ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)は、このたび、32ビットマイコンRAファミリを拡充し、ハイエンドモータ制御向けに「RA8T2」を発売し、量産を開始しました。RA8T2は、AI向けRA8P1に引き続き、22nmプロセス採用のMRAM(磁気抵抗メモリ)を内蔵したRAファミリの第二弾製品です。ルネサスのモータ制御用マイコンとして最高性能となる1GHz動作のArm® Cortex®-M85コアを搭載したことにより、高いリアルタイム性を実現します。これにより、産業機器やロボットなどのハイエンドモータを、高速かつ高精度に制御できます。さらに、サブコアとして搭載した250MHz動作のCortex-M33コアを使用することにより、モータ制御だけでなく、通信機能や非リアルタイムのアプリケーション処理を1チップで実現できます。
RA8T2は、Cortex-M85コアの高い処理性能と、Arm Helium™テクノロジを活用したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や機械学習(ML)の実装においても大幅な性能向上を実現します。これにより、モータの保守時期を予測するなどのAI機能を搭載でき、計画外のダウンタイム削減し、運用効率の向上に貢献します。さらに、ギガビットイーサネットインタフェースを2チャネルと、EtherCATデバイスインタフェースを搭載したことにより、モータ制御機器に対して、遠隔からの操作、同期動作、機器の故障検知など様々な価値を付加することができます。
RA8T2は、最大1MBのMRAMを搭載しており、従来のフラッシュメモリと同等の速度でアクセス可能です。これにより、ハイエンドMPU(マイクロプロセッサユニット)が外付けのメモリにアクセスしてプログラムを起動するより、高速起動が可能で、部品点数の削減にも寄与します。MRAMは、フラッシュメモリと比較して書き込み速度が速く、耐久性とデータ保持性にも優れています。さらに、Cortex-M85向けに256KB、Cortex-M33向けに128KBのTCM(密結合メモリ)を備えています。TCMはジッタを抑えて高精度なリアルタイム性能を実現し、多数の割り込みや分岐を伴うモータ制御処理においても安定した動作を可能にします。
ルネサスのエンベデッドプロセッシング事業部、事業部長のDaryl Khooは次のように述べています。「RA8T2は、モータ制御分野における当社の長年のリーダーシップをさらに強化する製品であり、卓越した性能と機能を集積しました。お客様がモータ制御に求めるものを的確に理解することで、次世代のFAやロボティクス製品の開発に向けて、当社の多様で高度なモータ制御技術を結集しました。」
モータ制御に最適化された周辺機能
RA8T2は、最大300MHzのPWM機能に対応したタイマ機能を備えており、制御ソフトウェアによる扱いやすさと、インバータ駆動に適した効率的な波形生成を実現します。インバータ駆動向けに最適化されたGPTタイマの相補PWM機能により、複数相(単相・三相を含む)の相補PWM出力、自動デッドタイム挿入、非対称PWM生成、A/Dコンバータやコンパレータとの連動など、制御アルゴリズムの実装を容易にします。さらに、このタイマは位相計数モードを搭載しており、二相パルスエンコーダを用いた軸位置情報が必要なACサーボの制御にも対応できます。RA8T2の16ビットA/Dコンバータは、ユニットごとに専用のサンプル&ホールド(S/H)機能(3チャネル分)を備えているため、三相電流値の高精度な同時サンプリングが可能です。これにより補正処理が不要となり、ソフトウェア負荷を軽減するとともに、制御精度の向上に貢献します。ポート出力イネーブル機能と高速コンパレータを組み合わせ、過電流を検出した際にはPWM出力を即座に遮断することが可能です。遮断後の状態は、インバータ仕様に応じてHi-Z、High、Lowから選択可能です。
RA8T2の主な特長
- CPUコア:最大動作周波数1GHzのCortex-M85(HeliumおよびTrustZone対応)、250MHzのArm Cortex-M33(オプション)
- メモリ:最大1MBのMRAM、2MBのSRAM、Cortex-M85用の256KB TCM、Cortex-M33用の128KB TCM
- アナログ周辺機能:16ビットA/Dコンバータ×2(合計23チャネル、6チャネ分のS/H)、12ビットD/Aコンバータ×2チャネル、高速コンパレータ×4チャネル
- 通信インタフェース:DMA対応ギガビットイーサネット×2チャネル、EtherCATデバイス、USB2.0 FS Host/Device/OTG、CAN2.0(1Mbps)/CAN FD(8Mbps)、I3C(12.5Mbps)、I2C(1Mbps)、SPI、SCI、Octal SPI
- 高度なセキュリティ:RSIP-E50D暗号エンジン、FSBL(First Stage Boot Loader)向けイミュータブルストレージ、セキュアデバッグ、セキュアファクトリプログラミング、DLMサポート、耐タンパ性、DPA/SPA攻撃対策
- タイマ:PWMタイマ14チャネル、高分解能タイマ4チャネル、低消費電力タイマ4チャネル(16ビット× 2チャネル、32ビット× 2チャネル)
- パッケージ:176ピンHLQFP、224/289/303ピンBGA
開発環境
RA8T2の開発環境として、ブラシレスDCモータを使ったモータ制御の評価をすぐに行うことができるキット「MCK-RA8T2」を提供します。モータ開発支援ツール「Renesas Motor Workbench」にも対応しています。本開発キットは、RAファミリおよびRXファミリを含むルネサスの幅広いモータ制御用マイコンで共通の設計プラットフォームのため、さまざまなデバイス間でのソフトウェア資産の共有および再利用が可能です。
ソフトウェアとして、ルネサスのFlexible Software Package(FSP)を利用できます。FSPは、さまざまなRTOSやBSP(Board Support Package)、周辺ドライバ、ミドルウェア、コネクティビティ、ネットワーク、セキュリティスタックなどの基本ソフトウェアに加え、複雑なAI、モータ制御、クラウドのソリューションを構築するためのリファレンスソフトウェアなどを提供することで、迅速なアプリケーション開発を可能にします。ユーザは独自のソフトウェアコードや所望のリアルタイムOSをFSPに統合することができるため、アプリケーション開発の柔軟性を高めることができます。FSPを使用することで、ソフトウェア資産をRAファミリのデバイスへ容易に移行することができます。
ウィニング・コンビネーション
ルネサスは、RA8T2と様々な自社製品を組み合わせ、ドローンなど多彩なウィニング・コンビネーションを提案しています。ルネサスのウィニング・コンビネーションは、ルネサス製品を最適に組み合わせてエンジニアによる設計検証を行っているため、ユーザの設計のリスクを低減し、市場投入までの時間を短縮します。他にも、さまざまなアプリケーション向けに400種類以上のウィニング・コンビネーションを提供しています。詳しくは、こちらをご覧ください。renesas.com/win
モータ制御用プロセッッサについて
ルネサスは、モータ制御用マイコンを数十年に渡り提供し続け、世界中の数千社のユーザに採用され、年間2.3億個以上出荷しています。32ビットのRAマイコンやRXマイコン、16ビットのRL78マイコンの他、64ビットのRZ MPUといった各ファミリからもモータ制御専用デバイスをラインアップしています。さらに、RISC-Vコア搭載のASSPも提供しています。ルネサスのモータ制御用ソリューション全般については「モータ制御」をご覧ください。
RA8T2の詳細は、こちらをご覧ください。renesas.com/RA8T2
以 上
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