スマートグリッド機器向けWi-SUNとPLC通信開発ソリューション

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スマートグリッド関連機器向けソリューション [後編]通信部 「省エネ」が、新たなステップへと踏み出す

前編では、電力スマートメータやHEMS機器が「省エネ」に果たす役割と、「電力の計量」の開発ソリューションを解説した。引き続き、スマートグリッドの根幹となる「通信部」の開発について解説する。国や地域によって異なる通信方式に悩み、「いかに開発工程を短縮するか」の課題に直面しているお客様にルネサスがお応えする。

ルネサスが提供する通信ソリューションは、低消費電力やスケーラビリティを持ち、開発効率及び量産を高めることができる。この特徴を生かし、電力スマートメータ及びHEMS機器に限らず、ガスメータ、センサネットワーク、ストリートライト、ビルオートメーション等といったビル向け(BEMS)、工場向け(FEMS)及び地域全体(CEMS)のエネルギの消費、発電及び蓄電を制御するシステムへのソリューションを提供する。

スマートグリッドの通信がなぜ難しい?

スマートメータやHEMS機器の大きな特徴は通信機能を有することだ。スマートメータを中心に考えた場合、通信の相手は供給側(電力会社)とのAルートと、消費者側(宅内HEMS機器)とのBルートだが(前編の図1参照)、採用される通信方式は国や地域によって異なっている。特にAルートは、標準規格に準拠しつつも、電力会社の独自仕様が盛り込まれることがあるので注意が必要だ。一方のBルートは、さまざまなHEMS機器と通信するため、独自性よりも標準規格に基づいた相互運用性・接続性が重視される。

日本では、Bルートの通信に、主方式に無線通信「Wi-SUN」が採用された。無線が通じない場合の補完方式は電力線通信「PLC」だ。一方のAルートは無線マルチポップ方式と1:N無線方式、そしてPLCの採用が検討されている。海外においては、A・Bルートそれぞれに、メータメーカの独自通信方式やWi-SUN、PLCを筆頭とし、無線マルチポップ方式や2G/3G移動体通信、ZigBee®無線通信などのさまざまな通信方式が検討されている。

Bルートの先につながる宅内機器とは、主に、住宅やビルのエネルギ消費を最適に制御するスマートハウス(ビルディング)の中核デバイスであるHEMS(BEMS)サーバになる。さらにHEMS(BEMS)機器同士が構築する建物内の設備・機器とのネットワークでもWi-SUNとPLCの果たす役割は大きく、本稿では、これからの「省エネ」技術を支える重要な通信方式としてこの二つの通信方式にフォーカスする。

(参考)スマートハウスを特集した記事はこちら

(1)Sub-GHz帯の無線通信「Wi-SUN」

1GHzより低い900MHz前後の周波数帯を使うのが、「Sub-GHz帯無線通信」だ。日本では920MHz帯だが、米国では915 MHz帯、欧州は863 MHz帯と割り当ては若干異なるものの、免許不要で使用できる特定小電力無線帯として、用途が広がっている。遠くまで飛んで、障害物や干渉にも強いという特徴があるからだ。

「Sub-GHz帯無線通信」はWLAN等で使われる2.4GHzや5GHzといった周波数帯域を使った無線通信と比較すると非常に低消費電力である。この特徴を生かして、バッテリーで動作するセンサネットワーク等にも幅広く適用ができる。

このような特徴を生かし、スマートメータだけでなく、M2M(Machine to Machine)、センサネットワークなどのIoT(モノのインターネット)分野での普及を目指し、異なるメーカの機器でも相互接続できるように、「Wi-SUN」という規格が策定された。さらに、この相互接続性を生かし、HAN(Home Area Network)においては、構成する複数の家電製品をネットワーク化し、効率的にHEMSを実現することができる。

Sub-GHz帯の特長 (1) 遠くまで飛ぶ (2) 回折性が高い(障害物に強い) (3)干渉が少ない (4) 低速(多数の端末から通信も維持可能) ちょっとしたデータを遠くまで飛ばすのに最適

Wi-SUNは、「IEEE 802.15.4g」を物理層に採用した低速通信方式で、周辺に1000以上のノードが存在しても通信が維持できることを目指している。MAC層には「IEEE 802.15.4e」を採用している。開発の基となった「IEEE802.15.4」に比べて、スループットの向上、セキュリティ能力の向上等がなされた。

IEEE802.15.4eとIEEE802.15.4gで定めているものは規格としての要求事項だが、Wi-SUNは実際に運用する際に必要な運用規定を抜き出して定めている。ルネサスはこの規格策定の当初から中核メンバーとして活動している。

(2)データ通信用のPLCとは異なる、メータ用電力線通信「PLC」

PLCは、交流電力を供給する電力線に、交流周波数(50/60Hz)よりも高い周波数の信号を乗せることにより通信を実現する(図6)。既設の電力線を用いて通信するため、設置工事が不要という利点がある。また、無線ではスマートメータが金属や厚い鉄筋コンクリートに囲まれていると通信できないこともあるが、PLCでは障害にならない。これらの特徴を生かして、電力スマートメータ以外のビルのオートメーション、ストリートライト等にもPLCは使われている。

図6:PLC通信の基本原理

図6:PLC通信の基本原理

スマートメータ用のPLCは、PC等のデータ通信用に開発されたPLCとは異なる。PC用のPLCは2MHzから30MHzの帯域を使用するが、スマートメータ用のPLCは10kHzから500kHzの帯域を使用する。

スマートメータに使われるPLC方式には、欧州で有力な「G3」と「PRIME」、米国の「IEEE 1901.2」、イタリアの「Meters & More」などがある。ルネサスは、いずれの方式の規格化活動にも参加し、特にG3とPRIMEは規格策定作業の全てのワーキンググループに参加している。日本では、G3方式のPLC(G3-PLC)が採用されている。

(3)様々な機器をつなぐための通信規格ECHONET Lite

Wi-SUNやPLCを使って家電機器、スマートメータ、太陽光発電システムなど繋いでも簡単に制御できるわけでない。各社が独自のデータフォーマットやシーケンスを用いる場合は、相互の情報伝達は成り立たず、制御が行えない。このため、それらを標準化しているのが、エコーネットコンソーシアムが策定した通信プロトコルのECHONET Liteである。 ECHONET Liteはアプリケーションレイヤ(OSIのレイヤ)を主に規定していて、 Wi-SUNやPLCの上位レイヤで共通のアクセスインタフェースで制御できるようにしたものである。この規格を採用することにより80種類以上のHEMS機器を制御できるようになる。 また、ECHONET Liteは家電製品の制御や運転状態及び消費電力の把握が可能である。これにより、ECHONET Liteに対応する家電製品、太陽光発電装置及び蓄電池等が増えると、スマートメータを含めたHEMS機器で、家全体の消費電力をおさえるだけでなく、個々の機器の消費電力の制御や発電、売電及び蓄電の最適制御も可能となる。

つながらなければ、意味が無い。規格と実装は別物?

スマートグリッドのキーとなるのが通信技術である。無線であれ、有線(電力線)であれ、通信は厳密に規格が決められている。では、ある通信方式を採用したら、規格書を入手してそれに従って実装すれば良いかというと、それほど簡単ではない。まず、規格書は非常に分厚いもので、読んで理解するのは一苦労だ。加えて、仕様に記されていない事項もあり、「行間を読む」力が求められる。こうして開発した通信部分は、規格化団体が行う認証試験に掛けられる。認証試験に合格して初めて、規格採用をうたうことができる。

さらに難しいのは、相互運用性・接続性の確保だ。通信は相手につながらなければ、意味が無い。規格の認証試験に合格しても、接続性は規格以外の要素がからんでくるため、接続が確保できるとは限らないのが難しい。そのため、規格化団体が相互接続試験を行っている。

認証試験、相互接続試験の双方ともに、経験が必要とされる分野だ。無線技術に経験が浅い開発者が、規格書だけを読んで実装しても合格は難しい。そのため、すでに認証取得済みのモジュールやプロトコルスタックを用いるのが合格への近道になる。

つながることが価値を生む

ルネサスのスマートグリッド機器向けソリューション―通信部―

厳密に規格で決められているように見えて、実装の違いで接続性に差が出てくる通信部分は開発が難しい。しかし、認証取得済みのルネサスのソリューションを用いれば、開発の工数を大幅に削減できる。削減できた工数を、スマートメータやHEMS機器本体の魅力を高める開発に注力して、競争力の向上を図ることができるだろう。

(1)低消費電力の追求か、多様な機能か、二つのWi-SUNプラットフォーム公認のテストベッドユニットにも認定

ルネサスは、Wi-SUNによるスマートメータ開発のために、二つの開発キットを用意した。RL78/G13を搭載した「Wi-SUN Basic Platform for Sub-GHz band開発キット」(図7)と、RX63Nを搭載した「Wi-SUN Advanced Platform for Sub-GHz band 開発キット」(図8)である。前者は低消費電力化を徹底し、後者は多様な機能を実装できる高いスケーラビリティを特徴としている。

このキットに搭載された無線部分(プロトコルスタックを含む)は、Wi-SUNアライアンスより認証を受けており、さらに公認のテストベッドユニット(CTBU: Certified Test Bed Unit)に認定されている。これは、ルネサスのプロトコルスタックを基準として、他のベンダの製品が接続試験を受けることを意味している。この結果、接続試験を受けたすべての製品が、ルネサスのプロトコルスタックとの接続性が保証されることになる。これらのキットを利用すれば、接続性試験へのハードルが劇的に下がると言う理由だ。

図7.Wi-SUN Basic Platform for Sub-GHz band開発キット

図7.Wi-SUN Basic Platform for Sub-GHz band開発キット

Wi-SUN Basic Platform for Sub-GHz band開発キット

図8.Wi-SUN Advanced Platform for Sub-GHz band 開発キット

図8.Wi-SUN Advanced Platform for Sub-GHz band 開発キット

(2)ハードウェアは一つ、ソフトウェア変更で各種PLC方式に対応

高い開発効率と量産性を提供

PLC用のキットソリューション(図9)は、グローバルPLCモデム「µPD809508」を搭載したPLC評価ボードとソフトウェア・ドキュメントから成っている。µPD809508はG3-PLCとPRIMEの両PLC方式に対応するモデムで、ルネサスのプロトコルスタックはすでに認証を取得している。

付属するソフトウェア・ライブラリの変更により、モデムをG3-PLCの各地域向けの規格(欧州、米国、日本)及びPRIMEに対応することが可能だ。また、ソフトウェアベースであることを生かして、通信アルゴリズムの改良も可能である。PLCで課題となるノイズ、信号減衰に対して、ロバストな通信アルゴリズムを提供する。そのため、使用する国や地域ごとにモデムLSIを入れ替える必要がなくなり、ユーザに高い開発効率と量産性を提供する。

Figure 9. PLC evaluation board

Figure 9. PLC evaluation board

ルネサスでは、今後もモデム、ソフトウェアの開発を続け、単一のモデムでG3-PLCとPRIMEに加えて、米国のIEEE1901.2、そしてPRIMEの最新バージョンであるV.1.4への対応も目指している。

なお、評価用ボードは日本の技術基準適合証明が得られている。外部にPLC信号が漏れ出さない特殊な環境で実験する必要は無く、キットソリューションを2台購入して電力線につなげば、通信を即座に試すことができる。

前編・後編でルネサスのスマートグリッド関連機器のソリューションを紹介した。徹底した低消費電力の計量機能開発や通信の相互接続性など、これまでの開発で多くの工数を割かれた部分がソリューションとして提供されている。

ルネサスのソリューションは、低消費電力、スケーラビリティ、高い開発効率等の特徴を持ち、電力スマートメータに限らず、ガスメータ、センサネットワーク、ストリートライト等の、HEMS、BEMS、FEMS及びCEMSのスマートグリッド関連のエネルギの消費、発電及び蓄電の制御システム実現に貢献できる。

Wi-SUN、PLC通信の利用分野の広がり

「お客様は、真にスマートグリッド機器の機能開発に集中できるため、商品力の強化に貢献できる」、とルネサスは強く確信している。

※Wi-SUN is a registered trademark of Wi-SUN Alliance, Inc., Renesas is licensed to use this trademark.
※ZigBee is a registered trademark of ZigBee Alliance.