ここでは次世代のHW-RTOSを紹介いたします。

なお次世代HW-RTOSは現在計画中の技術です。次世代HW-RTOSは、現世代のHW-RTOSの強みを全て継承しています。次世代HW-RTOSはさらに、密結合対応、周期ハンドラ機能サポート、マルチコア対応が加わります。これにより、さらなる高機能、高性能なRTOSを提供します。

1. 密結合型HW-RTOS

まず、密結合型HW-RTOSの特徴を説明します。現世代のHW-RTOSを疎結合型HW-RTOSと呼んでいます。疎結合型と密結合型のハードウェア観点の大きな違いは、疎結合型がCPU、HW-RTOS、CPUレジスタ退避メモリをシステムバスで接続しているのに対し、密結合型では、これらの3つのモジュールを専用インターフェースで接続している点です。こうした構造を採用することにより、ディスパッチを含むシステムコール性能の向上、割込応答性能のさらなる向上を実現し、いずれにおいても、従来のソフトウェアRTOSの10倍以上の性能を達成します。また処理時間の変動幅も疎結合に比較してもさらに小さくなっています。こうしたことからさらにリアルタイム性能の高いシステムを構築できます。

2. 周期ハンドラ

次に周期ハンドラについて説明します。次世代HW-RTOSの周期ハンドラの一つの特徴は、周期ハンドラ機能をハードウェアで実現するため、ハンドラの超高速に起動されます。従って、ハンドラの起動周期を短くすることが可能です。ハンドラの処理内容にも依存しますが、μ秒オーダの周期を指定することが可能です。したがって、高精度のモーター制御における周期制御などに使用できます。次世代HW-RTOSの周期ハンドラのもう一つの特徴は、ハンドラの起動時間に絶対時間を指定することができることです。従ってネットワークで接続された異なるステーション間において、高精度同期処理が可能になります。

3. マルチコア対応

最後に、次世代HW-RTOSにおけるマルチコア対応について紹介します。マルチコア対応HW-RTOSは、シングルコア対応のHW-RTOSの機能と特徴を全て継承しています。したがって、RTOSとして高いリアルタイム性能を発揮します。さらに、CPU間処理、すなわちCPU間同期、CPU間通信が極めて高速で実行され、またこれらの実行時間の変動を非常に小さくすることに成功しました。この結果、マルチコアにより高性能なリアルタイムシステムを実現することが容易になります。具体的には

  • システム処理性能の向上
  • 高いリアルタイム性能の実現
  • 最悪実行時間の定義が可能
  • 低周波数クロックの採用による省電力化

と言った効果を提供します。

マルチコア対応HW-RTOSは、従来のソフトウェアによるマルチコア対応RTOSにおいて問題であった、CPU間同期通信における遅延や精度の課題を解決することができます。マルチコア対応HW-RTOS を使用することにより、1μ秒未満のタイミングでCPU間同期通信が可能になりますので、CPU間でも高精度なタイミング制御が可能になります。異なったCPU上のタスクであっても、共通のRTOS上で定義されますので、タスクがどのCPUで実行しているのかという意識することなく、あたかも同じCPU上で実行しているかのようにソフトウェアを開発することができます。さらに、マルチコア対応HW-RTOSを使用することにより、高精度の制御を実現できるだけでなく、低動作クロックを適用することが可能になるため、消費電力を抑えることも可能です。