~外付け部品を大幅に削減し、小型、低コストでユーザシステムへのチップ実装も可能~
2015年2月25日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)はこのたび、ウェアラブルデバイスなど低電力・近距離無線通信の要となるBluetooth® Low Energy (BLE)に対応した2.4GHzの低消費電力RFトランシーバ技術を開発いたしました。独自の回路工夫により、世界最少の消費電流を実現しつつ、アンテナ端子に接続される外付け部品をチップに内蔵させることに成功いたしました。これにより、従来必要であった受動素子部品数を約1/3程度まで削減でき、小 型、低コストでユーザシステムへのチップ実装も可能となりました。

 BLEは、ウェア ラブルデバイスなど、電池駆動の機器に使用されることが多く、電池の長寿命化のために、よりいっそうの低消費電流化が求められます。また、機器の小型、軽量化のために、外付け部品を削減することも必要です。今回、ルネサスが発表したRFトランシーバ技術は、imec、ホルストセンター(Holst Centre、所在地:オランダ アイントホーフェン市、CEO:Luc Van den hove)とのコラボレーションで得られた低消費電力RFアーキテクチャを元に、新たに独自の送受信用フィルタの追加や新しいキャリブレーション回路を組み込んでいます。DCDCコンバータを内蔵することで、受信時2.1mA、送信時3.6mAと世界最少の消費電流を実現しました。

 このたび開発したRFトランシーバ技術の主な特長は、以下の通りです。

(1) 特性劣化なく送受切り替えスイッチ、インピーダンス整合回路を内蔵

 従来外付け部品であった送受切り替えスイッチをそのままIC内に内蔵すると、挿入損失により受信雑音特性や送信電力の劣化を招くため、新たに開発した並列型のスイッチ回路構成により、特性の劣化を抑制しています。

(2) 素子再利用型送受信用フィルタ

 インピーダンス整合回路や送受信用フィルタは、インダクタや容量を用いるために、個々に内蔵するとチップ面積が増大しますが、新しい回路構成では、インピーダンス整合回路に用いた素子を再利用できるようになるため、少ない素子数でフィルタのオンチップ化を実現しています。送信時には、インピーダンス整合回路は、3次高調波スプリアス除去フィルタとしても動作し、受信時にはイメージ周波数除去フィルタとして動作します。

(3) 改良型2次高調波スプリアスキャリブレーション技術

 2次高調波スプリアスに対しては、スプリアス検知部を改良したキャリブレーション回路によって除去し、製造ばらつきに対しても強くなっています。

 このRFトランシーバは、40nm(ナノメートル)プロセス技術を用いて設計し、ヘルスケア、フィットネス等の用途に最も使われる規格であるBLEに対応し ます。再利用型の送受信フィルタ構成にすることにより、送受切り替えスイッチ、インピーダンス整合回路、送受信用フィルタを内蔵した上で、RFコア面積は 1.1mm²を実現しました。最少受信感度は-94dBm(規格-70dBm以下)であり、イメージ周波数妨害は-20dB以上(規格-30dBm以上) となっています。

 開発したRFトランシーバ技術は、機器の低消費電力化につながるとともに、アンテナまわりの外付け部品を削減することで、システムの小型、低コスト化、および部品調整不要のeasy-to-useに貢献します。

 なお、当社は今回の成果を、2015年2月22日から米国サンフランシスコで開催された「国際固体素子回路会議:ISSCC 2015(International Solid-State Circuits Conference 2015)」にて、現地時間の2月24日に発表しました。

以 上

*Bluetooth® は米国Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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