2013年6月14日

 欧州の独立系ナノエレクトロニクス研究機関であるImec(所在地:ベルギー ルーベン市、 CEO:Luc Van den hove)とルネサス エレクトロニクス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鶴丸 哲哉、以下ルネサス)はこのたび、最先端のデバイス、プロセスや回路技術の研究成果が発表されるVLSIシンポジウムの回路部門(会期:2013年6月12日~14日、会場:京都)において、世界で初めて28nm(ナノメートル) CMOS技術を用いた複数の無線規格対応RFレシーバおよびLTE-advanced(注1)、次世代WiFi(注2)をはじめとする広帯域通信規格向けA/Dコンバータの開発を発表いたしました。

 Imecはリコンフィギュラブル(注3)RFソリューション、高速かつ低消費電力A/Dコンバータの開発および次世代RFアーキテクチャのデジタル化とアンテナインタフェースの簡素化という新手法を研究しています。また、革新的な設計と28nm世代以降の回路技術を組み合わせることで、小さく、低コストかつ高効率なRFソリューションを開発しています。ImecはLTE-Advancedや次世代WiFiといった次の通信・接続方式を含む、あらゆるブロードバンド通信方式に対応するソリューションの開発を目指しています。

 28nm CMOS技術を用いたRFレシーバは、400MHzから6GHzで動作する高線形(注4)なソフトウエア無線レシーバであり、100MHzまでのチャネル帯域幅に柔軟に対応します。新規の設計、アーキテクチャにより、+5dBm(ディービーエム)の帯域外IIP3(注5)と0dBmの妨害波耐性を維持しつつ、0.9Vの低電圧動作を可能としています。雑音指数は1.8dB、占有領域は0.6mm2、消費電力は40mW以下を達成しています。

 同じく28nm CMOS技術を適用したA/Dコンバータは、410M(メガ)サンプル/秒、11ビットのダイナミックパイプラインSAR(逐次比較型、(注6))A/Dコンバータです。410Mサンプル/秒の時のピークSNDR (注7)は59.8dB、消費電力は2mWを達成しました。新規アーキテクチャとデジタルキャリブレーション技術(注8)により、優れた電力効率を実現しています。キャリブレーションエンジンを含むA/Dコンバータの専有面積は0.11mm2です。

 「多くの民生機器には費用効率の高い先端の半導体技術が必要とされています」とImecでリコンフィギュラブルRF部門のマネージャーであるJoris Van Driesscheは述べています。「ルネサスとともに、我々は市場へ革命的なソリューションを提案し続けます。我々の28nm CMOS技術を適用した無線レシーバにより、次世代無線通信機器への適用と製品化はより身近なものとなるでしょう。」

 「最近の無線レシーバには高度なインテグレーションと低消費電力が必要とされています。微細CMOS技術の採用により、RFコアとアナログコアの画期的なアーキテクチャ開発が可能になるでしょう」とルネサスの第1事業本部 コア技術事業統括部 アナログコア開発第2部の担当部長である佐藤 久恭は述べています。「Imecとの協業を通じて、当社は最先端技術を開発しています。我々は今後も競争力の高いIPコアやソリューションをお客様に提供してまいります。

以 上

(注1)LTE-Advanced(Long term evolution-Advanced):標準化団体3GPP(The 3rd Generation Partnership Project)により規格化される次世代高速データ通信規格。

(注2)WiFi(Wireless Fidelity):業界団体Wi-Fi AllianceによってIEEE 802.11規格の相互接続が認定された機器に与えられる名称。無線LAN(Local Area Network)の代名詞としても使われる。

(注3)リコンフィギュラブル:"再構成可能な"の意味。送受信する無線の中心周波数や帯域幅をプログラムによって自在に切り替える無線回路のコンセプト。

(注4)高線形:入力信号と出力信号が比例関係に近いことを示す。線形性が悪いと入力信号が大きくなったり、大きな妨害波が入力されたときに、出力信号が歪み、受信感度が劣化する。

(注5)IIP3(Third-order Input Intercept Point):線形性指標の1つ。3次高調波歪みと希望波の大きさが等しくなる入力信号の強度を表す。値が大きいほど線形性が高い。

(注6)逐次比較型A/Dコンバータ(SAR-ADC):1回の比較に1つのコンパレータを使用して、アナログ電圧と参照電圧の大小比較を分解能の回数だけ繰り返してアナログからデジタルへ変換する方式。

(注7)SNDR(Signal-to-Noise and Distortion Ratio):信号対雑音歪み比。出力されるノイズ電力と高調波歪み電力の和と、信号電力の比で表される。

(注8)デジタルキャリブレーション技術:素子の微細化が進むと個々の特性ばらつきが大きくなるという問題がある。このばらつきをデジタル回路によって補正し、アナログ回路の特性を向上させる技術。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。

Imecについて

Imecはナノエレクトロニクスの研究に関して世界をリードする独立した研究機関です。Imecは、ICT(情報通信技術)、ヘルスケア、エネルギーの分野で世界的なパートナーシップを持ち、その革新的な能力で、科学的知見を高めています。

Imecは、産業界と結びついたテクノロジーソリューションを提供しています。

独特なハイテク環境を備え、世界トップクラスの技術力で、持続可能な社会におけるより良い生活のための基礎技術開発を行っています。Imecの本部はベルギーのルーベン市にあり、オランダ、台湾、米国、中国、インドに支所があります。Imecのスタッフは約2,000名(駐在研究員、客員研究員約600名を含む)です。Imecの2011年の歳入は約3億ユーロです。Imecに関するさらに詳細な情報は、http://www.imec.beでご覧いただけます。

IMECは、下記の会社の登録商標です。IMEC International ("stichting van openbaar nut”として、ベルギーの法律で設定された法人 、IMEC Belgium (IMEC VZWとしては、フランダース政府によってサポートされる)、IMEC the Netherlands (Stichting IMEC Nederlandとしては、Holst Centreの一部は、オランダ政府によってサポートされています)、IMEC Taiwan (IMEC台湾の会社)、IMEC China (IMECマイクロエレクトロニクス(Shangai)有限公司)、IMEC India(アイメックインディアプライベートリミテッド)。


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