともに、共通ソースインダクタンスと電力ループのインダクタンスを最小限に抑える必要があります。 また、第3象限導通損失と貫通電流のリスクのバランスを取るため、デッドタイムも調整する必要があります。

測定方法も重要です。 インダクタンスの大きいプロービングでは、VGSやVDSの波形が歪み、デバイス端子で実際に発生している状態よりもリンギングが大きく見えることがあります。 この評価ボードは、コンパクトな4層基板レイアウト、RRP68150ゲートドライバ、専用の測定ポイントを備え、こうした実際の評価上の要件に対応しています。

GaNによる効率と性能の向上

48Vから12Vへの同期整流降圧コンバータの評価結果から、RTP100E005G1FLは、オン抵抗の公称値とパッケージサイズが同等クラスのSi MOSFETと近いにもかかわらず、スイッチング周波数が高くなるほど効率面での優位性が拡大することが分かりました。 この結果は、GaNのスイッチング特性がシステムレベルの性能向上につながることを示しています。

今回の評価から得られる重要なポイントの一つは、低電圧GaNによって、パワー設計者が最適化の自由度を高められることです。 高いスイッチング周波数を単なる効率低下の要因と捉えるのではなく、設計手段として活用することで、効率の向上、熱設計余裕の確保、受動部品の小型化を図ったり、これらの利点のバランスを取りながら用途に最適な設計を実現したりできます。

RTP100E005G1FLは、REXGaN 100V GaNファミリの製品です。 2.6mΩ、1.8mΩ、1.2mΩのデバイスを含む、より低オン抵抗の製品とその評価プラットフォームも用意されており、大電流や導通損失の低減が求められる用途において、選択肢が広がります。 1.8mΩおよび1.2mΩの製品には、デバイスの両面から放熱できる両面冷却パッケージが採用されており、電力処理能力を大幅に高めることができます。 また、GaNデバイスの基板が露出した構造により、接合部-ケース間の熱抵抗(RΘJCT)は0.2°C/Wまで低減されます。

設計に関する詳細については、ルネサスの低電圧GaN製品ラインアップ、RRP68150 GaNゲートドライバ、およびEVB-RTP100E005G1FL評価ボードのドキュメントをご覧ください。これらの資料には、回路図、レイアウト設計の指針、試験条件、測定性能データなどが含まれています。

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