2010年4月26日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:赤尾 泰)はこのたび、ブルーレイディスク(BD)記録/再生機用に、光導波路を半導体素子内部に作りこむ新構造を採用し、高出力かつ量産性に優れた青紫色半導体レーザダイオード(波長405nm)のサンプル出荷を本日より開始し、青紫色レーザ事業に参入いたします。

 今回製品化した新構造の青紫色半導体レーザ「NV4A61MF」は、レーザダイオードの特性を大きく左右する光導波路を半導体の内部に作りこんだインナーストライプ構造を採用することにより、光導波路をレーザチップ表面に形成した従来の素子に比べ、窒化ガリウム(GaN)基板上に形成する光導波路の加工精度を約10倍に向上させるとともに、素子の放熱性を2割改善できることから、(1)8倍速書き込みに対応できる350mWという高い光出力を85℃という高温まで安定して発振できること、(2)低出力から高温・高出力域まで電流・光出力特性の直線性に優れていること、(3)BD再生時に課題となるレーザの雑音(出力の揺らぎ)を1/3以下に低減(当社従来比5dB/Hz改善)していること、などが大きな特長です。

 青紫色半導体レーザ「NV4A61MF」のサンプル価格は2千円となっており、本年8月から量産を開始し、2011年夏には量産規模を月産100万個まで引き上げる予定です。

 BDドライブ市場は、BDレコーダの立ち上がり期から普及期への移行、薄型TVやPCへのBDドライブ搭載拡大を背景として急速に立ち上がってきており、2011年には前年比150%成長の1億台、このうち、高出力なレーザが必要とされる記録用ドライブは3000万台に達すると見込まれています。

 現在市場で用いられている青紫色半導体レーザは、発光部に集中して電流を流すための電極およびレーザ光の伝搬路である光導波路を半導体表面からドライエッチングを用いてリッジ(尾根)状に加工する「リッジ導波路」構造を採用しています。レーザ素子では、発光層のすぐ上に形成されるクラッド層の厚さがレーザ特性を左右する極めて重要な要素となっておりますが、適当なエッチングストッパーとなる材料が存在しないため、ドライエッチングによるクラッド層の加工厚を正確に制御することが難しく、レーザ特性ばらつきの原因となっていました。

 このたび当社が発売する青紫色半導体レーザでは、当社独自のインナーストライプ構造を採用することにより、特性ばらつきを抑えつつ、優れた高出力特性と低雑音を同時に実現しました。具体的には、形成する膜厚を1nm(原子層レベル)で制御できる結晶成長技術の採用により、従来のドライエッチング技術に比べてクラッド層の加工精度を10倍に改善しました。さらに、発光部に電流を集中させるため、クラッド層のすぐ上に形成する電流ブロック層の材料として放熱性に優れ、かつレーザ光に対して透明性のある窒化アルミニウム(AlN)を採用することにより、放熱性を従来のリッジ構造に比べて2割改善するとともに、高温・高出力域まで電流・光出力特性がほぼ直線となるなど、レーザの各種特性を大きく改善しました。

 当社では、BD記録速度の更なる高速化に対応するため、更に高出力の420mW品(2層ディスク12倍速用)の本年12月の製品化を進めるなど、青紫色レーザ事業に今後も積極的に取り組んでまいります。

新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。

以 上


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。

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