~最大50V、10セルまで対応。豊富なサポートツールで安全な電池管理を容易に実現~
2016年12月13日

 ルネサスエレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、このたび、電動工具やE-bike(電動アシスト自転車)などの産業機器向けリチウムイオン二次電池の電池管理用に、3~8セルに対応したIC「RAJ240090」と、3~10セルに対応したIC「RAJ240100」を中心とした電池管理ICソリューションを、2017年1月より、発売開始します。

 新ソリューションは、最大50V、10セルまで対応する、ルネサスとしては初めての産業用リチウムイオン電池管理ソリューションです。安全性の高い産業用の電池管理システムを容易に設計できるようにするもので、(1)3~10セルまで対応する産業向けリチウムイオン電池管理ICとしては業界で初めて(注1)マイコンを内蔵しました。これにより、産業用の多様な電池システム仕様に対して、柔軟に対応が可能です。(2)リファレンスソフトウェアやリファレンス回路図、評価ツールや開発立ち上げサポートツールなどをソリューションとして順次提供予定であり、産業機器に初めてリチウムイオン二次電池を採用するユーザにも、システム開発が容易です。さらに、(3)安全性の面では、今回新たに、消費電流25uAという超低消費電力モードをサポートしたため、電池が保管、あるいは放置されていても常時、電池監視機能を動作させることができ、安全の確保が可能です。そして、不具合があった際には、電池を安全に自己遮断するシステムレベルのフェールセーフ機構により、異常が発生した時でもシステムの安全の確保が可能です。 

 産業分野向けの大電流対応の電池管理IC「RAJ240090」と「RAJ240100」の量産は、2017年1月より開始し、2018年1月には合計で月産100万個を計画しております。サンプル価格は製品により異なりますが、例えば3~8セルに対応した「RAJ240090」は1,000円/個(税別)です。

 近年、リチウムイオン電池の大容量、大電流化が進展していることから、電動工具やE-bike、充電式掃除機やドローン、無停電電源装置(UPS) などの産業用途にリチウムイオン二次電池の導入が進展しています。一方で、リチウムイオン二次電池は発火、発煙の危険があるとして、安全性を確保したシステム構築が求められるため、回路構成が複雑になったり、専門的な電池制御ノウハウが必要になるなど、課題がありました。そこでルネサスは、産業用の電池管理ソリューションを提供するにあたり、民生品向け電池残量計ICで培った安全面に対する技術を踏襲し、さらに、豊富なサポートツールを用意することにより、初心者でも早期に安全性の高い電池管理システムが実現できるようにしました。

 新ソリューションの特長は以下の通りです。

(1)マイコンを内蔵しているため、産業用の多様な電池システム仕様に対して柔軟に対応可能

3~10セルまで対応する産業向けリチウムイオン電池管理ICとしては業界で初めて(注1)、マイコンを内蔵。電池残量の計測や、過電圧、過電流などの安全監視機能(アナログフロントエンド部)と、制御用のマイコンを1パッケージ化したことにより、電池制御の電圧測定に必要な高精度A/Dコンバータとマイコンとのマッチングを事前に調整した上で提供するため、キャリブレーション作業の大幅な削減が可能。さらに、マイコン制御により、多様な産業用の電池システム仕様に柔軟に対応可能。また、電源、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)ドライバ、リアルタイムクロックなど、産業用途で必要な周辺機能もチップに取り込んだことにより、電池管理システム部分のトータルコストを30%(当社従来比)削減可能。

(2)豊富なサポートツールにより、初心者でも容易に安全性の高い電池システムの開発が可能

リファレンスソフトウェア、リファレンス回路図、セットアップマニュアルや評価ツールなど、開発立ち上げをサポートする豊富なツールをソリューションとして順次提供予定。これにより、産業用機器に初めてリチウムイオン電池を採用するユーザでも、簡易パラメータ設定などのツール操作でバッテリパック設計が可能。

(3)超低消費電力モードによる常時安全監視と、異常時の安全な遮断による、高い安全性を確保可能

今回新たに、消費電流を25uAまで抑制した超低消費モードを実現したことにより、電池監視機能を電源オフ時でも常時稼働することが可能。電池の劣化や故障などを異常記録として内蔵のマイコンに保存しておくことにより、電源がオンになった際にマイコンからアラームを立てることで充放電を禁止することができるので、リチウムイオン電池の発火、発煙を未然に防止することが可能。

さらに、電池管理ICは、NチャネルMOSFETを電池のプラス側に配置できるシステム構築が可能なため(注2)、電池管理ICが故障した場合でも、システムを安全に停止させることが可能。一方、マイコンが暴走状態に陥った場合でも、アナログフロントエンド部の電池保護機能は、独立した動作が可能のため、フェールセーフを加味した高信頼性システムを実現可能。

 ルネサスは、これまでパソコンやデジタルスチルカメラの分野で、電池管理ICの技術を培ってきました。このたび、この技術を応用した、電動工具やE-bikeなどの産業用アプリケーション向けの「RAJ240090」「RAJ240100」を中心とするソリューションを提供開始します。今後も、さらに大型の産業向けアプリケーションに対応する製品開発を積極的に行い、産業向け電池管理ソリューションを展開してまいります。エネルギー問題の解決の鍵を握るリチウムイオン電池の普及と安心・安全な社会の実現に貢献してまいります。

新製品の仕様は、 別紙(134KB)をご参照ください。

電池管理ICの製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/power-management/battery-management-systems/battery-management.html をご覧ください。

以 上

(注1)業界初とは、産業用アプリケーションの3セルから10セルに対応するリチウムイオン二次電池の残量計測や過電圧、過電流計測などの安全監視機能をもつICとして初めて、マイコンを内蔵の意。2016年12月13日時点

(注2)電池管理ICは、NチャネルのFETを駆動させるため、チャージポンプを内蔵。電池管理ICが故障した場合、チャージポンプの動作が停止し、FETを遮断するので、システムは安全に停止することができる。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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