Human Machine Interface (HMI)とIoTの境界がなくなりつつある
組み込み機器に求められる機能は、年々高性能化しています。これまで表示や操作を中心としていたHMIも、ネットワーク接続やクラウド連携、OTAアップデートなど、IoT機器としての役割を担うことが当たり前になりつつあります。例えば、EVチャージャ、ビル管理システム、家電製品、産業機器向けHMIなどでは、従来のGUI表示機能に加え、クラウド接続やエッジ処理などが求められるようになっており、複数の処理を同時に実行するため、より高いCPU性能が必要となるケースも増えています。
一方で、すべての製品に高性能なプロセッサが必要というわけではありません。コストを重視したエントリーモデルから、性能と価格のバランスが取れたミドルレンジモデル、より高性能なハイエンドモデルまで市場には様々なニーズがあります。さらに近年では、低消費電力化やサステナビリティへの対応も重要なテーマとなっています。特に欧州市場では、待機時消費電力に対する規制が強化されており、待機時消費電力の削減が重要な設計課題となっています。
こうした製品ラインナップを検討する際に、多くの開発現場で課題になるのが「ハードウェア資産とソフトウェア資産の再利用」です。製品展開のたびにプロセッサを変更し、PCBデザインやソフトウェアを作り直すことは、開発期間の長期化やコストの増加につながるケースも少なくありません。そのため現在は、「HMIとIoTを1つのプラットフォームで実現し、複数の製品へ展開したい」という要求が高まっています。
共通プラットフォームで広がる製品展開
こうした市場要求に応えるために開発されたのが、RZ/G3LおよびRZ/G3SEマイクロプロセッサ(MPU)です。
両製品は共通アーキテクチャを採用したブラザーチップであり、ピン互換性とソフトウェア互換性を実現しています。そのため、ハードウェアおよびソフトウェア資産を活用しながら、製品ごとに最適なデバイスを選択できます。
例えばEVチャージャ市場では、表示機能を持たない家庭向けエントリーモデル、表示付きのミドルレンジモデル、高度なHMI機能を備えたプレミアムモデルといった複数のモデルを同時に展開するケースが一般的です。従来であれば、モデルごとに異なるプロセッサを採用することで、PCB設計やソフトウェア開発を個別に行う必要がありましたが、このような場合でも、共通のPCB設計やソフトウェア資産を活用しながら、RZ/G3LとRZ/G3SEを使い分けることで効率的な製品展開が可能になります。 これにより、開発期間の短縮と製品ラインアップ拡張の容易化を実現できます。
クアッドコアCPUが実現する快適なマルチタスク性能
製品が高機能化するにつれ、CPUにはこれまで以上の処理能力が求められます。HMI機器では、高解像度GUIやアニメーション表示など、よりリッチなユーザーインターフェースが求められています。一方でIoT Edge機器では、クラウド接続やデータ収集、エッジ処理など、リアルタイムに複数の処理を実行することが一般的になっています。つまり現在の組み込み機器では、GUI描画、ネットワーク通信、データ収集といった複数の処理を同時に実行する必要があります。
こうした要求に応えるため、RZ/G3LおよびRZ/G3SEは最大4つのArm® Cortex®-A55コアを搭載しています。これにより複数の処理を同時に実行しながらも、快適なレスポンスを維持することができます。
また、RZ/G3LおよびRZ/G3SEは、それぞれDual Coreのラインアップを用意しており、製品に必要な性能に応じて適切なCPU性能を選択できます。例えば、IoT機能を中心としたエントリーモデルにはDual coreのRZ/G3SE、表示機能を備えたミドルレンジモデルにはQuad coreのRZ/G3SEもしくはDual coreのRZ/G3L、より高機能なHMI製品にはQuad CoreのRZ/G3Lという形で、設計資産を活かしながら製品展開を行うことが可能です。

高機能化と低消費電力の課題
しかし、処理性能が向上すると、多くの場合消費電力は増加します。さらにIoT機器や産業機器の多くは、「処理している時間」よりも 「待機している時間」の方が長いのが実情です。そのため待機中の電力を抑えながら、必要なときにすぐに復帰できることが重要です。RZ/G3LおよびRZ/G3SEは、4つの独立したパワードメインを備えており、ユースケースに応じた電力モードを選択できます。さらにDDR Self Refreshを活用することで、Linuxイメージを保持したまま低電力状態へ移行できます。その結果、1mWクラスの待機電力で約1秒での復帰を実現し、ユーザー体験を損なわない低消費電力システムを構築できます。

HMIからIoT Edgeまで、1つのプラットフォームで
HMIとIoT Edgeの融合が進む現在、開発者は性能だけでなく、製品展開のしやすさも求めています。RZ/G3LとRZ/G3SEは、ブラザーチップによるスケーラビリティ、クアッドコアCPUによる快適なマルチタスク性能、低消費電力と高速復帰を実現しながら、共通のハードウェア・ソフトウェア資産を活用した製品開発を可能にします。
エントリーモデルからミドルレンジモデルまで、効率的な製品展開を支援するプラットフォームとして、次世代HMIおよびIoT Edge機器開発に貢献します。



