ルネサスは、コネクティビティグループをエンベデッドプロセッシンググループに編入しました。両ポートフォリオの強みを、一貫性と柔軟性を兼ね備えた単一の設計プラットフォームに集約することで、顧客体験を一層高めるためです。
今回の決定の本質は「シンプルさ」にあります。スマートホームやIoT、産業IoTの設計者は、消費電力や基板面積、部品点数を抑え、時にはより小規模なチームで設計を最適化することが求められます。複数ベンダの製品を組み合わせるアプローチでは、マイコン、Wi-Fiチップセット、Bluetooth®モジュールが個別最適の組み合わせとなり、技術リソースを圧迫するうえ、互換性や相互運用性のリスクを招きます。加えて、断片化したソフトウェア環境やドキュメント、検証、認証の各フローを管理する複雑さも避けられません。

コネクティビティとプロセッシングを単一の組織の下に再編することで、ルネサスは、通信と演算に加え、セキュリティ、ツール、長期サポートなどを一体で提供する、包括的で整合性を保ったプラットフォームを実現します。この変化を象徴するのが、新製品であるRA6W1とRA6W2の両ワイヤレスマイコンです。
3つの技術基盤、単一のコネクテッドプラットフォーム
Wi-Fi 6の2.4GHz/5GHzデュアルバンド対応「RA6W1」と、Wi-Fi 6およびBluetooth Low Energy(LE)の両通信に対応するマイコン「RA6W2」は、次の3つの技術基盤を一体化した点で、ルネサスのM&A戦略を代表する成果です。
- Arm® Cortex®コアを搭載するルネサスのRAマイコンは、コネクティビティ、ネットワーク、セキュリティスタックなどの基本ソフトウェアを含むFlexible Software Package(FSP)を利用可能で、豊富な周辺機能を実現
- 買収したDialog社(Dialog Semiconductor Plc)は、超低消費電力Bluetooth LE技術を提供
- 買収したCeleno社(Celeno Communications)は、高性能で先進的なWi-Fi技術のノウハウで貢献
RA6W1とRA6W2は、これらの技術が組み合わさり、アプリケーションを動作するためのマイコンと、デュアルバンドWi-Fi 6や、Bluetooth LE、堅牢なセキュリティを、単一デバイス上で実現する製品に結実しました。設計者は、外部ホストマイコンを用いずにコスト効率の高いスタンドアロンのIoTエンドポイントを構築できるほか、RA6W1とRA6W2を上位のホストプロセッサに接続する「コンパニオン」(補助デバイス)として位置づけることもできます。いずれの場合も、共通のツール、ソフトウェア、サポートを備えたRAエコシステム内で開発を進められます。
こうした一貫性は、コネクティビティグループをエンベデッドプロセッシンググループに編入したことによって、直接生み出された副産物です。これらのデバイスをRA6W1とRA6W2としてブランド化することは、既存のRAユーザに対し、新しいマイコンが使い慣れた同じFSPや同一のe² studio環境、開発ワークフローにそのまま組み込めることを示すものでもあります。また、これは開発を簡素化するために、コネクティビティ、プロセッシング、ソフトウェアを単一のプラットフォームに統合するという、当社が進める全社的な取り組みの一環です。将来的には、Renesas 365の下で、これらを包括的に統合・管理できるようになります。Renesas 365は、デバイスの選定からシステム設計、検証、管理に至るまでの主要な開発プロセスを単一の環境で結びつける、オープンなクラウドプラットフォームです。

現場の設計者にとっての利便性を向上
ルネサスは、顧客が製品を展開していく中で、この組織再編は大きなメリットをもたらすと考えています。
例えばスマートサーモスタットやスマートロックは、リモート制御やモニタリングを可能にするため常時接続が必要ですが、利用可能な電力の制約を受けることが少なくありません。RA6W1とRA6W2では、Target Wake Time (TWT)などのWi-Fi 6技術に加え、スリープ状態でも接続を維持できる機能により、ネットワークに常時接続しながら、スリープ状態で最小200nA、Wi-Fiで広く使われている省電力モードであるDTIM10の場合、50µAを大きく下回る低消費電力で動作します。

別の例として、ベビーモニタリング用ウェアラブル機器が挙げられます。子どもに装着した小型センサがBluetooth LEで近くのベースユニットと通信し、ベースユニットがそのデータをWi-Fi経由で保護者のスマートフォンへ中継します。ここでWi-FiとBluetooth LEを共通のプラットフォームに統合することで、エッジノードとゲートウェイの双方を簡素化できます。近距離のペアリングと初期設定はBluetoothで行い、より大容量のバックホールはWi-Fiで担う構成を、単一のソフトウェアスタックとセキュリティフレームワークで支えられるためです。
産業分野では、モータ制御装置メーカはRA6W1とRA6W2の活用により、現場に設置されたコントローラの運用データをクラウドに取り込み、予知保全やOTA(Over-The-Air)によるファームウェア更新に役立てることができます。複数の他社製無線機器を前提に基板を作り直すのではなく、RAマイコンによって培ったモータ制御の知見を活かしたまま、同じエコシステムでコネクティビティを追加できます。

デュアルバンドのインテリジェンスと、Wi-FiとBluetooth LEの共存
RA6W1とRA6W2は、Wi-Fi 6の2.4GHz/5GHzの両周波数帯に対応し、リアルタイムの状況に応じて帯域を動的に選択できます。具体的には、2.4GHzはより長距離で低帯域の通信に適している一方、5GHzは、家庭や混雑した工場フロアなど無線通信が混み合う環境でも、より高いスループット、より安定した信号、より低いレイテンシを実現します。
これらのデバイスはチャネルの状況を継続的に監視し、それに応じてトラフィックを適切に制御することで、無線環境が変化しても安定した高速接続の維持に貢献します。こうしたインテリジェンスは、数十から数百のノードがエアタイムを奪い合う高密度なIoT導入環境で、特に有効です。
また、Wi-FiとBluetooth LEは2.4GHz帯を共用するため、共存に関する課題が生じることがあります。両無線をマイコンに統合することで、ルネサスは共存アルゴリズムを実装し、プラットフォームレベルで厳格な無線周波数(RF)試験を実施できます。これにより、個別の設計で発生する干渉の切り分けやデバッグを顧客側に委ねる必要がありません。リソースが限られたチームにとって、事前に調整し検証したコネクティビティサブシステムを利用できることは大きな利点です。
チップからモジュールまで:顧客のニーズや状況に応じて最適な形で提供
多くの設計会社やメーカが社内に無線設計チームを持たないことを踏まえ、ルネサスはRA6W1とRA6W2を複数の形態で用意しています。
- チップを直接実装する設計でハードウェアのあらゆる要素を最適化したい顧客向けに、Wi-Fi専用と、Wi-Fi/Bluetooth LEコンボの2種類のデバイスを提供
- 無線技術に関する社内リソースがない顧客向けに、内蔵アンテナ、プロトコルスタック、試験済みの無線機能を組み込んだ完全統合型モジュールを提供
事前認証済みのモジュールを利用すれば、アンテナのチューニングや、ラボでの想定外事象の切り分けに追われる必要がなくなり、大幅な時間短縮に加えてコストやリスクの低減につながります。一方で、より高度な要件を持つ設計者は、RA6W1とRA6W2を上位のホストマイコンまたはMPUと組み合わせ、RAデバイスを主にコネクティビティエンジンとして活用することも可能です。対応する無線通信の認証規格は、米国(FCC)、カナダ(IC)、ブラジル(ANATEL)、欧州(CE/RED)、英国(UKCA)、日本(Telec)、韓国(KCC)、中国(SRRC)、台湾(NCC)など主要地域を網羅しており、グローバルベースの規格への準拠と市場投入までの時間短縮を実現します。
連携を強化し、さらなる統合へ
RA6W1とRA6W2は、ルネサスの組み込みプロセッシング戦略の将来像を体現するものです。統合は無線のみならず、先進的なセキュリティ、エッジAI機能、クラウド接続をマイコンに取り込むフェーズへと深化しています。ルネサスは、マイコンサプライヤやコネクティビティベンダにとどまらず、長期の製品ライフサイクル、堅牢なセキュリティ、そして「ウィニング・コンビネーション」の豊富なリファレンスデザインを背景に、低消費電力でコネクテッドな組み込みプラットフォームをワンストップで提供します。
この再編により、コネクティビティ対応ソリューションをより一体的に提供できるようになりました。ルネサスは、セキュアな常時接続デバイスを、より迅速に、より少ない構成要素で、リスクを抑えながら市場投入できるようにすることで、設計者の生産性向上に貢献していきます。
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ニュース 2025年12月10日 |


