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Fabio Violante
Fabio Violante
CEO of Arduino
掲載: 2023年9月28日

概要:

  • Arduino のユーザ は、ホビーユーザから企業レベルの活用へと多様化を続けています。
  • Arduino は、ルネサスからの 1,000 万米ドルの出資により、従来の 8 ビットから 32 ビットへ大幅に性能を向上させたArduino Uno R4 を発売しました。
  • これらの進歩により、企業レベルでのArduino製品の採用がさらに加速しています。

ルネサスとの提携が示す、Arduino はホビーだけのものではない

ルネサスは、Arduinoの CEOであるFabio Violante氏に、「ユーザ層の拡大に伴うオープンソース開発環境の進歩」についてインタビューを行いましたので紹介します。背景として、ルネサスは昨年、総額32百万米ドル(1米ドル130円換算で約41.6億円)のシリーズBラウンド資金調達の一環で、Arduinoに10百万米ドル(1米ドル130円換算で約13億円)を出資しました。この提携によりArduinoは、業界最先端のルネサス製MCU/MPU、アナログ・電源・コネクティビティ関連製品のポートフォリオへアクセスすることが可能となり、Arduino製品はホビー向けから本格的なプロユース/企業向けへと急速に拡大することとなりました。

Q: Arduino の使命は何ですか?

Violante氏: Arduino の使命はとてもシンプルで、「複雑なテクノロジを使いやすくすることにより、誰もがイノベーションを起こすことができる環境を実現すること」です。我々のビジネスは全てこの使命を中心に展開しています。この使命は、現在テクノロジを傍観している世代がいることを念頭に置いたものになっています。スマートフォンやタブレットを使うことが一般的な時代になった一方で、クリエイタの数はまだまだ非常に限られています。 Arduino は人々が子供の頃からクリエイティブになれるように、洗練されたプラットフォームと使いやすいツールを提供することを目指しています。

Q: 入社以来、Arduino はどう変わりましたか? また、典型的なユーザ像はどのようなものですか?

Violante氏: 私は2015 年に共同創設者の1人の友人として非公式に Arduino に入りました。 2017 年に CEO に就任してから、現在約4,000 万人いるコミュニティを調べ始めました。これは、毎年約4,000 万人が当社の Web サイトにアクセスし、当社の主要な開発ツールである統合開発環境(IDE)をダウンロードしているということです。

また、我々は売上の内容とユーザコミュニティに関するデータを分析したり、人々が Arduino をどのような用途で使っているのかを知るためにカンファレンス等にも参加しました。そしてこれらの活動を通して、ユーザ層が非常に多様なことを知ったのです。もちろん、趣味で使っているユーザが多いですが、科学・技術・工学・数学・芸術の先生など、教育の領域でも大きなユーザ層があるということもわかりました。Arduino製品によって専門知識を持たずとも作品に頭脳を加えることができることを、多くの方々に理解いただけてきているのです。

Q: Arduinoはホビー向けプラットフォームとしての起源がありますが、現在は企業のお客様からも受け入れられ始めています。この進歩について詳しく教えて下さい。

Violante氏: 何が起こり始めたかというと、ホビーユーザのお客様が Arduino を仕事に取り入れ始めたということです。実際に大企業においてArduinoがどのように採用されているかを知って驚きました。社名は伏せますが、フォーチュン500企業の多くがダッシュボードの設計や生産ラインでのテストなどにArduinoを使い始めました。大手自動車メーカの場合は電動燃料噴射システムのテストなどの用途で使い始めており、大手清涼飲料水メーカでは、ラピッドプロトタイピングのために Arduino 製品を採用いただきました。機能が理解しやすくプラットフォームが信頼でき、より使いやすいプログラミング環境を気に入っていただけるという点で、年々多くの企業にArduino製品をご利用いただいています。

また、一部のお客様からは 弊社のボードを3,000〜4,000個ご購入いただき、産業用プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの最終製品として使用していただいていることもわかりました。この場合、PLCのメインボードはカスタムですが、メインマイコンは所定の位置に取り付けられたArduino 製品です。

Q:これらの新しい利用事例により、Arduinoのユーザコミュニティへのサービス提供のアプローチはどのように変化しましたか? また、この変化にルネサスとの提携はどのように作用していますか?

Violante氏: 私たちは常にお客様の声に耳を傾け、Arduino に足りないものは何かを理解するよう努めています。だからこそ Arduino は製品ラインアップが幅広くなっており、産業グレードのハードウェアやシステムオンモジュール(SOM)を使用し製品の量産を開始する企業をサポートすることが出来るのです。

これは今年の初めに 8 ビットのArduino Uno R3 を補完製品としてArduino Uno R4 を発売することにつながった理由でもあります。Arm® Cortex®-M4 コアをベースとした ルネサスの32 ビットマイコン「RA4M1」を使用して、Uno R3と同じフォームファクタ、同じシールド互換性、5V 動作をサポートし、32 ビットの強力な処理能力を持つ製品です。 また、Uno R4には 2 つのバージョンがあり、うち1 つは Wi-Fi 接続を備えているためクラウド上で安全なプロトタイピングができることで非常に人気があります。また、RAM とフラッシュメモリが追加されたことで、ユーザはコードを削除する必要がなくなり、メモリの制約のために無駄な労力を使うことなく高度なアプリケーションの設計ができるようになりました。

製品がこれほど急速に普及するのを初めて見ました。 7月の発売以降、最初の2週間で数万ユニットが売れたのです。

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UNO R4 WiFi Pinout

Arduino UNO R4 ボード

Q: ルネサスがArduinoへ出資してから1年以上が経過しました。この提携によって、Arduinoおよびそのユーザコミュニティにどのような影響がありましたか?

Violante氏: ルネサスとの関係は素晴らしいものです。ルネサスは Arduino の戦略的パートナーであり、出資元であり、さらには当社の取締役会にも参加しています。組織全体として技術面やソフトウェアスタックの面において、そして顧客としての弊社に対する優先順位の高さにおいても、非常に協力的であると考えています。

企業のお客様にとっても、ルネサスとの提携は非常にメリットがあると言えるでしょう。我々のお客様の多くはすでにルネサスの製品やサービスを利用していますが、Arduino を追加することで、コード開発したり、プラットフォームで利用可能な何千ものオープンソースライブラリの活用するのが簡単になります。

メイカーコミュニティからも感謝の言葉をいただきました。これまでルネサス製品にはあまりなじみがなかったかもしれませんが、特に徹底的に開発を行う最先端のメイカー達からも、嬉しい驚きを感じたとの声をいただきました。高校から大学へとArduinoと共に進学する学生の皆様にもメリットがあると言えます。

我々は、ルネサスのセールスエンジニアやフィールドアプリケーションエンジニア(FAE)のトレーニングを支援できるだけでなく、技術的によく知られた製品の幅広いポートフォリオや、ルネサスのお客様にも直接アクセスすることができます。ルネサスとのパートナーシップは、私たちがサービスを提供しているコミュニティをより豊かにするものであると考えます。

ルネサス:お話をありがとうございました。

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