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Hiroki Ishiguro
石黒 裕紀
主幹技師
掲載: 2023年9月6日

皆さまお手元にスマートフォンをお持ちのことかと思います。私の手元のスマートフォンは1か月に1回程度の頻度でファームウェアアップデートが行われ、スマートフォン内部のOS(Operating System)が更新されます。

OSの更新により、性能が改善したりバッテリーが長持ちするようになったりします。こういったユーザに直接影響する改善の裏では、スマートフォンを構成するソフトウェアコンポーネントにおいて、新しく発見された脆弱性を補修するためのいわゆる「セキュリティパッチ」が含まれることもあります。「セキュリティパッチ」を適用しないままスマートフォンを利用し続けると、新しく発見された脆弱性を悪意のある第三者に利用され、スマートフォンを利用するユーザの個人情報などの漏洩に繋がる可能性が高くなってしまいます。特にインターネットに接続されたスマートフォン等のような電子機器の場合、リモートにより悪意のある第三者からのアタックの危険性にさらされますので、その可能性はさらに高いものとなってしまいます。

したがって、製品販売側は特にインターネットに接続された電子機器の場合、ファームウェアアップデートを配信する運営体制の構築と、ユーザ側はファームウェアアップデートを可能な限り適用することが重要となっています。

上記背景のもと、日本国総務省が発行する「電気通信事業法に基づく端末機器の基準認証に関するガイドライン(第2版)」においても、ソフトウェア更新が必要機能として明記されています。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000744264.pdf

一方で、RXファミリは、多くの産業用装置(工場自動化等)に採用されており、2023年8月現在最新状況ですと15億個突破しています。
RXファミリにはEthernet機能を内蔵しているモデルがあり、これらのモデルはEthernet経由でネットワーク接続されます。さらにその内の一定数はインターネット接続も実現しています。また、こういったネットワーク接続自体を実現されているはずのユーザでも、その多くはSDカードやUSBメモリを利用したファームウェアアップデート機能の実現に留まっていました。SDカードやUSBメモリを利用したファームウェアアップデート機能では、製品が存在する場所にオペレータを派遣し(あるいはエンドユーザにアップデート用データを渡し)、製品1台ずつに対しファームウェア書き換え処理を施していく必要があり、費用と時間を要するものとなっていました。

この課題を解消するには、「インターネット経由で更新されたファームウェアを配信する」となりますが、配信を実現するためのサーバシステムの構築が、RXファミリユーザの多くを占める組込みシステムを開発、設計する企業には大きな障壁となっており、インターネット経由のファームウェアアップデート機能の普及の阻害要因となっていると考えられます。またそれ以前にファームウェアアップデート機能自体の実現方法についてノウハウが乏しいユーザも多く見られました。

このような状況の中、Amazon Web Servicies(AWS)とマイクロソフトは、AWSとAzureを利用したファームウェアアップデート方式を開発しました。ルネサスは両社と協議し、AWSとAzure を利用したファームウェアアップデート方式を実現可能なOS、FreeRTOSとAzure RTOSをRXファミリで利用可能にしました。

AWS/FreeRTOSおよびマイクロソフト/Azure RTOSを利用することで以下メリットが得られます。

  1. 安定したクラウドシステムを活用することができる
  2. サーバ側(クラウドシステム)のソフトウェアを開発する必要がない
  3. クライアント側(マイコン)のソフトウェアにはAWSやAzureが提供するFreeRTOSやAzure RTOSを組み込めば良い

以下アプリケーションノートにおいて、本項で解説した内容に加え、実際のファームウェアアップデートのメカニズムに言及する形で、その基本的な考え方をまとめています。ファームウェアアップデートを検討される際に最初にお読みいただければと考えています。

Renesas ルネサス MCU におけるファームウェアアップデートの設計方針
https://www.renesas.com/document/apn/renesas-mcu-firmware-update-design-policy-rev100

お手元で実験される場合は、CK-RX65N等の評価ボードをお買い求めください。続いてe2 studio上で新規プロジェクト作成し、FreeRTOSかAzure RTOSを選択いただくことで、インターネット経由でのファームウェアアップデートの仕組みが組み込まれた状態でプロジェクト生成することができます。AWSやAzureに接続するための設定を施し、ビルド・実行することでファームウェアアップデートの動作確認が可能です。これらの設定を支援するQE for OTAも開発しました。

インターネット経由でのファームウェアアップデートの実現は非常に難易度が高いですが、AWSやマイクロソフトの活動により大幅に敷居が下がりました。ただし、マイコン側での実現方法には未だ多くの課題が残っており、多くのお客様と会話しながらその時点での最適な実装を模索しつつ解決を目指しています。特にQE for OTAではマイコン側の実現方法の多くの課題を解消し、また量産を想定した多数デバイスの自動管理方法を提供するなど、OTAに関する多くの課題を打破するためのルネサスとしての解になります。今後、標準規格化が進んでいくことでもOTAの敷居は下がっていくかと思いますが、敷居が下がる前に早期に挑戦していくことで、他社との差別化要因を生みやすくなると考えます。RXファミリのユーザの皆様も、インターネット経由でのファームウェアアップデートの実装検討にトライしてみてはいかがでしょうか。

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