~FPU(浮動小数点演算ユニット)搭載によりコードサイズと開発期間を30%削減~
2015年4月23日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)は、このたび省エネ家電製品、産業機器、OA機器に搭載されるインバータ回路を、高精度に制御可能なマイコン「RX23Tグループ」を12品種開発し、本日より順次サンプル出荷を開始します。本製品により、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、掃除機、扇風機などの省エネ家電製品、汎用インバー タ、電動工具、ドローンなどの産業機器の中級機、普及機、およびOA機器のブラシレスDCモータ制御などのアプリケーションにおいて、高性能なインバータ制御システムの構築が可能です。インバータ単駆動向けに機能を最適化しており、特にFPU(注1)を搭載したことによりコードサイズ、開発期間を30%削減可能です。量産は2015年8月より開始し、2016年7月には月産50万個となる計画で、サンプル価格は48ピン、64KBフラッシュメモリ品「R5F523T3ADFL」で198円です。

 新製品の特長は、(1)普及機向けのマイコン「RX200シリーズ」に、FPUを搭載することにより、高精度なインバータ制御を可能にしました。これにより機器のインバータ化が容易になるので、採用を加速させ、新興国を含めて地球規模での省エネ化に貢献します。(2)CPUが高速で動作しなくてもリアルタイム性を損なわない演算処理が実現可能なRXv2コアおよびDSP機能(注2)を搭載しているので、業界トップクラスの電力効率を実現し、インバータ機器のさらなる低消費電力化に貢献します。(3)周辺I/Oが5V対応のためインバータ駆動によるノイズ影響などの軽減策が容易にできます。

 近年、各国の省エネ規制が厳しくなる中、省エネ家電製品や産業機器の中級機、普及機などに対しても、インバータ制御の必要性が高くなっている一方で、市場の価格競争も激しく、システムの低コスト化要求も厳しくなっています。また、プリンタや複合機などのOA機器の分野ではモータの小型化、高効率化、静音化などの要求から、ステッピングモータからブラシレスDCモータへの移行が進んでおり、システムコストを上げずに位置制御の高精度化が求められています。

 このような市場要求である、省エネルギー化、制御の高精度化、かつトータルコストの低減化の要求に対して、市場実績のある「RX62Tグループ」のインバー タ制御機能を、インバータ単駆動向けに最適化することにより、コストパフォーマンスを向上させた「RX23Tグループ」を今回開発しました。新製品のライ ンナップは、端子数が48~64ピン、内蔵フラッシュメモリサイズが64~128KB(キロバイト)の計12品種です。

 「RX23Tグループ」の特長の詳細説明は以下のとおりです。

(1) インバータ制御を中級機、普及機に搭載可能

 インバータ制御では小数点演算が多く、浮動小数点演算が有用ですが、従来、省エネ家電製品、産業機器の中級機、普及機ではコストの制約で高価なFPU搭載マイコンを使用せず、固定小数点演算でソフトウエア開発を行うことが主流となっていました。今回新製品は、コストを抑えてFPUを搭載したことにより固定小数点演算時に必須である小数部の桁合わせが不要となり、シンプルなソフトウエア構造にすることができるのでコードサイズ、開発期間を30%削減することができます。さらに、インバータ単駆動に機能を最適化することにより、コストパフォーマンスが向上したためインバータ制御を中級機、普及機に搭載可能となります。

(2) 業界トップクラスの電力効率を実現しで、インバータ機器のさらなる低消費電力化に貢献

 組み込み業界トップクラスの166Coremark(40MHz動作時)を実現するRXv2コアおよびDSP機能の搭載により、CPUが高速動作しなくてもインバータ制御(センサレスベクトル制御方式(注3)) に対して、リアルタイム性を損なわない演算処理が可能です。さらに低消費電力モード(RAMデータ保持あり)時には、450nA(ナノアンペア、typ 値)を実現しています。これら業界トップクラスの電力効率を実現で、インバータ機器のさらなる低消費電力化に貢献します。

(3) 周辺I/Oの5V対応で、インバータ駆動によるノイズ影響などの軽減策が容易

 システムの低消費電力化、低電源電圧化が進む一方、インバータ制御用マイコンの電源電圧が低くなると、周辺部品からのノイズ影響などを受け易く、高精度な制 御を実現するために様々な対策が必要です。新製品は電源電圧5V対応であり、3V対応品と比べてノイズ対策の部品を少なくするなど、インバータ駆動によるノイズ影響の軽減策が容易です。

 なお、統合開発環境(CS+、e2 studio)、コード生成支援ツールなどの開発環境は、6月より順次提供予定です。今後モータ制御のアプリケーションノート、ソリューションも拡充を予定しております。
ルネサスは、新製品「RX23T」によって、家電・産業分野の普及機、中級機にインバータが搭載されることを推進し、今後も省エネ化に貢献してまいります。

 ルネサスは、2015年5月13日~15日に東京ビッグサイトで開催されるJapan IT Week内のIoT/M2M展および組込みシステム開発技術展に出展し、本製品を用いたデモンストレーションをはじめ、「一歩先の世界へ」をテーマにIoT向けソリューションを紹介する予定です。

 新製品の主な仕様は別紙(113KB)をご参照ください。

画像
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RX23Tの製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/microcontrollers-microprocessors/rx/rx200/rx23t.htmlをご覧ください。

以 上

(注1)FPU(浮動小数点演算ユニット)とは、浮動小数点演算を専門に行う機能ユニット。

(注2)DSP(Digital Signal Processing)機能とは、デジタル信号処理に頻出する積和演算などの演算を高速に実行する機能。

(注3)センサレスベクトル制御方式とは、位置センサを用いずに、電動機の駆動電流をトルク生成に寄与する成分(トルク電流)と磁束生成に寄与する成分(励磁電流)とに分けて制御する手法。一般に、位置情報は電流値や電圧値等から推定をする。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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