~フルHD動画、高度なグラフィックス表示などを低消費電力で実現~
2011年2月16日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)とその子会社、ルネサス モバイル株式会社(代表取締役社長:川崎 郁也)は、このたび、次世代組込み型カーナビゲーション機器(以下、カーナビ)向けSoC(System on Chip:システムLSI)として、機器の低消費電力と高度なヒューマンマシンインタフェース(HMI:Human Machine Interface)に貢献する「R-Car M1」シリーズを製品化し、2011年5月よりサンプル出荷を開始します。

 「R-Car M1」シリーズは、組込み型カーナビ等の車載情報端末向けSoCとしてこれまで多くの採用実績がある「SH-Navi シリーズ(注1)」や「EMMA CARシリーズ(注2)」 を統合したSoC「R-Car」の第一弾製品であり、市場伸張により今後ボリュームゾーンとなることが見込まれるミッドレンジ機器向けの製品です。今回、 (1)高性能マルチメディア処理用の専用回路搭載により、ソフトウェアでの処理時に比べ、フルHD(1920×1080画素)動画処理時の消費電力を当社比で約92%低減し、(2)新開発の「R-Car」シリーズ専用電源ICとの組み合わせにより、トータルの消費電力を当社比で最大20%低減できるなど、 低消費電力化を実現しています。また、(3)「POWERVR SGX」搭載により3Dグラフィックス性能を強化し、多彩でリアルな3D画像表示により操作性を向上できます。

 加えて、最大動作周波数800MHzのARMコアとSH-4Aコアを搭載し、最大3.7GIPS(Giga Instructions Per Second)の高処理性能を実現します。

 「R-Car M1」シリーズは2製品あり、サンプル価格は、「R-Car M1A」が6,000円/個、仕様展開品の「R-Car M1S」が5,500円/個となっています。量産は、2012年6月から月産3万個で開始し、2014年には月産40万個を計画しております。

 近年、組込み型カーナビ用には、ハイブリッドや電気自動車の登場により一層の低消費電力化が求められる一方、動画やオーディオの高性能マルチメディア対応、および高度なヒューマンマシンインタフェース(HMI)に対応するための多彩でリアルな3Dグラフィックス表示や操作性向上を実現するGUI(注3)表示等が求められています。今回製品化した「R-Car M1」は、こうしたニーズに対応すると共に、システムの低コスト化、小型化、および開発期間短縮を実現できます。

 「R-Car M1」シリーズの主な特長は次の通りです。

(1)フルHD動画などの高性能マルチメディア処理を専用回路搭載により低消費電力で実現

 新製品は、高性能かつ低消費電力の当社動画像処理エンジン(VPU:Video Processing Unit)を搭載し、フルHDサイズの動画(ビデオ)再生に対応しています。

 当社従来製品で実現していた動画像圧縮規格H.264/MPEG-4 AVC(以下、H.264)やMPEG-4、VC-1のデコード(復号化)がフルHD動画まで30fps(frame par second)で再生できるようになったことに加え、今回MPEG-2にも対応しており、ムービー等の様々な動画アプリケーションに対応可能です。

 そして、これらの処理をCPUによるソフトウェア処理で行った時と比べ、消費電力を当社比で約92%削減できるため、大幅な省電力化が図れます。

 加えて、オーディオ処理においても当社従来製品よりも専用回路を強化し、高性能化を実現しております。

(2)専用電源ICとのキットソリューションによるシステムの低消費電力化、開発期間短縮を実現

 R-Carシリーズの専用電源として電源IC(Multi Voltage Regulator)「R2A11301」を新規開発しました。本電源ICはCPUコア用およびDDR(DDR2/DDR3)用の降圧電源であり、出力を2チャネル搭載し、各出力電圧の誤差は±1%以下(目標値)と、高精度を実現します。内蔵のAVS(Adaptive Voltage Scaling)機能により、SoC最適制御が可能となるため、消費電力を最大20%削減可能(AVS±35mVの場合の推定値)です。また、A/Dコンバータの内蔵により外付け部品点数を削減できるなど、複雑なディスクリート部品の組合せによる電源開発が本製品で省略できるため、システム開発期間の短縮 や、部品点数の削減によるコストダウンを実現します。

(3)多彩で、よりリアルな3D画像を実現する最新型3Dグラフィックスエンジンを搭載

 新製品はミッドレンジ端末向けでありながら、3Dグラフィックスエンジンに、英国Imagination Technologies Limitedの最新型の3DグラフィックスIP「POWERVR SGX」を採用し、当社従来品よりも高精細な描画性能20Mポリゴン/秒、1000Mピクセル/秒(@200MHz時)を実現できるため、GUIのよりリアルな表示や、高級感を演出できるアプリケーションが実現可能です。

(4)メインCPUとしてARMコアを、リアルタイム処理ドメインにSH-4Aコアを搭載

 「R-Car M1A」では、最大動作周波数800MHzのARMコアとSH-4Aコアを各1個搭載し、当社カーナビ向けSoCでは最高性能となる最大3.7GIPSを実現しています。ARMコアを、システムのメインCPUとして配置し、Linuxなどの汎用OSへ対応すると共に、ミドルウェアで豊富なソリューションを持つSH-4AコアをサブCPUとしてリアルタイム処理に対応します。

 新製品は、仕様展開品として、1つのSH-4Aコアのみを搭載する「R-Car M1S」も揃えており、特に国内ナビ市場で非常に高い実績とシェアを誇るSH-4A製品のユーザ資産の継承性を確保する製品として展開します。

 なお新製品は、モバイル、カーマルチメディア、ホームマルチメディア用SoC向けのルネサス新統合SoCプラットフォーム上で、アーキテクチャ、IP、ソフトウェアの共通化を図っており、車載情報端末におけるエントリ/ハイエンド機器への展開や、モバイル、AV機器分野のSoC製品とのスケーラビリティを確保しています。

 今後、「R-Carシリーズ」の展開としては、ハイエンド機器向けには更なるマルチコア製品の高性能化、高機能をなどの開発を進め、エントリ機器向けには、性能・機能をより最適化した製品の開発を進めます。これらにより、市場ニーズにそくした最適な製品をタイムリーに市場に投入していきます。

新製品の仕様は、別紙をご参照下さい。

以 上

(注1)SH-Naviシリーズ:当社の32ビットRISC CPU コア「SuperH」を搭載した、カーナビ等の車載情報端末等向けSoC。

(注2)EMMA CARシリーズ:CPUにARMコアを搭載したカーナビ等の車載情報端末等向けSoC。

(注3)GUI(Graphical User Interface):情報がグラフィックスで表示され、直感的に操作することができるユーザインタフェース。

*SuperH、EMMA はルネサス エレクトロニクス株式会社の日本、米国及びその他の国における登録商標または商標です。POWERVR、SGXはImagination Technologies Limitedの登録商標または商標です。 ARMはARM Limitedの登録商標です。 Linuxは、Linus Torvalds氏の日本およびその他の国における登録商標または商標です。 その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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