~5.8GHz帯で雑音指数 0.75dBを実現し、通信感度向上や低消費電力化に貢献~
2011年8月23日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰)はこのたび、無線LANシステムや衛星ラジオ等の低雑音増幅器用トランジスタとして、新開発のシリコン・ゲルマニウム:カーボン(SiGe:C)採用プロセス(注1)により、業界最高レベルの低雑音性能を実現したSiGe:Cヘテロ型バイポーラトランジスタ(以下SiGe:C HBT)(注2)を製品化しました。「NESG7030M04」の名称で、本日よりサンプル出荷を開始いたします。

 新製品は、無線で受信した微弱なマイクロ波信号を適正なレベルまで増幅するトランジスタで、無線LANなどで使用される5.8GHz帯で業界トップレベルの雑音指数0.75dBを実現、低雑音で信号増幅できるため、通信感度を向上できます。また、信号伝達エラーを低減できるため、当社従来品と同等の雑音指数、利得性能を約1/4の消費電力で実現可能です。サンプル価格は35円/個で、2011年11月から月産100万個の量産を開始し、既存のSiGe HBTとあわせて月産5000万個まで拡大いたします。

背景

 当社ではこれまで、マイクロ波増幅用途のトランジスタやICを販売し、無線LAN、家庭用民生コードレス電話、地デジチューナ、GPS機能内蔵機器等に向けソリューション提供を行っており、マイクロ波用途のトランジスタは業界第1位のシェア(当社推定)を獲得してまいりました。その中で更なる低雑音化のニーズや衛星放送で使用する12GHz超でのソリューション提供に対応するため、新SiGe:C採用プロセスを開発し、業界トップレベルの低雑音性能と、数十MHzから14GHz帯までの広い帯域で安定使用可能なSiGe:C HBT「NESG7030M04」を製品化しました。

製品について

 新製品の特長の詳細は、以下のとおりです。

(1)5.8GHz帯で業界トップレベルの低雑音性能を実現

 新開発のSiGe:C採用プロセス適用(注3)により、5.8GHz帯のSiGe:C HBTおよびSiGe HBTでは、業界最高の低雑音指数0.75dBを実現、当社従来のSiGe HBTと比べ、0.35dB向上しています。また、NF最小時利得は14.0dBを実現しました。これにより通信感度を高め、信号伝達のエラーを低減できるため、当社従来品と同等の雑音指数、利得性能を約1/4の消費電力で実現することが可能です。

(2)高耐圧化により広い帯域での安定使用を実現

 従来のシリコン系ヘテロ型バイポーラトランジスタでは、低雑音化と引き換えにコレクタ-エミッタ間の耐圧低下が避けられず、低耐圧となるため、使用アプリケーションが制限されました。新製品では、コレクタ-ベースプロファイルの最適化を行い、耐圧定格4.3Vの保証を可能にしました。これにより使用できる電源電圧の範囲が広がり、数十MHzから14GHz帯までの広い帯域で安定使用が可能なため、より多くのアプリケーションに使用可能となります。例えば、スマートグリット、スマートメーター、ホームエリアネットワーク(HAN)等に代表されるISMバンド(注4)のあらゆる用途に対応可能です。

 また、新製品は、当社がマイクロ波用途トランジスタ向けに開発し、現在業界標準となっている4ピン薄型小型ミニモールドパッケージ(当社パッケージコード:M04パッケージ)に搭載しています。このため、これまでの使用実績による実装評価の簡略化や、現行基板パターンを使用し、わずかな回路調整で置換えが可能になる等、ユーザのセットの開発工数削減に貢献します。

 今後当社は、今回採用の新プロセスを活用した低雑音性能のバイポーラトランジスタ製品の品種拡充をタイムリーに行っていくとともに、同プロセスによるマイクロ波用途IC製品の開発にも展開し、更なるソリューションの提供をすることで市場のニーズに応えていきます。


 新製品の主な仕様は、別紙をご参照下さい。

以 上

(注1)当社独自のSiGe:Cヘテロ型バイポーラトランジスタと、0.15μm CMOSプロセスを組合せ、マイクロ波IC用途に最適化したfT=100GHzのプロセス(SiGe:C BiCMOSプロセス)。

*BiCMOS はBipolar Complementary Metal Oxide Semiconductorの略。バイポーラとCMOSを混在して製造できるプロセス。高周波に最適なバイポーラと高密度低消費電力で回路設計できるCMOSを組み合わせたマイクロ波用途のICが製造可能

(注2)シリコン・ゲルマニウム:カーボンヘテロ型バイポーラトランジスタ(SiGe:C HBT)は、シリコントランジスタのベース層に少量のゲルマニウムとカーボンを加える事で性能を向上させるプロセス技術とヘテロ接合(異種物質接合)によって半導体中に高密度で高速移動が可能な電子の通り道を形成するプロセスを組み合わせることによって実現されたマイクロ波用途に適したトランジスタ。

(注3)新製品へのSiGe:C採用プロセス適用: マイクロ波での低雑音化を図るために、トランジスタ(エミッタ、ベース、コレクタで構成)のベース抵抗を約60%低減する結晶成長技術「選択的エピタキシャル成長」*と、0.15μm CMOS微細加工技術を最適化した新開発のSiGe:C採用プロセスにより、ベース中の電子の高速化およびベース抵抗低減を図った。

*エピタキシャル成長は、トランジスタのベース層になる部分のみに半導体を結晶成長させるプロセス技術のこと。

(注4)Industrial, Scientific and Medical bandの略記。ISMバンドとは、産業・科学・医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数の帯域のこと。この帯域を利用する無線通信システムには、無線LAN、Bluetooth、アマチュア無線、DSRC、各種レーダー、コードレス電話、ZigBeeなどがある。

*ZigBeeの名称は、ZigBee Allianceの登録商標です。

その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。

この記事をシェアする