持続可能な社会に貢献する製品・技術開発の方針

自動車およびインフラ、インダストリアルIoT産業では、コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電気自動車(CASE)およびデジタルトランスフォーメーション(DX)に代表される急速な変化が起きています。加えて、世界各国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、我々の生活様式も大きく変容し、パラダイムシフトが加速しました。

私たちルネサスは、自動車、Factory Automation(FA)、通信インフラ、医療・ヘルスケアなど、社会の根幹をなすミッションクリティカルな事業分野において、持続可能な社会に貢献する製品やソリューションを提供することをコア事業のひとつとしています。具体的には、環境負荷の低い低消費電力製品や人々の生活を安心安全なものとする製品やソリューションの提供のための製品開発、それを支えるイノベーションのための研究開発に注力して取り組みます。
当社は、2023年に総額2,200億円(Non-GAPPベース、総売上高の約15%相当)を研究開発に投資しました。今後も既存事業の強化とイノベーションの推進のために、同水準の研究開発投資を計画しています。

ルネサスの技術革新(イノベーション)

ルネサスでは、「人工知能(AI)」、「セーフティ&セキュリティ」、「デジタル&アナログ&パワーソリューション」、「クラウドネイティブ」を4つのキーテクノロジーに掲げ、技術革新を推進する取り組みを実施しています。

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ルネサスの技術革新(イノベーション)
  • 人工知能(AI):自動化されたデータセントリックな世界の新たな社会ニーズを満たすため、コンピューティング能力を強化するうえで不可欠な技術です。
  • セーフティ&セキュリティ:安全で安心な社会を実現するミッションクリティカルなアプリケーションの基盤技術となります。
  • デジタル&アナログ&パワーソリューション:自動化とIoT化が様々なセンサ技術とヒューマンインターフェースを進化させるにつれ、あたかも脳 (デジタル)によって神経 (アナログ)が制御される様な、より最適化/統合化された実装を実現する技術です。
  • クラウドネイティブ:低レイテンシのリアルタイム制御と通信を用いて、エンドポイントデバイス上でクラウド・サービスを円滑に実現する技術です。組み込みシステムは、クラウドに接続してクラウド・サービスを実行することによって価値を持つようになります。

人工知能(AI)

ルネサスは、柔軟でスケーラブルな組み込み型人工知能(e-AI)を、エンドポイントのデバイスに導入した最初の半導体サプライヤのひとつでした。安全・安心なライフスタイルと環境にやさしいスマート社会を実現するために、エンドポイントデバイスにインテリジェンスを提供しています。

AIがもたらすエネルギー効率の高いコンピューティング

ルネサスは、自動車や産業用アプリケーションで実績を積み、エネルギー効率の高いAIコンピューティングソリューションを提供しています。

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自動車分野では、ステレオフロントカメラでAI実装を可能とした当社のR-Car SoCが、ヘテロジニアスアーキテクチャを採用し、ピーク性能のバランスを取りながらエネルギー効率の高い最先端のディープラーニング(深層学習)を利用することを可能にしています。ルネサスは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)向けのソリューションを提供する事で、Tier1やOEMメーカーの柔軟な設計を可能にします。
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産業分野では、RZ/VシリーズのMPUが、監視カメラ、製品スキャナ、POS端末カメラなどのアプリケーションで、人物および物体認識のリアルタイムAI処理のニーズに対応しています。 同シリーズは、当社独自の視覚最適化AI アクセラレータである動的再構成可能プロセッサ(Dynamically Reconfigurable Processor-AI, DRP-AI)を搭載しています。 DRP-AIは、動的に再構成が可能であるため、マルチモーダルAIとして顔認識、コンテキスト認識、オブジェクト認識などの要件に柔軟に応えることが可能です。

当社は、学習済みAIモデルの実装を簡素化する開発専用ツールDRP-AI Translatorも提供しています。物体認識によるAI活用の例として、自動的に集計を行うスマートショッピングカートシステム用途や、人間と一緒に安全に作業できる工場のロボット用途、或いは医師の診断を支援する医療用カメラ用途などがあります。
ルネサスの人工知能(AI)については、こちらをご覧下さい。

セーフティ&セキュリティ

ルネサスは、コネクテッド製品における安全と安心に対する高まるニーズにお応えします。当社のセーフティ・セキュリティ技術は、業界最高水準のISO/IECの信頼性および性能基準を満たすように設計されており、あらゆるものがバーチャルにつながる世界において、お客様により安心してお使い頂けるようソリューションを提供しています。

セーフティ&セキュリティ技術で「Root of Trust」を築く

世界中で何十億ものコネクテッドデバイスが普及しサービス需要も増大していく中、堅牢なセーフティとセキュリティに対する巨大な需要が生み出されています。道路や自動車、自宅の安全性、製品の製造から消費に至るまで、コネクテッドデバイスは貴重な計測データを提供することで、私たちの働き方や暮らし方を改善します。

当社では、セーフティ&セキュリティの技術を駆使して、システムやデータの完全性や機密性を確保し、故障やサイバーセキュリティのリスクを軽減することに努めています。お客様の堅牢なシステム構築を支援するために、ミッションクリティカルなアプリケーションにおける機能安全・セキュリティを総合的にサポートします。

ルネサスのセーフティ機能についてはこちらをご覧ください。
ルネサスのセキュリティ機能についてはこちらをご覧ください。

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当社は、IoT、工場・ビルオートメーション、家電製品、ロボティクスなど、多くの産業分野に堅牢なセーフティとセキュリティを提供しています。IEC 61508などの特定用途向けの安全規格をサポートするとともに、対象となる事業や市場のニーズに合わせて、ルートオブトラスト(Root of Trust)を築きそれを活用したセキュリティソリューションを提供しています。

また、当社は、世界をリードする自動車用半導体サプライヤとして、ISO 26262やISO/SAE 21434のワーキンググループに積極的に参加し、自動車システムの機能安全・セキュリティ技術の開発をリードしてきました。自動車関連の実績とコアコンピタンスを活かし、お客様の機能安全・セキュリティのニーズにお応えできる新しいシステムソリューションを積極的に提案しています。


デジタル&アナログ&パワーソリューション

ルネサスは、アナログ+パワー+組み込みプロセッシングの補完的製品ポートフォリオの相乗効果によって、電力消費と部品数、BOMコストを削減しながら、システムの効率と性能を最大化する魅力的なソリューションを提供しています。これらの包括的なシステムソリューションは、お客様の設計と製品化までの時間を短縮し、最終的には持続可能な開発と、世界規模での環境負荷の低減に貢献します。

使いやすいワンストップソリューション

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ルネサスは、これまでにおよそ330種類を超える「ウィニング・コンビネーション」を開発しており、その数は日々増え続けています。お客様はこれら魅力的な製品コンビネーションを使用することにより、開発スケジュールを加速させ短期間での市場投入が可能になります。

これらの製品ポートフォリオの組み合わせは、産業、インフラ、車載、コンシューマ業界など、様々な用途に焦点を当てており、世界中の多くのお客様やパートナーに多様なソリューションを提供しています。当社のウィニング・コンビネーションは、プリント基板(PCB)上で使用される部品点数を削減し、お客様の開発コストや開発工期といった負担を削減することに貢献します。
 

Renesas Lab on the Cloud

お客様が実際のボードを受け取ったり、設計を開始したりする前に、ルネサスソリューションに素早くアクセスできる新たなソリューション「Lab on the Cloud」が生まれました。お客様はリモートで直感的なGUIを介して評価ボードを利用可能となり、これまでのような場所と時間の制約を受けることなく、リアルタイムに評価が可能になります。
ルネサスの定評ある評価ボード、ウィニング・コンビネーション、ソフトウェアといったソリューションをお客様がオンラインでアクセスしてテストできる新たな開発環境です。

クラウドネイティブ

クラウドネイティブ技術により、エンドポイントデバイス上でもクラウド・サービスを円滑に実行することができます。クラウドネイティブの組み込みデバイスを実現するためには、システムソリューションに高度なソフトウェアとIT技術を取り入れる必要があります。ルネサスは、さまざまな業界のクラウドプロバイダーと協力し、セーフティ、セキュリティ、コネクティビティ、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)などの クラウド固有のコア技術の開発を推進しており、そのためのパートナーシップ作りにも取り組んでいます。

コラボレーションを通じたイノベーション

ルネサスは、クラウド・サービスにおけるパートナーとの連携により、様々な組み込みシステムやIoTクラウドソリューションを提供しています。公開されているソースコードには、アマゾンウェブサービス(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、サードパーティのMQTTブローカーなど、主要なクラウドプロバイダーとのセキュアな接続をサポートするミドルウェアスタックが含まれています。当社は、今後もクラウド・サービスのパートナーとの連携を深め、お客様のシステムに最適なソリューションを提供していきます。

ルネサスのパートナープログラムとコンソーシアム

ルネサスは、パートナープログラムとして、ハードウェア中心のRenesas Preferred Partner Programとソフトウエア中心のRenesas Ready Partner Networkをご用意し、多くのジャンルで、ルネサス製品を最適にお使い頂けるシステムおよびソリューションのパートナーをご提案します。また、自動車や産業分野など特定の分野に特化したコンソーシアムも設けています。
当社のパートナープログラムやコンソーシアム活動については、それぞれの製品サイトよりご紹介していますので併せてご覧ください。

オープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティへの積極的参加

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Linux Foundation(リナックスファウンデーション)は、Linuxの成長促進とOSSの共同開発に取り組む非営利のコンソーシアムです。当社は長年Linux Foundationのゴールドメンバーとして、オープンソース開発に貢献してきました。また、プラチナメンバーとして、Automotive Grade Linux(AGL)プロジェクトCivil Infrastructure Platform(CIP)プロジェクトにも深く携わっています。
ルネサスのLinux Foundationへの貢献は、お客様がコミュニティのOSS資産を迅速に設定できるようにするだけでなく、地域のサプライヤから高度なスキルを持つエンジニアを見つけるのにも役立ちます。当社は、Linux Foundationを通じて、イノベーションを共有し、より広範なコミュニティと協力して、世界で活躍するエンジニアのためにOSSの信頼とセキュリティを確保する努力を続けていくことにコミットしています。

イノベーション フォーカス 1(ISSCC 2023発表)

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ルネサスの自動車およびIoT分野における革新的な技術は、ISSCC 2023において以下の論文で採択されました。ISSCCで発表されたこれらの成果が、電力効率とインテリジェンスを通じたグローバルなグリーン化に貢献することを期待しています。また、この2つの論文の採択により、当社は2つ以上の論文を採択した9つのグローバル企業のうちの1つとしても評価を受けています。


Automotive:“A 33kDMIPS 6.4W Vehicle Communication Gateway Processor Achieving 10Gbps/W Network Routing, 40ms CAN Bus Start Up and 1.4mW Standby Power”
(Authors: Kenichi Shimada, Keiichiro Sano, Kazuki Fukuoka, Hiroshi Morita, Masayuki Daito, Tatsuya Kamei, Hiroyuki Hamasaki, Yasuhisa Shimazaki, Renesas Electronics, Kodaira, Japan.)

IoT:“Single Chip, Qi Compliant,40W Wireless Power Transmission Controller using RMS Coil Current Sensing and Adaptive ZVS for 4dB EMI and up to 1.7% Efficiency Improvements”
(Authors: Filippo Neri, Fabio Di Fazio, Giovanni Figliozzi, Jure Menart, Marcin Augustyniak, Renesas Electronics, Zürich, Switzerland/ Gus Mehas, Amit Bavisi, Turev Acar, Renesas Electronics, San Jose, CA)

イノベーション フォーカス 2(AEK 2021基調講演)

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ルネサスのCTO(最高技術責任者)吉岡 真一は、欧州を中心とするカーエレクトロニクス分野の専門家が一堂に会する世界的イベント、Automobil-Elektronik Kongressの25周年の国際大会(シュツットガルト、2021年11月17日)に招かれ、リモート講演を行いました。

大会テーマとして “The automotive industry on its way to the software-defined car”が設定され、自動車産業に訪れるソフトウェアファーストのメガトレンドについて意見が交わされました。ルネサスはこの中で、ハードウェアとソフトウェアの協調設計を推し進める重要性を訴え、特に3つの技術貢献が鍵を握ることを、ハードウェアとソフトウェアに同時発生する進化の過程を見せながら紹介しています。

  • “Easy to Develop” for front-loading software design
    (ソフトウェアの早期設計着手を可能とする設計環境)
  • “Easy to Abstract” for hardware agnostic software platform
    (ハードウェア非依存となるソフトウェアプラットフォーム)
  • “Easy to Scale” for enriching applications and services
    (アプリケーションやサービスを広めるための仕掛け)

 

SDGsへの貢献

ルネサスグループのイノベーションに対する取り組みは、以下のSustainable Development Goalsに貢献しています。

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9 INDUSTRY, INNOVATION AND INFRASTRUCTURE

SDG9.5 「2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。」