0. はじめに

光MOS FETはSSR(Solid State Relay)と呼ばれ、従来は機械式のリレーが使われていたところの代替を中心に、その小型化、高速化、低消費電力化、制御回路の簡素化に役立っています。
しかし、そのような機械式リレーにない特長を持つ反面、機械式リレーとは異なるふるまいがユーザをとまどわせることもあります。

ここでは、その代表的な次の2件の現象についてご紹介します。

 

1. 光MOS FETは小入力電流でも動く

機械式のリレーは、所定の入力電流で動作し、それ以下の電流ではまったく動作しません。

しかし、光MOS FETの場合、次の図が示すように、入力の順電流(IF)が小さくなっても、動作に時間がかかるものの、動作しないわけではありません。

動作時間vs.順電流

図1 動作時間vs.順電流

これは、その内部構造によります。
機械式のリレーの場合は、バネで押さえられた鉄片が、入力電流によって起こる磁力で引きつけられ、磁力がバネの押さえる力を越えたとき、動作する仕組みになっています。
したがって、入力電流の値が所定以下では永久に動きません。

し かし、光MOS FETは次の図のように入力電流によって発光ダイオード(LED)が光り、その光によって発電素子(PVD:Photo-voltaic diode)が発電し、MOS FETのゲートを充電するので、A(メーク)接点の場合はゲート電位が上昇し、FETの導通レベルを越えるとFETが動作する仕組みになっています。

光MOS FETの内部等価回路

図2 光MOS FETの内部等価回路

そのため、発光ダイオードの光が弱ければ、発電素子(PVD)の発電が減少し、その結果MOS FETのゲートの充電が遅くなってゲート電位の上昇が遅れ、FETが導通するまでの時間が長くなります。
しかし、それゆえ入力電流が「推奨範囲」に満たないときでも、時間はかかるけれども動いてしまうことがあります。

そこで、「完全に停止させるためには、入力電流をほぼ零にしなければならない」という、機械式のリレーではあまり考慮する必要がなかった点に気を付けなければなりません。

しかも、このように小さな電流はノイズや回路部品のリーク電流として発生しやすく、特に高温で増加して光MOS FETの誤動作の原因となります。
ではどうすれば光MOS FETを完全に動作しない状態にできるでしょうか?

その唯一の条件がデータ・シートの「推奨動作条件」に記す「LED 復旧電圧」なのです。
入力端子間電圧をこの最大値以下にすれば光MOS FETの非動作および動作状態からの復旧が保証されます。

「LED 復旧電圧」の最大値は普通0.5Vくらいですから、TTLやCMOS論理素子などのような、低レベルの電圧をそれよりも十分低くできるデバイスで駆動する場合は特に問題ありません。

しかし、そうでない場合は、次の「順電圧vs.周囲温度」の特性曲線のように、順電流が1mAでも順電圧は1V以上あり、小さな順電流でも意外に簡単に「LED 復旧電圧」の最大値を越える順電圧が発生します。

順電圧vs.周囲温度

図3 順電圧vs.周囲温度

そこで、そのような場合に順電圧を下げる「切り札」として、次の図のように、入力側に並列に接続する「シャント抵抗」がよく用いられます。

入力側のシャント抵抗

図4 入力側のシャント抵抗

たとえば、光MOS FETを非動作にしたいときでも仮に最大0.5mAの入力電流が流れてしまうとします。
そのとき、入力端子間に1kΩのシャント抵抗を接続すれば、入力端子間の電圧は決して0.5V以上になることはありませんから、光MOS FETは非動作に保てます。

その代わり、動作時には入力端子間を1V前後にしなければなりませんから、本来の動作入力電流に加えて、シャント抵抗に流す電流としておよそ1mA余分な電流が必要になります。

このように、動作時の入力電流が大きくなるデメリットはありますが、非動作時にわずかな入力電流が流れて光MOS FETが誤動作してしまう心配がなくせるため、シャント抵抗は一般的に広く使われています。

しかも、このシャント抵抗は発光ダイオードに逆電流が加えられたときそれを吸収し、逆降伏を防ぐ効果もあります。
1kΩでしたら、5mAでも5Vですから、逆電圧の定格が5Vよりも大きければ、5mAを越えるような大きなスパイクノイズなどが流れない限り安全に使うことができます。

 

2. 光MOS FETを短パルスで動かすと復帰が遅い

一般的な光MOS FETでは、データ・シートの規格を「パルス幅>10ms」で規定しています。

これは機械式リレーの動作速度に比べたら瞬時と言っても良いほど高速であり、当初の機械式リレーからの置き換えにおいてはまったく問題ない条件でした。

しかし最近、光MOS FET独自のまったく新しい用途が開けるにつれ、高速駆動の必要に伴って、この条件が守られない例が出てきました。
そのような場合の特有現象について、以下A(メーク)接点の場合を例に用いてご紹介します。B(ブレーク)接点でも同様現象がありますので、その場合は以下の説明をB(ブレーク)接点の場合に読み替えてご理解ください。

さて、そのような場合、動作しない条件で使うことはあり得ませんので、パルス幅は少なくとも動作時間(ton)以上は確保されているのが普通です。

しかし、そのときの盲点が復旧速度です。

次の図は、同一のサンプルにおいて、それぞれ左は入力パルス幅が10ms、右は同じく1msにしたときの、入力電流がOFFした瞬間の出力の復旧時間です(黄色の線が入力、青色の線が出力の波形です)。

入力側のシャント抵抗

図5 パルス幅vs.復旧時間

この図では、同じ値の入力電流を流していますが、パルス幅が10msであれば復旧時間はおよそ60μsであるのに、パルス幅が1msになるとおよそ200μsにも長くなっています。
これは、上記「図2 光MOS FETの内部等価回路」上で、発光ダイオードが消灯したときに閉じる受光回路のスイッチ(SW)に原因があります。

このスイッチは、実はPVDの端子電圧を検出して、これがFETのゲート電圧に比べて急激に大きく下がったときに導通し、FETのゲート電荷を急速放電します。

しかし、FETのゲート充電の途中でPVDの端子電圧がなくなると、このスイッチの導通が不十分な状態になり、その結果、FETのゲート電荷の放電も遅くなります。

当然、FETの導通状態も不十分なのですが、大電流用途でないとそれに気付かないことも多く、その場合は復旧が異常に遅いのに気付くことになります。

この現象は、その原因がスイッチング現象ですから、パルス幅の変化につれて徐々に起こるのではなく、パルス幅がある値以下になると急激に起こります。しかも、その起こるポイントは製品ばらつきや温度によって変動します。

これは、さしあたって使用上差し支えなくても望ましい状態ではなく、製品ばらつきや温度変化などで動かないものが発生する可能性もありますから、光MOS FETの実力を越える高速用途への使用とそれに伴う短パルス駆動は避けたいものです。

なお、以上の説明は、これらの件に関するいかなる知的所有権に関しても、その免除を保証するものではありません