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Takashi Asai
浅井 敬
Principal Software Design Engineer
掲載: 2022年10月25日

ルネサスでは、"低消費電力"を実現し、"設計が容易"となる通信ソフトウェア、"評価が容易"となる無線評価ツール等のLoRa®ソリューションをRL78ファミリ、RAファミリ向けに提供しています。

今回は、LoRa®/LoRaWAN®に馴染みのない方向けに、IoTに適した通信のLoRa®/LoRaWAN®の概要と、それに対応したルネサスの低消費電力なLoRa®ソリューションについてご紹介します。

IoTアプリケーション開発での要望

屋外の広範囲に設置した端末の情報の収集、制御を行うようなIoTアプリケーションを考えた場合、一般的に次のような要望が多いのではないでしょうか?

  • 長距離の無線通信を利用して、ネットワークを簡単に構築したい
  • 低消費電力化して、バッテリーの容量や交換頻度を下げたい
  • 端末の情報をクラウドサービス上に収集し、データの解析や可視化をしたい

こうした要望に応えることのできる通信方式の一つとして、LoRa®/LoRaWAN®が注目されています。

長距離無線通信方式:LoRa®

LoRa®は無線変調方式で、最大の特長は長距離の通信ができることです。都市部の障害物の多いところでは数km程度、見通しの良い場所であれば20km以上も通信可能です。

LoRa®は画像のような大きなサイズのデータでなく、モニタリングや制御等の小さなサイズのデータ送信に適しています。例えば、以下のような応用例が挙げられます。

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LoRa® 応用例

長距離・低消費電力な無線通信プロトコル:LoRaWAN®

LoRaWAN®はLoRa®の無線変調方式を利用した通信プロトコル(通信の手順を定義したもの)で、LoRa Alliance®で標準化されています。LoRaWAN®ネットワークは、以下の要素から構成されています。

  • LoRaWAN®デバイス(LoRaWAN®の無線機能をもつスマートメータ等。以下、デバイス)
  • LoRaWAN®ゲートウェイ(以下、ゲートウェイ)
  • LoRaWAN®ネットワークサーバ(以下、ネットワークサーバ)

デバイスはゲートウェイとLoRaWAN®プロトコルを利用した無線で通信します。その後、ゲートウェイからネットワークサーバまではインターネット回線等を介して通信します。ネットワークサーバは、LoRaWAN®のネットワーク全体を管理するサーバで、効率よく安定して通信できるようにするため、各デバイスやゲートウェイで使用する無線関連パラメータ(周波数、通信レート、送受信タイミング等)を制御します。

LoRaWAN®の主な特長として、以下の4点などが挙げられます。

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LoRaWAN®ネットワークの範囲

(1) 長距離通信、低消費電力:LoRa®を利用、間欠動作が可能

LoRaWAN®の長距離通信はLoRa®の無線変調方式を利用することで実現しています。また、LoRaWAN®の低消費電力は主に間欠動作により実現しています。LoRaWAN®の標準的な動作モードでは、デバイスは送信後の所定の時間だけ受信状態となりますが、それ以外は受信状態にする必要はありません。また、ネットワークを維持するために定期的な通信も必要ありません。そのためデバイスは、通常はスリープ状態(最も低消費電力な状態)となり、必要な時にだけ送受信の通信をし、またスリープ状態に戻るという、間欠動作をさせることが可能です。できるだけ間欠動作の間隔を広げ、大部分を占めるスリープ状態の消費電力を下げることで、低消費電力を実現することができます。

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LoRaWAN® 間欠動作

(2) 通信品質・効率向上:周波数、通信レートを動的に切り替え

デバイスは、送信する毎に周波数を切り変えることにより、妨害電波等の影響を受けにくくし、ロバスト性を向上させています。また、通信環境が良くない場合は通信レートを下げて、通信時間を長くする代わりにゲートウェイへの到達性を向上させます。通信環境が良い場合には通信レートを上げて通信時間を短くします。これにより、通信環境に応じて通信品質を保ちつつ通信時間を最適化(最小化)することにより、通信トラフィックを抑えて通信効率を向上させています。

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LoRaWAN®:周波数や通信レートを動的に切り替えて通信可能

(3) 障害物回避:ゲートウェイを動的に切り替え

デバイスは、送信時は周辺の全てのゲートウェイにデータを送信します。ネットワークサーバは、デバイスからデータを受信したゲートウェイの中から信号強度等を考慮して最適なゲートウェイを選択し、そのゲートウェイを経由してデバイスにデータを送信します。このように、デバイスは、通信環境に応じて動的に通信状態の良いゲートウェイに切り変えて通信することにより、障害物等の影響を受けにくく、安定した通信をすることが可能となっています。

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LoRaWAN®:ゲートウェイを動的に切り替え

(4) クラウドサービスとの連携が容易:ネットワークサーバによりクラウドサービスと接続

一般的にクラウドサービスとの接続には、認証や暗号化等の複雑な通信プロトコル処理が必要となりますが、LoRaWAN®ではネットワークサーバがこの複雑な処理を担当してクラウドサービスと通信するため、デバイス側にはクラウドサービス用の通信プロトコルを実装する必要はありません。そのため、LoRaWAN®では、デバイスを簡単にクラウドサービスと連携させることができます。

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LoRaWAN®とクラウドサービスとの連携

ルネサスのLoRa®ソリューション

ルネサスでは、"低消費電力"を実現し、"設計が容易"となる通信ソフトウェア、"評価が容易"となる無線評価ツール等のLoRa®ソリューションをRL78ファミリ、RAファミリ向けに提供しています (※RAファミリ向けは2022年9月より提供を開始しました)。

ルネサスの超低消費電力マイコン(RL78/RA2)とSemtech社のLoRa®トランシーバー(SX1261/SX1262)を組みわせることで、バッテリー駆動で長期間動作を要求されるシステムも容易に構築することができます。

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ルネサスのLoRa®ソリューション

低消費電力

ルネサス製の超低消費電力のマイコン(RL78/RA2)、Semtech社のLoRa®トランシーバー(SX1261/SX1262)、低消費電流設計された通信ソフトエアの組み合わせにより、スリープ時の消費電流は、マイコンとLoRa®トランシーバーを合わせて1uA未満(RL78/G23の場合は0.55uA(*1))を達成しています。LoRaWAN®動作時の大部分を占めるスリープ時の消費電流を最小化できるため、バッテリーの容量/本数の削減によるシステムの低コスト化や、デバイスの動作期間の延長等の効果が期待できます。

*1) 条件の詳細はLoRa®ソリューション for RL78ファミリのウェブサイトを参照して下さい。

設計が容易

LoRaWAN®プロトコルに対応した通信ソフトウェア、ATコマンドで制御可能なサンプルアプリケーション、各種クラウドサービス(AWS, Azure等)と連携してセンサーデータを可視化するサンプルアプリケーション等を提供しています。

RL78, RA2の省電力機能を最大限に活用し、LoRaWAN®プロトコルのタイミング制約を満足するように最適化済みですので、LoRaWAN®プロトコルを利用した低消費電力なIoTアプリケーションを簡単に設計できます。

評価が容易

開発前の消費電力の見積もりや、試作後の無線特性評価、障害発生時のプロトコル解析に役立つ無線評価ツールを提供しているので、開発したアプリケーションの評価が容易です。

提供するソフトウェアは、RL78, RA2の評価ボード(Fast Prototyping Board)に対応しているので、すぐにアプリケーションの評価に着手できます。

 

今回は、IoTに適した通信のLoRa®/LoRaWAN®の概要と、ルネサスの低消費なLoRa®ソリューションについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

LoRa®/LoRaWAN®を利用した低消費なIoTアプリケーションを開発する際は、ぜひルネサスのLoRa®ソリューションをご活用下さい。

詳細については、ルネサスのLoRa®ソリューションのウェブサイト、動画をご用意していますので、ご覧ください。

LoRa®ソリューションのウェブサイト

LoRa®-based Solutions Videos

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RL78 LoRa®ソリューション

この動画では、RL78のLoRa®ソリューションをご紹介します。このソリューションは世界トップクラスの低電力マイコンRL78とLoRaWAN®の組み合わせで真の低電力無線IoTシステムを可能とします。