~工場でのAI活用を容易に実現する「AIユニットソリューション」の提供を開始~
2017年11月27日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、このたび、生産設備や機械に後付けするだけで、センサデータの収集から加工、分析、評価/判定までの一連のプロセスを容易に実現し、異常検知や予知保全に即時役立てることができる「AIユニットソリューション」の提供を開始しました。新ソリューションは、「AIユニット」と呼ぶハードウェア開発のためのリファレンスデザインと、I処理を実現するソフトウェアで構成されています。本ソリューションにより、ユーザはプログラミングをすることなく、AIユニットに学習済みニューラルネットワークモデル(以下、学習済みモデル)を、1日程度の短期間で組み込むことが可能になるため、異常検知や予知保全などに即時活用することができます。

 ルネサスは、IoTのエンドポイントとなる組み込みシステムにAIを搭載する「e-AI(イーエーアイ、embedded-Artificial Intelligence)」を提案し、エンドポイントをインテリジェント化するための様々なソリューション開発に取り組んでおり、本ソリューションはその一環となります。

 AIユニットは、リファレンスデザインを用いることにより、産業機器メーカ等が容易に開発することができるため、各社から順次提供される予定です。まず、産業システムや産業機器の提供を行う株式会社明電舎からは、多彩なインタフェースを搭載したAIユニットが発売されます。また、産業用PCのシェアで世界No.1(注1)Advantech Co, Ltd (以下、アドバンテック)からは、小型化にフォーカスしたAIユニットが発売されます。さらにルネサスは、新ソリューションを拡張するため、アドバンテックが提供するIoTエコシステムメンバーシップ「WISE PaaSアライアンス(注2)」にも加盟予定です。

 なお、学習済みモデルの生成については、オープンソースの開発環境を利用可能なほか、ルネサスのパートナ企業によるサポートが可能です。

 昨今、生産設備や機械から何らかのデータ収集を行い、生産効率の向上に役立てようという動きは高まっています。その多くは、センサで収集したデータを、サーバやクラウドに送信し、設備や機械の状態をモニタリングすることに留まり、収集したデータをAIで解析し、その結果を用いて機械を制御するまでには至っていないのが現状です。この時、通信遅延のため判定結果を機械制御にリアルタイムに活かせない、あるいは、振動センシングなど大量のデータを送信する場合に、機械とサーバやクラウドとの間に広い帯域のネットワークが必要になるといった課題がありました。

 そこでルネサスは、工場のエンドポイントに位置する設備や機械に後付けすることで、データの収集、加工、分析(e-AI分析)、評価/判定といった一連のAI処理を、機械側で実現可能なAIユニットソリューションを開発しました。サーバやクラウドと通信することなく、リアルタイムにAIの判定結果を機械へフィードバックするため、異常検知や予知保全の精度が高まり、生産性が大幅に向上します。また、データ量の多い振動センシングなどを実施する際にも広い帯域のネットワークは不要です。

 新ソリューションの構成は以下の通りです。

(1)AIユニットを実現するためのリファレンスデザイン

 本リファレンスデザインを使用することにより、産業機器メーカは容易にAIユニットを開発することができるため、メーカ各社から順次提供される予定です。

(2)一連のAI処理をプログラミング無しで実現するソフトウェア

 本ソフトウェアにより、プログラミングすることなく、学習済みモデルを1日程度の短期でAIユニットに組み込み、すぐに活用できます。

 <AIユニット搭載のルネサス製デバイスにインストールするソフトウェア>

①FFT、フィルタ処理、単位変換などのセンサデータを加工するための前処理プログラム

②学習済みモデルによる計算を行うAI実行プログラム

③AI実行プログラムによる計算結果に応じたアラーム出力などの後処理プログラム

 <ネットワークで接続されたサーバやパソコンにインストールするソフトウェア>

④AIユニットで実行する処理の選択、および各種パラメータ設定を行うソフトウェア

⑤オープンソースフレームワークであるCaffeならびにTensorFlow™で作成した学習済みモデルをAIユニットに組み込むソフトウェア(AIユニット用e-AIトランスレータ)

那珂工場での実証実験について

本ソリューションは、ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング株式会社 那珂工場(茨城県ひたちなか市)での、2年間にわたる実証実験の経験とノウハウに基づき開発しました。実証実験では、AIユニットの試作機をエンドポイントの半導体製造装置に取り付け、従来と比較して20倍の高速サンプリング速度でデータを取得し、AIによる分析を行うことによって、広い帯域のネットワークを用意することなく、異常検知の精度を6倍以上に高めることができました。同社では、従来より有効活用してきたFDC(Fault Detection and Classification)(注3)システムに、e-AIソリューションを活用する機能を追加し、半導体生産現場に展開を開始しました。この革新的アプローチにより、同社はさらなる生産性、品質の向上を目指してまいります。

 ルネサスは、エンドポイントの設備や機械を容易にインテリジェント化できる新ソリューションを提案し、工場の生産性や品質向上に貢献します。また、今後もe-AIソリューションの提供を通じて、スマート社会の実現を目指します。

  なお、ルネサスは、本年11月29日から12月1日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されるオートメーションと計測の先端技術総合展「SCF2017」に出展(西4ホールブースNo.4-88)し、本ソリューションのデモ展示を行います。

以 上

(注1) 調査レポートに基づくアドバンテック調べ。

(注2) アドバンテックの「WISE PaaSアライアンス」は、IoTソリューションを短期間で開発し、また相互に有益なパートナーシップを確立するためのIoTエコシステムメンバーシップ。

(注3) FDC (Fault Detection and Classification) とは、半導体製造装置からの出力をモニタし、異常を検出した場合、その結果を統計的に処理することにより異常の種類を分類する手法。

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