0. はじめに

フォトカプラについて、「最低動作入力電圧はいくらですか?」とか「最小入力電流はどのくらいですか?」という質問は珍しくありません。
たしかに、フォトカプラはパルス伝達やスイッチングに使うことが多く、それだけに限って考えると、そういう疑問も起こってきます。

しかし、発光ダイオード1個、フォトトランジスタ1個で構成される、いわゆる「汎用フォトカプラ」は、「アナログ素子」であり、原理的にはどのような小さな入力順電流(IF)でも発光ダイオードが光ればフォトトランジスタに光電流が流れ、それなりに導通します。

それでは、上記のようにパルス伝達やスイッチングに使うときは、どうやってON/OFFを定義したら良いのでしょうか?
それは、普通のトランジスタがアナログ増幅にも使われながら、一方でスイッチング回路にも使われるのとまったく同じで、応用回路の設計によります。

それをここでは次の順に考えてみます。

 

1. 出力側

通常、フォトカプラをパルス伝達やスイッチングに使うときは、出力側の接続は次の図のいずれかになります。

出力回路接続

図1 出力回路接続

両者は、出力信号の極性が異なりますが、伝達特性はほぼ同じです。 どちらを選ぶかは、主に電源投入時の初期状態として、出力を0Vにするか、Vccレベルにするかなどの設計条件で決められます。

一般的にこれらの出力回路では、フォトカプラの出力端子間電圧が所定以上、または負荷抵抗に発生する端子間電圧が所定値未満のときを出力側の「OFF」状態と定義します。

所定値は、フォトカプラが使われる回路の設計仕様として、ユーザが定める値です(以下同様)。

そのため、フォトカプラのフォトトランジスタが非導通のときでも負荷抵抗に流れてしまう電流(フォトカプラの「コレクタ遮断電流」を含みます。)と、それによって負荷抵抗に発生する端子間電圧の許容範囲とから、負荷抵抗値の範囲(最大限)が決まります。

ここで、「コレクタ遮断電流」は、動作周囲温度が25℃上昇するごとにおよそ1桁大きくなりますので、動作周囲温度に注意してください。

次に、フォトカプラが導通して、コレクタに電流が流れ込んだとき、それに対するコレクタ・エミッタ間電圧が所定値未満のときを出力側の「ON」状態と定義します。

その際、コレクタ電流は、定格範囲内で、さらに次の「コレクタ・エミッタ間電圧vs.コレクタ電流」のグラフでも、コレクタ電流に対するコレクタ・エミッタ間電圧が所定値未満になる特性曲線が存在する範囲内でなければなりません。 つまり、次のグラフ上で、「ON」時に流れるコレクタ電流の値とコレクタ・エミッタ間電圧の許容最大値とが交差する点は、最低限いずれかの曲線よりも右下でなければなりません。

コレクタ・エミッタ間電圧vs.コレクタ電流

図2 コレクタ・エミッタ間電圧vs.コレクタ電流

さらに、コレクタ電流値が大きければ大きいほど、そしてコレクタ・エミッタ間電圧の所定値が小さければ小さいほど大きな順電流(IF)が必要ですから、できる限りコレクタ電流は小さく、そしてコレクタ・エミッタ間電圧は大きめでも大丈夫なように設計すると、無理なく動作させることができます。

 

2. 入力側

入力側の「ON」状態とは、上記「図2 コレクタ・エミッタ間電圧vs.コレクタ電流」の中から出力条件によって選んだ特性曲線を得るのに必要な順電流(IF)を入力した状態です。

このときの入力順電流を求める手順は「フォトカプラはこうして使う」の特に「5. 出力電流を流すために必要な入力電流(IF)」をご覧ください。

また、主要な品種については、「フォトカプラ入力順電流の設計」で容易に求めることができます。

求めた順電流が大きすぎる場合には、出力の「ON」状態の設計条件に戻って見直してください。

次に「OFF」状態ですが、そのとき入力順電流の許容最大限は、次の「電流伝達率vs.順電流」の特性曲線から見積もることができます。

電流伝達率vs.順電流

図3 電流伝達率vs.順電流

 

この図で低電流領域を見ますと、CTRは非常に小さくなります。
この領域で、順電流値とCTRとからコレクタ電流を求め、それが出力側の負荷抵抗に起こす電圧降下が出力「OFF」状態の許容範囲内であれば、そのときの順電流値が「OFF」状態としての入力電流範囲内です。

たとえば、規格内の条件で使うと仮定して、IF=0.1mA のときのCTRを上図では最大50%、規格上限の物では仮に100%と推測すれば、コレクタ電流は最大でおよそ0.1mA流れると考えられます。このコレ クタ電流によって負荷抵抗に発生する電圧降下が出力「OFF」状態の許容範囲内であればこの順電流は「OFF」の入力電流ですし、そうでなければより小さ な電流に抑えなくてはなりません。
(この場合には、「フォトカプラ入力順電流の設計」のご使用はお勧めできません。このツールには「ON」させるための余裕が見込まれていますので、実際には計算結果よりも大きな出力電流が流れます。)

つまり、「OFF」状態の順電流の最大限は、出力の設計、特に負荷抵抗の値に依存するので、フォトカプラ単体では規格などに定義することができません。

普通、このように小さな電流はノイズや回路部品のリーク電流として発生しやすく、特に高温で増えて、フォトカプラの誤動作の原因となります。
ですから、その許容最大限は上記のように見積もることができますけれども、実際に流れる順電流は、できればできるだけそれよりも小さく抑えたいところです。

その切り札が、これから説明する「入力シャント抵抗」です。

その鍵は次の「順電流vs.順電圧」の特性曲線にあります。

順電流vs.順電圧

図4 順電流vs.順電圧

上記説明のように、仮にIF=0.1mAが「OFF」時の入力電流の最大限であれば、上図から、常温ではVF=0.9V以下、+100℃でも0.8V以下が「OFF」状態の入力電圧範囲です。
これは一般のディジタル信号のレベルに比べてけっして小さな値ではありませんから、TTLやCMOS論理素子などで駆動すれば容易に満足できます。

 

し かし、そうでない場合には、次の図のように、フォトカプラの入力側に並列に「シャント抵抗」を接続すれば、フォトカプラの入力側に多少の電流が流れても、 フォトカプラの入力電圧をこれよりも十分小さな、たとえば0.5V以下などに抑えてしまうことはそれほど難しいことではなく、そうすれば高温でも誤動作の 心配が格段に少なくなります。

シャント抵抗値

シャント抵抗の値は、次のように決めることができます。
たとえば、出力を「ON」状態にするのに必要な入力電流が仮に5mAであったとします。
そのとき、前段からは5.5mA以上流せるように設計します。

この余分な0.5mAを、「ON」時にシャント抵抗に流すことにします。
発光ダイオードの順電圧はほぼ1Vですから、シャント抵抗の値を2kΩとすれば、0.5mAがシャント抵抗に分流し、発光ダイオードにも必要な5mAが流れます。

この回路では、入力電流が0.4mAを越えるまでは順電圧が0.8Vを越えることはなく、実際にフォトカプラの発光ダイオードには「ほとんど電流が流れませ ん」から、「OFF」時の入力電流の許容最大限はシャント抵抗によってここでは一気に0.4mAまで高めることができたと考えられます。

このような工夫によって、「OFF」時の入力電流の許容最大限を大きくすることができるため、上述のように、出力回路の設計ごとにフォトカプラへの「OFF」時入力電流の許容最大限を見積もることはできますが、実用上はそれほど重要な意味は持たないと考えられます。

しかも、このシャント抵抗は、発光ダイオードに逆電流が加えられたときはそれを吸収し、逆降伏を防ぐ効果があります。
2kΩでしたら、2.5mAでも5Vですから、逆電圧の定格が5Vよりも大きければ、2.5mAを越えるような大きなスパイクノイズなどが流れない限り安全に使うことができます。

また、発光ダイオードの端子間容量を速やかに放電させるので、特に高速なフォトカプラではターンオフ速度の改善にも有利です。

そのため、このシャント抵抗はスイッチング特性を改善する手軽な手段として、一般に広く使われています。

なお、以上の説明は、この件に関するいかなる知的所有権に関しても、その免除を保証するものではありません