メインコンテンツに移動

パワーツールやファン製品に求められる「高性能×小型化」―その実現を支えるMCUとは?

画像
Yuki Ueno
上野雄貴
Sr. Staff Engineer, Product Marketing
Published: July 9, 2025

グローバル化や都市インフラの進展に伴い、私たちの生活に身近な製品も高性能化、省エネ化、小型化へと進化しています。建設現場や家庭でのDIYに使用されるパワーツールは、より小型でありながら、高トルク、高応答性、長時間のバッテリ駆動など低消費電力化が求められています。 また、エアコン、掃除機、ドライヤーなどの住宅設備や家電製品も、静音化・高速回転化・小型化が重視されています。

このようなイノベーションを実現する上でこれらの製品の中核となるのがモータ制御システムです。ルネサスの新製品RA2T1マイクロコントローラ(MCU)は、特にベクトル制御などの高度なモータ制御技術において、これらの課題に直接対応します。

パワーツールにおいて120度通電制御のようなシンプルな方法で制御されるブラシレスモータは、ピーク電流やトルク変動などの問題に直面しています。RA2T1の周辺機能を活用して実現するベクトル制御への移行は、これらの問題を克服するのに役立ちます。既存のDCリンク電流検出回路を活用することで、部品点数を少なく実現できる「1-シャント電流検出方式」を可能にします。具体的には、RA2T1はGPTタイマと連携したADC変換開始要求機能を提供し、1-シャント抵抗による電流検出を可能にします。さらに、内蔵のコンパレータとPOEG機能により、異常時にPWM出力を素早く遮断し、システムの安全性を確保します。

画像
Example of a control block diagram
図1: 制御ブロック図の例 

家電製品のファン・アプリケーションでは、静音性、消費電力、高出力が重要な要素です。こうしたニーズに応えるために、モータの3相電流情報を使う、「3/2 シャント抵抗電流検出方式」のベクトル制御により省エネかつ高性能を実現できます。しかし、一般的な1つのA/Dモジュールは順に3チャンネルを変換するため、検出電流値にずれが生じ、制御性能に影響を与える可能性があります。RA2T1 MCUは、3チャンネル専用のサンプル&ホールド回路を搭載しており、タイミングのずれのない同時電流サンプリングを実現します。これは、100,000 RPM以上で動作する高速モータに特に有効で、モータ全体の性能と動作効率の向上に貢献します。

画像
Example of sensorless vector control with 3-shunt current detection block diagram
図2: 3シャント電流検出によるセンサレスベクトル制御ブロック図の例

RA2T1 MCUは、Arm® Cortex®-M23コアを搭載し、RA2シリーズで最高の64MHz周波数で1モータ制御に特化しています。3つチャンネル専用サンプル&ホールド回路搭載の12ビットADC、2つの高速コンパレータ、シングルシャント電流検出用のGPT16タイマ互換性など、最適化されたアナログおよびタイマ機能により、システム設計を簡素化し、全体的な部品コストを削減できます。

画像
RA2T1 block diagram
図3: RA2T1 ブロック図

さらに、RA2T1はQFN24(4x4mm)とコンパクトなパッケージで、幅広い電圧範囲(1.6V~5.5V)で動作し、高精度の内部発振器(±1.0%HOCO)を備えているため、外付け部品と全体的なコストをさらに最小限に抑えることができます。

ハードウェア機能に加えて、RA2T1はRenesas Motor Workbench (RMW)Motor Control Kit (MCK)QE for Motor、 包括的なサンプルプログラムなどのツールにより、広範なソフトウェアと開発サポートを提供し、モータ制御システムの評価と開発を簡素化します。

詳細については、RA2T1の製品ページをご覧ください。また、詳細な技術情報については、ホワイトペーパーをダウンロードしてください。