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Motoichiro Kikuchi
菊池 素一郎
プリンシパル・スペシャリスト
掲載: 2022年4月18日

近年、様々な用途にAIが使われ始め、人々を見守り、暮らしを豊かにすると言われています。
ルネサスではVision AI向けMPUとして、RZ/Vシリーズを2020年に市場投入しました。高速なAI推論と低消費性能がエンドポイントAIにマッチすることで、各所から高い評価と多くの引き合いをいただいております。今回はRZ/Vシリーズを使用するパートナ様の実装事例と、安心や快適を与えてくれるAIについて、ご紹介させていただきます。

人々に寄り添い見守るAI

対策はしているものの、小さなお子様の転倒や転落、隙間への挟まり等による身近な事故はなかなか減らすことができません。RZ/Vシリーズでは、よりアドバンスドな骨格検出をパートナ様に開発いただき実装が完了しました。大きな特長は手首や肘、そして足首といった身体の部位レベルでの高精度な検出であり、つかまり立ちからの転倒や、階段や段差のある場所への立ち入り、遊具、ドアなどへの手や頭の挟み込み事故に対し、いち早くアラートを立て安全を確保することができます。従来であれば、人体を一塊りとして認識するため、完全に階段を登り切ってからの検知であったものが、手を掛けたり足を踏み込んだ瞬間に危険を察知することができます。

また、本ソリューションは複数人検知にも対応しており、病院や高齢者施設に展開した場合には、一台のカメラで同時に複数人の見守りが可能となります。ベッドからの転倒事故の予測や、室内のどこに居て、どの様な状態であるかの推定(立ち尽くし、座り込み、転倒)も行えるため、介護職員の負担軽減にも役立つと考えられます。

作業現場での接触事故に対する備え

物流や運送業界の倉庫では、フォークリフトやAGVと呼ばれる無人搬送用ロボット、そして、建設現場ではクレーンやショベルカーなどの建機が行き交うため、常に危険との隣り合わせと言っても過言ではありません。特に、フォークリフトの人への接触事故については、なかなか件数を減らすことが出来ず、安全への強い手立てが必要です。

今回、RZ/Vシリーズへの実装が完了したパートナ様による独自の物体検出モデルは、高精度、かつ高速推論を実行しつつ、単眼カメラによる測距機能も具備しています。つまり、このAIモデルを実装したカメラモジュールをこうした車両機器に搭載することで、周囲監視の強化、特に接近する人との距離をリアルタイムに測定できるため、現場の安全性を高めると共に、作業効率も維持できると期待されています。

更なる展開としては、安全監視の領域を作業現場から一般歩道にまで広げることであり、自転車やキックボードに搭載することで歩行者の安全確保に寄与したいと考えております。

より豊かな生活を支援するものとして

もう一つの骨格検出の実装事例として、10人検知、18関節数、30FPSを実現する軽量、超高速なAIモデルがあります。 近年の健康志向の高まりにより、フィットネスの需要が増えていますが、ダンスやスタジオレッスン等に応用すれば、レッスン参加者とインストラクターとの比較による体幹、姿勢修正が瞬時にできるため、大きなフィットネス効果が得られるとともに、怪我の予防にもつながります。また、コロナ禍で対策が大変だったフィジカルディスタンス(参加者同士の身体距離)の確保も、容易に行えるようになり安心が提供できます。更に、限定区域に入ったかどうかの立ち入りを検知するラインクロスと呼ばれるものに、人数カウントを付加することで、スタジオ内の入室者数管理もAIに任せることができ、運営側の負担を軽減します。

これからも、パートナ様との連携強化により、様々な社会課題の解決につながるAIソリューションの提供に努めてゆきたいと思います。今あるAIソリューションをご覧ください

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