第2回 高齢化にフォーカスしたIT技術の進化が中国のビッグマーケットを作り出す

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第2回 高齢化にフォーカスしたIT技術の進化が中国のビッグマーケットを作り出す 現在中国全土で注目されている高齢者向け市場。今後ますます旺盛なニーズが続くと予想される大規模な市場である。

成長する高齢化市場

中国は高齢化社会に入りつつある。

中国経済と社会発展に関する第十二次五ヵ年計画の要綱では、2015年に中国の60歳以上の高齢者は総人口の19%を占める2.21億人に達し、2050年前後にピークの4.3億人、総人口の35%に達すると予測されている(図1参照)。そして、この高齢化市場が急速に伸びる勢いを見せている。北京大学高齢者健康と家庭研究センターの研究レポートでは、2020年に全国の消費総額が21兆7454億元にのぼり、そのうち高齢者による消費が14.64%を占め、2050年には全体消費総額67兆8710億元の28.97%を占めると見込まれている。高齢者の年齢構成から見れば、60-74歳の高齢者が60歳以上の人口の76%を占め、高齢者市場を牽引する主な購買力となることが分かった(図2参照)。

写真1:中国の老人ホーム

写真1:中国の老人ホーム

図1:2000~2050年における中国60歳以上の高齢者人口の推移

図1:2000~2050年における中国60歳以上の高齢者人口の推移

図2:60歳及び60歳以上の高齢者人口構造

図2:2050年における60歳以上の高齢者人口構成

子供が求めるより便利な高齢者向けサービス

親の介護問題に直面しているのが彼らの子供たちである。

1970年代に中国で一人っ子政策が実施されてから30年余り経過した今、第1世代の一人っ子たちの親が高齢者の仲間入りをした。そして一人っ子同士が結婚し子供を生んでから、その家庭構成が4人の親、2人の一人っ子1世と1人の一人っ子2世、つまり「421家庭」モデルとなった。

2人の一人っ子1世が仕事に追われると同時に、4人の親の介護や少なくとも1人の子供の世話をしなければならない。彼らは親孝行をすると同時に自分の生活も楽しみたいと考えるために、より便利な高齢者向けサービス製品またはソリューションを求めている。

写真2:421家庭の構造図

写真2:421家庭の構造図

高齢者向け商品・サービスのスマート化が進む

写真3:中国の高齢者向け市場について語る張華正氏

写真3:中国の高齢者向け市場について語る張華正氏

親の介護の必要に迫られる中、高齢者向け市場のニーズが高まり、中国の高齢者市場は伝統的なケアからハイテクを利用したケアへとシフトしており、「スマート養老」(*1)がトレンドとなっている。目下、「スマート養老」施設や高齢者の住みやすいスマートコミュニティに対するニーズとその経済効果はいずれも高いものであり、これからの高齢者介護問題の進展において重要になるであろう。中国高齢者産業に対する調査において、北京太陽城グループ(*2)マーケティングディレクターの張華正氏をインタービューし、高齢者の住みやすいスマートコミュニティについて分析してもらった。

Q: 高齢者向けサービス関連企業の視点から、中国高齢者向け産業の今後の発展の鍵はどこにあると思われるか?

現在、中国高齢化社会のニーズが明らかに現れている。中国高齢者向けサービス業の発展がIT技術と深く結びつくのが必然的なトレンドであり、将来はスマート化に向かって発展していくと思う。通信、管理サービスと住居環境の自動化という三大機能を統合し、システムのインテグレーションを実現し、高齢者向けサービスの産業化、統合化と情報化を追求し、産業の進展と共にサービスの付加価値を向上させれば、養老サービス業はより一層健全で持続的な発展を図ることができる。

Q:「スマート養老」の発展ニーズに応えるため、御社はどのような代表的製品を提供しているのか?

弊社は「スマート養老」のトレンドに対応し、ニーズを掘り起こして、「天使の腕時計」を開発した。現在、親は若い夫婦に4人の高齢者の面倒を見てもらうのは大変であると理解しており、そのため、子供に負担を掛けないように、健康上の問題があっても子供に話さない。逆に子供は親孝行したい気持ちで親の健康状態を知りたい。このような状況に対して、課題解決のサポートを行うのが「天使の腕時計」です。この製品は健康モニタリング、正確な位置測定、行動記録、トランシーバ通話など十数個の機能を持ち、データを関連の病院に転送し、分析と処理をしてもらうことができる。子供たちがモバイル端末ソフトをダウンロードすれば、親の健康状態を随時把握し、リアルタイムで対処することができる。このような機能に対して非常に高い評価をいただいています。

写真4:「天使の腕時計」広告

写真4:「天使の腕時計」広告

Q: これからの高齢者向けサービス市場のスマート化はどのような方面で具現化されるのか?

スマートな健康管理、個人のスマートコミュニケーション、生活のスマートサービスが挙げられる。近い将来、高齢者が台所で料理を作るとき、一定の時間を越えて応答がなければ、設置されているセンサーがアラームを鳴らすと同時に、緊急プログラムが自動的に起動させ、ガスを止めてくれる。高齢者が家の中で転倒した場合、また異変が発生した場合は、医師が瞬時に情報をキャッチし現場に駆けつける。高齢者がお風呂に入る場合、スマートシステムが相手に適した各々のプログラムを自動的に設定する。例えば座る姿勢か仰向け姿勢かを高齢者に知らせたり、水温を調整したりする。スマートトイレが自動的に尿検査を行い、血圧や血糖値を測定して、そのデータをコミュニティ衛生サービスセンターまたは病院に配信する。以上のようなことが将来のトレンドになる。

Q:スマート高齢者向けコミュニティ市場がどのような企業の発展を索引していくのか?

高齢者の住みやすいスマートコミュニティ作りの基本構成は管理、セキュリティ、通信とクラウドコンピューティングからなる。太陽城グループ傘下のハイエンドスマートシルバーマンションである「水岸香舎」を例にとると、このマンションは代表的な物聯網(Internet of Things)スマートモニタリングシステムを備えており、国内で比較的ハイエンドで、設備が整っているスマートな高齢者向け複合施設となり、高齢者のモビリティ、健康、在宅、エンターテイメント、通信等の一連の生活シーンを快適に暮らせるようにしている。このようなスマートアプリケーションシステムの構築は、特にIT企業のような数多くのミドルウェアサプライヤーの発展に拍車をかけ、ソフトウェアまたハードウェアに対するニーズが向上している(図3、図4参照)。

図3:養老施設の高齢者生活スマート管理システム

図3:養老施設の高齢者生活スマート管理システム

バリアフリーのトイレ・風呂製品

スマート尿検査洗浄便座

図4-1:高齢者向けのスマートトイレ

全自動風呂

図4-2:高齢者向けのス風呂システム

図4:高齢者向けのスマートトイレ・風呂システム

高齢者向け医療サービスのハイテク化によるビジネスチャンス

便利な高齢者向けサービス製品にしても、スマートコミュニティ作りにしても、高齢者の健康に焦点を当てた医療サービスが最もベーシックで重要な分野である。加速する高齢化によるニーズ増加に伴い、医療が中国次世代IT技術の主戦場となることはすでに認識されている。生命医科学、コンピュータと通信分野の各段階におけるICへのニーズが極めて堅調である。今後5年間に、遠隔診断や医療保健用チップの導入などにより市場は成長するが、さらに、消費者が自ら健康状態をチェックできるアプリケーション分野が最大のビジネスチャンスとなる。アプリケーションソフトウェア開発企業やシステムソリューションプロバイダー、チップ及びモジュールメーカー、医療設備メーカー、ネット設備サプライヤーにとっては、医療技術のスマート化が巨大なポテンシャルが潜まれている「金の鉱山」となり、期待される成長と利益をメーカーにもたらすことになる。

中国高齢者向け市場への貢献が企業利益向上の可能性を引き出してくれる

中国高齢者市場のサービスレベルはまだ低いものである。施設の不足や老朽化、看護・介護者の不足、サービス手法・ノウハウの遅れ、サービス品質の低下などの問題が現れつつある。中国人口高齢化の現状と動向を分析し、それによるビジネスチャンスを捉え、またいち早く準備を整えることが命題である。現地のニーズや文化を熟知しているローカル企業にとっても、明らかな技術的優位性を持つ海外企業にとっても、巨大な中国高齢者向け市場に対して芽生えたスマート化に対応して積極的に取り組んでいくことは、短期的な利益向上を実現するだけではなく、戦略的視野のもと、競争優位戦略の確立にもつながる。

*1 「スマート養老」:中国語表現は「智能養老」で、高齢者向けサービスをスマート化することを指す。

*2 北京太陽城グループ:1988年に設立された、中国初の健康養老事業を展開する企業。傘下には、太陽城不動産開発公司、太陽城病院、ショッピングセンター、物件管理公司、太陽城シルバーマンション、建築内装公司、太陽城レジャー村有限公司、健康養老サービス公司などの子会社があり、高齢者向けに標準化、一貫した介護型養老サービスを提供している。従業員数が700人、投資総額は6億元(約96億円)となる。