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HMIアプリケーション向け大型表示機器をよりインテリジェンスに

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Yasushi Iwase
Yasushi Iwase
Senior Manager
Published: July 29, 2025

あなたは今日一日の生活の中でどのような表示機器を見かけましたか?最近では、通勤電車の中の広告モニターや、コンビニエンスストアのセルフ決済端末、レストランのデジタルメニュー選択、家庭のクッキングマシーンなど、表示機器をもった製品が数多く見られます。組み込みHMI(ヒューマンマシーンインターフェース)アプリケーションの世界では小型ディスプレイが至る所に見られますが、最近では10インチ以上の比較的大きな組み込み表示機器が私たちの生活で、より身近な存在になってきています。このサイズの表示機器では、画像が粗く見えないように、Full-HD(1920x1080ピクセル)クラスの解像度が求められる傾向にあります。また、解像度に加え、機器の高機能化に伴い、表示機器自体をインターネットに接続することも多くなってきています。さらに昨今では、機器自体がユーザーを認識したり、データを集めて分析したりするなど、AIによるインテリジェンス化の需要も高まっています。しかし、このような高機能化にも関わらず、環境保護や資源価格の高騰により低消費電力なエコ製品が望まれてもいます。ルネサスの新しいRZ/G3Eマイクロプロセッサ(MPU)は、これらの多くの課題を解決します。

高解像度でもスムーズな描画と制御を実現

MPUの性能は、表示速度と効率に直接影響するため、スムーズな描画には不可欠です。MPU処理の高速化によって、より複雑な画像をリアルタイムで表示できるようになるため、使いやすさや製品の満足度が向上します。RZ/G3Eに搭載されている1.8GHz動作のクアッドコアArm® Cortex®-A55 CPUは、 HMIアプリケーションや様々なLinuxオペレーションを行うだけでなく、さらにエッジコンピューティングに関する処理も実行する極めてパワフルなCPUです。その演算処理性能は、RZ/Gシリーズ第二世代のミドルクラス製品RZ/G2Eと比べて3.4倍と非常に高く、ハイクラス製品RZ/G2Mにも迫る能力であり、コストパフォーマンスに優れた製品になっています。

また、CPUのほかにHMIの主要機能として、3D GPUのArm Mali-G52(30GFlops相当)、H.264/H.265の圧縮/伸張に対応したビデオコーデックも搭載し、描画機能を強力にサポートしています。また、LCDコントローラは2チャンネルあり、Full-HDサイズの2画面同時出力、独立制御が可能です。出力インターフェースもDual-link対応LVDS、4lane MIPI-DSI、Parallel Digital RGB、と 十分な機能を搭載しています。これらの優れたHMI機能が大画面でもスムーズなグラフィックスを実現します。

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Comparison of CoreMark Values (CPU Core Performance)
図1:CoreMark値(CPUコア性能)の比較
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Main HMI Features and System Block Illustration
図2:主なHMI機能とシステムブロックイメージ

高速通信が不可欠となったエッジデバイス

IoT時代となった今日では、多くのデバイスがインターネットに接続され、表示機器でも高速な通信機能は必要不可欠なものとなっています。RZ/G3EはPCIe Gen3(8Gbps)、USB3.2 Gen2(10Gbps)をサポート しており、既存のRZ/G製品から通信速度が飛躍的に向上しています。PCIe Gen3、USB3.2 Gen2、 ギガビットイーサネットなどの高速コネクティビティインターフェースを内蔵したRZ/G3Eは、クラウドとの5G通信を可能にします。

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Feature Comparison Table of RZ/G3E and other RZ/G MPUs
図3:RZ/G3Eとその他RZ/G製品の機能表

さらにインテリジェンスを加速するArm Ethos™-U55 NPU

昨今では、組み込み機器においても、その機器自体がインテリジェンスを持ち、高付加価値をユーザーに提供することが求められています。これは、すべてのAI処理をクラウドで実行しようとすると、データ通信によりインターネットのネットワークトラフィックが膨大になってしまうからです。RZ/G3Eでは、1.0GHz動作で512GOPSの性能を持つAI推論用NPU(ニューラルプロセッシングユニット) Arm Ethos-U55を搭載し、物体検出、顔認識、人数カウントなどのビジョンAIや、音声AI、センシングAIを行うことが可能です。Ethos-U55のメリットは、AI処理の負荷をメインCPUからオフロードすることで、 より電力効率の高いシステムを構築できることです。

また、このEthos-U55は、ルネサスのRA8P1 MCUにも搭載されており、 ユーザーはルネサスのスケーラブルなAIポートフォリオから製品を選択することができます。RA8P1は、内蔵のNPUとSRAMにより、軽量なAIを高速かつ簡単に実行できる優れたAIアクセラレーションMCUです。一方、RZ/G3E MPUは、外付けの高速DRAMを使用し、 より大規模なAIモデルを高速に扱えるというメリットがあります。それ以上に高いAI性能を求めるユーザーには、RZ/VシリーズのMPUがお薦めです。ルネサスのスケーラブルなAIポートフォリオでは、お客様がご使用になるAIモデルのサイズや必要なAI処理性能に合わせて、最適な製品を選択することができます。

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AI-Centric and Scalable Product Portfolio
図4:製品グループ毎のAI分類

Linuxベースの製品で課題となるディープスタンバイモードからの高速復帰

一般的なHMI製品は、365日24時間フルパワーで連続動作するわけではないため、未使用時の待機消費電力を抑えることが特に重要視されます。サイズの小さな表示機器では、RTOSベースのMCUを使用しているケースが多く、電源オフ状態からの起動時間がとても短いため、未使用時には電源を切ることができます。しかし、表示サイズが大きく、より高機能な表示機器ではRTOSによるプログラム開発が一般的には困難であり、Linuxベースのアプリケーションプログラムが採用される傾向があります。Linuxのプログラムサイズは基本的にRTOSプログラムよりもはるかに大きいため、場合によっては電源オフ状態からシステムを起動するのに10秒以上かかることがあります。そのため、Linuxベースの製品では未使用時に一時的に電源を切っておくということがなかなかできません。それを解決するために、RZ/G3Eでは部分的な電源遮断機能を実装し、DRAMメモリのデータを保持するために必要な最小限の電源を残して、他の領域の電力を大幅に削減するDDRリテンションモードというディープスタンバイ機能をサポートしています。このモードでは、DRAMメモリ内のLinuxプログラムは消えずに残されているため、外部の不揮発性メモリからLinuxプログラムを再ロードする必要がなく、スタンバイ状態から復帰する時間を大幅に短縮できます。また、電源供給を最小限に抑えているため、MPU単体で1mW程度と非常に小さい待機消費電力を実現することができます。

日常生活で頻繁に使用され、さらに高機能化する大型表示機器の分野において、ルネサスの新製品RZ/G3E MPUは、優れたインテリジェンスと低消費電力技術で市場のニーズを満たし、私たちの生活をより便利 にしていきます。

製品の詳しい情報は、 www.renesas.com/rzg3e をご参照ください。