進化する自動車の安全を支える-「もう死角はない」 ルネサスのADASソリューション解説

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進化する自動車の安全を支える-「もう死角はない」ルネサスの先進ADASソリューション解説

「人と環境に優しい、安心・安全なクルマ」―ルネサスが車載制御とIT(情報)を融合した技術により、実現しようとしているクルマだ。その実現に向けて、着実に歩みを進めているルネサスの取り組みの一つ、「ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)」ソリューションをご紹介しよう。

期待が高まる「ぶつからないクルマ」

今、ユーザの自動車選びの基準として、性能や快適性、燃費の良さなどと共に、安全に対する関心が高まっている。その背景には、自動車の安全技術が、シートベルトやエアバッグなどの「衝突後の対策(パッシブセーフティ)」に加えて、事故の発生そのものを未然に防ぐ「衝突を回避・軽減するための対策(アクティブセーフティ)」へと進化しているからだ。

中でも、ドライバーの安全運転を助けるための「ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)」は、自動車への搭載が急速に進んでおり、高級車向けの高価なオプションとしてだけでなく、一般車へも普及しつつある。主な機能としては、レーダーやカメラなどのセンサで障害物を検知して自動的にブレーキが作動して止まる(図1)、高速道路や自動車専用道路で先行車に追従して走行する、などが広く知られており、このようなADASを搭載した自動車は、「ぶつからないクルマ」として、社会から大きく期待されている。

図1:「ぶつからないクルマ」の例

図1:「ぶつからないクルマ」の例

進化が進むADAS、その開発課題とは

自動車の周辺を認識する対象は、前方車や走行車線から、歩行者や自転車、そして夜間での利用へと範囲が拡大している。また、後方の安全確認のための「リアビュー」は、いまや「サラウンドビュー(全方位)」へ進化し、駐車時のみならず低速での走行中にも活用されるようになり、現在最も注目を集めている。

サラウンドビューは、車両の前後左右に搭載した車載カメラの映像を合成して、車両周辺の状況を表示してドライバーの運転を助ける自動車の安全システムだ。今後、より高精細な画像を表示できるようにしたり、他の車両や歩行者、障害物をリアルタイムで認識するなどして、さらに高機能になることが予測されている。周囲の物体の認識機能を持ったサラウンドビューを、ルネサスは「サラウンドモニタリングシステム」と呼び、近い将来のADASとして提案している。

社会の関心が高く、ADASのトレンドとして期待されるサラウンドモニタリングシステムだが、このような先進のADAS開発において、多くのお客様が三つの課題に直面する。

  1. センシング対象の拡大とカメラの高画素化、そして高度なアルゴリズムに対応するため演算量は爆発的に増大する(図2)。高い演算能力を有しながら、低消費電力や安全性・高品質を維持しなければならない。
  2. システム開発で比重が高まり続けているソフトウェアの開発効率の向上は、言うまでもなく大きな課題になる。
  3. 複数のカメラを扱うシステムでは、帯域保証や複数カメラの同期も実現しなければならない。「Ethernet AVB (Audio Video Bridging)」は今後の車載高速ネットワークの主流になると期待されているが、これら新規格への対応が必要となる。

図2:演算量と消費電力の課題イメージ

開発の切り札―ルネサスのADASソリューション

「すでにサラウンドモニタリングシステムのデモが完成!」

ルネサスは、実績豊かな車載情報機器向けSoC(システムLSI)「R-Car」シリーズに、ADASに求められるさまざまな機能を強化した「R-Car V2H」を開発した。(2014年8月28日発表のニュースリリースはこちら

「R-Car V2H」は、CPUに「Arm® Cortex®-A15(デュアルコア)」を搭載し、GPU「PowerVR SGX531」と画像認識コアの「IMP-X4」をワンチップ化することで、高演算処理能力と同時に低消費電力をも実現した。最大動作周波数は1.0GHzで、処理性能は7,000DMIPSを誇るが、その消費電力はサラウンドビューの画像合成と4つのカメラそれぞれで歩行者認識を行ったデモシステムの場合でもコア電源は2Wを下回る低消費電力だ。

また、「R-Car V2H」はメモリの一部にデータの誤りを訂正するECCを搭載するなどの安全機構をサポートするに加え、OSでは、高い信頼性を有する米Green Hills Software社(GHS)のリアルタイムOS「INTEGRITY<sup>®</sup>」をいち早く導入し、ハードウェアとソフトウェアの両面から機能安全実現にむけた取り組みを行っている。

「R-Car V2H」のReady to Use(すぐに使える)ソリューションとして、評価用ボードと米Green Hills Software社のリアルタイムOS「INTEGRITY」、それにOSがこのボードをサポートするために必要なBSP(ボードサポートパッケージ)を準備した。一般に画像認識コアのようなハードウェア処理部分は高級言語で操作ができず、プログラミングが難しいとされているが、IMPライブラリを提供することで解決している。お客様は、C言語などからライブラリを呼び出すことで画像認識アクセラレータのハードウェアを意識せずにプログラミングが可能になっている。

また、「IMP-X4」で提供される画像認識ライブラリはオープンソースの画像認識パッケージである「OpenCV」にも対応している。これらのソリューションを活用して、効率を最大限に高めた、「R-Car V2H」を用いたソフトウェア開発が可能だ。

さらに、高解像度カメラの伝送方式として期待される「Ethernet AVB (Audio Video Bridging)」を搭載し、次世代の車載カメラシステムの構築が可能だ。廉価なより対線で高速ディジタル信号の伝送が可能になり、自動車の軽量化とコストダウンに貢献することが期待されている。

「R-Car V2H」で構築した先進のサラウンドモニタリングシステムのデモをご紹介しよう。4つのカメラで車輌の周囲を撮影し、視点変換、画像合成により俯瞰映像を作り出す。現在世に出されているサラウンドビューはアナログカメラ入力でこの俯瞰映像は作られているのが普通だが、このシステムではメガピクセルカメラを入力とし、周辺の歩行者を認識する機能を付与した。アナログ方式のカメラに比べて、圧倒的な高精細度に加えて、色のにじみが起きず、視認性が大幅に向上している。細かな検出物もよくわかるようになった。また、グラフィックスエンジンを使い注意対象の歩行者を強調表示するため、見落としを防いでいる。ビューからモニタリングシステムへ進化した俯瞰映像は、安全向上に大きく寄与しそうだ。

ADASの進化を支え続ける

ルネサスのADAS向けソリューションは、さらなる安心と安全を求めて次世代のソリューションの検討をはじめている。すでに、この「R-Car V2H」で構成するソリューションは、歩行者認識を含むサラウンドモニタリングシステムを実現しているが、次世代では、衝突回避や専用道路での自動運転に対応していきたいと考えている。さらにその次の次、いつか一般道における自動運転が可能になるほどの「ぶつからないクルマ」の実現に貢献することを目指している(図3)。

図3:ルネサスが考えるADASソリューションの進化

図3:ルネサスが考えるADASソリューションの進化

ルネサスは、高い技術力と豊富な実績に裏打ちされたADASソリューションで、新時代のクルマ創りに貢献を続ける。