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Koki Kawashima
Koki Kawashima
Engineer
掲載: 2021年12月1日

昨今、家電や産業、コンシューマ機器などあらゆるバッテリー駆動のアプリケーションにおいて高機能化とIoT化が進み、情報システム全体の電力消費量は増加の一途を辿っています。今後の益々の情報社会の発展を考えると、個々の端末の低消費電力化は必須条件と言えます。

Renesas RA MCUは、多彩な低消費電力モード(スリープモード、スタンバイモード、スヌーズモード)や電力制御モード、MCU内蔵周辺機能に対する独立したクロック供給停止機能などをサポートしており、お客様の様々な低消費電力化ニーズに対応します。なかでも、CPUを停止した状態で周辺機能を自律的に連携動作させることができるスヌーズモードは非常にユニークであり、間欠動作アプリケーションの消費電力を大幅に削減することができます。

RA2E1 MCUのスヌーズモードで連携動作可能な周辺機能の一例:

  • タイマ(AGT、RTC):一定周期のタイマ割り込みを発生
  • 12-bit A/Dコンバータ(ADC):センサからのアナログ信号を12-bitデジタル値に変換
  • データトランスファコントローラ(DTC):データを転送(例:周辺レジスタからRAM/周辺レジスタ)
  • データ演算回路(DOC):16ビットデータの比較、加算、減算が可能な回路

スヌーズモードにおける周辺機能の連携動作は、MCU搭載のイベントリンクコントローラ(ELC)により実現されます。上記の機能をELCにより連携させることで、例えば、ソフトウェア処理を介さずにADCの起動、AD変換結果のRAM転送、データの比較判定まで自動的に連携動作可能です。

本稿では、スヌーズモードを活用した低消費電力データロガーアプリケーションノート(R30AN0392)を紹介します。

低消費電力データロガーアプリケーションノートの概要

当該アプリケーションノートは、低消費電力データロガーをユースケースとして、RA2E1 MCUおよびFlexible Software Package(FSP)を用いて、低消費電力でアナログセンサデータの取得・RAMバッファへの変換結果転送・データの閾値判定を実行する方法を説明します。

低消費電力データロガーサンプルコードの動作:

  1. 1. MCUはソフトウェアスタンバイモードに遷移
  2. 2. AGTによる30 分毎の割り込みでスヌーズモードへ遷移
  3. 3. ELCによる連携動作によりA/D 変換とRAM転送、閾値判定を実行
    • 閾値判定の結果が閾値未満の場合、1に戻る
    • 閾値判定の結果が閾値以上の場合、4に移る
  4. 4. スヌーズモードからノーマルモード(CPU動作のモード)に遷移
  5. 5. シリアルコミュケーションインターフェース(SCI)を用いてRAMに蓄積したセンサデータをUART通信で出力し、1に戻る.
  • また、リアルタイムクロック(RTC)によって生成される24 時間経過の割り込みでも低消費電力モードを解除し、RAMに蓄積したセンサデータをUART 通信で出力

一連の処理フローと消費電力イメージ:

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processing flows and power image

Flexible Software Package(FSP)を用いた低消費電力アプリケーション開発

Renesas RAファミリのFSPは、低消費電力アプリケーションを開発するために必要な各種HAL ドライバを提供し、また、統合開発環境e² studioは、ELCによるイベントリンク設定を含む、低消費電力アプリケーション開発を簡単かつ迅速に行うための直感的なコンフィグレータおよびインテリジェントなコード生成をサポートします。

本稿の低消費電力データロガーアプリケーションは、FSPコンフィグレータのサポートによって簡単に実現できます。

  • 低消費電力モードの遷移条件をLPM HALドライバのプロパティで設定
  • ELCによるA/D変換開始トリガをEvent Linksタブで設定
  • ”Generate Project Content”ボタンを押してプロジェクトに設定ファイルの自動生成
  • ユーザアプリケーションコード記述。Developer Assistant機能を利用することで、各ドライバのAPIコールをドラッグ&ドロップで、ソースコードに追加可能
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User application code implementation

FPB-RA2E1キット

RA2E1 MCUグル―プの評価キットFPB(Fast Prototyping Board)-RA2E1は、RA2E1 MCUやオンボードE2エミュレータ、ユーザスイッチ、LED、MCUの全端子にアクセス可能な各種コネクタを実装し、購入後すぐに、RA2E1 MCUの評価や、FSPと統合開発環境e2 studioを用いた組み込みエコシステムアプリケーションの開発を行うことが可能です。またFPB-RA2E1は、多数のテストポイントを用意しており、消費電流などのMCUの動作性能を評価できます。

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FPB-RA2E1 kit

本稿に示したように、Renesas RAファミリRA2E1 MCUのもつ多彩な低消費電力機能と周辺機能は、FSP・e2 studioコンフィグレータ、そしてFPB-RA2E1キットを使用することで、短期間で評価することが可能です。

是非、FPB-RA2E1キットをご購入いただき、また、低消費電力アプリケーションノート(R30AN0392)をダウンロードいただき、RA2E1 MCUの低消費電力機能をお試しください。

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