~充実した開発環境を揃えるデバイスソリューションの提供により開発期間を約20%低減~
2016年10月13日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)はこのたび、ネットワーク化の進む産業機器のシステム制御や流通・物流などに利用されるポータブル端末向けに、32ビットマイコン「RXファミリ」の次世代メインストリームとなる「RX65N/RX651グループ」を開発し、本日よりサンプル出荷を開始いたします。

 新製品は、(1) 40nmプロセスの採用により業界同等クラス製品比5倍(注1)の高い電力効率を達成しバッテリ駆動時間を格段に向上、(2)業界同等クラス製品比1.3倍(注1)となるCPU「RXv2コア」の高い性能により、計測データ演算やシーケンス制御など等の従来制御に加え、新たに通信制御を取り込むとともに、Ethernet、USBをはじめとする有線通信機能、フラッシュメモリとの接続が可能なQuad SPIやAES(注2)、TRNG(注3)のハードウェア暗号モジュールも搭載することでネットワーク経由の安全な内蔵メモリ書き換えによる機器制御の更新が容易、(3) RXマイコン間のソフトウェア移行を容易にするFirmware Integration Technology(FIT)などのデバイスソリューションの提供によりユーザの開発期間を約20%低減し、新製品のタイムリーな市場投入に貢献、といった特長を有しています。

 新製品を採用することでユーザは、機器の基本性能向上に加え、無線LANやEthernetなどのネットワーク経由で安全に内蔵メモリを書き換えることができるため、機器の設定や制御プログラムのタイムリーな変更、設置環境やエンドユーザの需要変化に応じた機器制御ができるエンドポイント機器の開発が容易になります。

 近年、産業分野におけるIndustry4.0などの普及により、機器のネットワーク接続に向けたニーズが拡大しています。そのネットワークを活用し、工場内・外での装置稼働状況の確認、生産指示変更などのデータ交換、屋外設置機器の設置環境や使用状況変化に合わせた設定更新などのメモリ書き換えが可能になります。しかし、それに伴い機器内情報の流出、プログラム改ざん、誤書き換えによる誤動作などのリスク対策が課題となっています。また、これらの機能追加・強化に向けた機器開発工数増大への対応も必要です。

 このような状況のもと、バッテリ駆動時間など機器の基本性能の向上に加え、ネットワーク接続によりクラウドやフォグ上のAI(Artificial Intelligence:人工知能)からのフィードバック情報を受信し、安全に内蔵フラッシュメモリのファームウェアやデータを書き換え、タイムリーに機器制御を更新するシステムをユーザは求めており、当社は開発工数を抑えつつ容易にこのようなシステム構築を実現できるものとして新製品を開発いたしました。

 新製品の特長の詳細は以下のとおりです。

(1) 40nmプロセス採用により業界同等クラス製品比5倍の電力効率を達成しバッテリ駆動時間を格段に向上

 エンドポイント機器で取得したセンサデータの処理、制御に加え、ネットワーク接続のためのミドルウェア処理をバッテリ動作で実現するためには、通信、制御の処理性能に加えマイコンの電力効率向上が求められる。新製品は40nmプロセスを採用したRXv2コアを搭載し、516Coremark®性能を実現。動作電流は15mA(Typ.)となり、34.4Coremark/mAの電力性能を達成。32ビット、動作周波数120MHzの業界同等クラス製品と比較し、最大5倍の電力性能を実現している。さらに、内蔵メモリは1MB(メガバイト)のフラッシュメモリと256KB(キロバイト)のRAMを搭載しているため、無線LANなどの通信ミドルウェア処理に必要となるプログラムやバッファ領域も内蔵メモリで確保可能。外部メモリアクセスが不要になるため消費電力を低減できることから、機器のバッテリ駆動時間の向上に貢献する。

(2) 従来制御に加えたネットワーク経由の安全な内蔵メモリ書き換えにより機器制御の更新が可能

 CPUに高性能なRXv2コアを搭載しているため、32ビット、動作周波数120MHzの業界同等クラス製品比1.3倍の処理性能を実現。この高性能を活かし、従来機器における計測データ演算、シーケンス制御に加えて通信機能を取り込み、ネットワーク接続を活用した機能追加が可能となる。

 新製品では、産業機器で実績の高い当社従来品「RX63N」や「RX631」に搭載されているEthernet、USB、CAN、UART、SPI、I2Cなどの有線通信機能の継承に加え、無線LANモジュールと4ビットデータ接続可能なSDホストインタフェースを搭載しているほか、シリアルフラッシュとの接続を可能にするQuad SPI、通信バッファメモリにも活用可能な256KBの大容量RAMを内蔵し、通信機能対応を強化。

 また、通信データの暗号・復号に使用可能なAES、TRNGのハードウェア暗号モジュールの搭載により、安全な通信を実現。さらに、内蔵フラッシュメモリのプログラム書き換え時、指定領域への書き換えに対するプロテクトをかけることができるエリアプロテクション機能を実装し、フラッシュメモリへの誤書き換え防止を実現。

 これらの機能を組み合わせ、ネットワーク経由でのセキュアな通信を確保し、誤書き換えの保護による安全なプログラム書き換えを実現。クラウド/フォグ上のAIからのフィードバック情報を受信し、ネットワーク経由のプログラム書き換えにより機器の設定や制御プログラム変更をタイムリーに行い、設置環境変化やエンドユーザの要望に応じた機器制御の更新が可能となる。

(3) ユーザの開発期間を約20%低減し、タイムリーな市場投入に貢献するソリューションの提供

 既存のRXファミリと互換性の高いマイコン提供に加え、ドキュメント、デバイスドライバ、ミドルウェアなどがIDE(Integrated Development Environment:統合開発環境)と連携した環境を、マイコン、評価ボードと同時に準備し、これらを入手後すぐに開発・評価が可能となるデバイスソリューションを提供する。デバイスドライバ、ミドルウェア群は、RXファミリ統一規格の FITを適用する。APIが共通化されているため、FIT対応の既存製品との相互移行が容易となる。また、デバイスドライバ、ミドルウェア群は、コード生成ツールによりサポートされる周辺機能のサンプルソースと組み合わせて開発に活用することも可能。さらに、FITモジュール組み込みやマニュアル、テクニカルアップデートなどのドキュメント更新・参照がe2 studioなどのIDEと連携して動作し、開発時の使い勝手を強化。これらにより、デバイスドライバ、ミドルウェアの開発期間の短縮が可能となるため、ユーザはシステム全体の開発期間を約20%低減可能となり、タイムリーに市場投入することができる。

 RX65N、RX651対応の最新ツール情報は以下の当社公式サイトからご確認いただけます。

 当社は、機器のネットワーク接続がさらに広がっていくことに伴うセキュリティ対策、オンラインでのプログラム・設定更新対応の強化に貢献していくため、今後さらにセキュリティ機能や内蔵フラッシュメモリの書き換えに対する機能を強化した製品群を展開する計画です。

新製品の主な仕様は別紙(128KB)をご参照ください。

RX65N/RX651の製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/microcontrollers-microprocessors/rx/rx600/rx65n-651.html をご覧ください。

以 上

(注1)ルネサス調べ。

(注2)AESはAdvanced Encryption Standardの略で、国商務省標準技術局(NIST)によって制定された、米国標準暗号化方式。

(注3)True Random Number Generatorの略。

*CoreMark®はEEMBC®の登録商標です。EEMBCはthe Embedded Microprocessor Benchmark Consortiumの登録商標です。その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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