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Uwe Schaefer
Director

化石燃料が産業革命を牽引したように、データは情報社会と多くの近代的な技術革新のための原動力となります。データは至る所に存在しますが、石油と同様にその発生源から処理に必要とされる場所までほとんど使用されないことは多くあります。このような状況において適切なパイプラインとネットワークが存在しなければ、そのデータは真の価値を発揮することができません。そのデータのパイプラインはときには見過ごされたり過小評価されたりすることもありますが、大規模システムの重要な要素の1つとなります。車載エレクトロニクスにおいては、パイプラインは堅牢かつ信頼性の高いデータネットワークによって実現されます。

車載システムにネットワークが導入されて以来、これらのネットワークを行き来するデータ量は急増しています。運転支援システムは、これまで以上に快適さと安全性を高い次元で実現し、車内エンターテインメントは映画館にせまりつつあります。これらと他の多くのローカルおよびリモートの機能とサービス群は、我々が知っている以前の車載コンピューティングに対し、計り知れないデータ量をもたらします。

このトラフィックに対処するには、適切なインフラストラクチャが必要となります。伝統的に、車両は 複数の異なるタイプのネットワークから構成されており、その一部だけを交換することは容易ではありません。ビジネス的かつ技術的な理由の両方によって、構築されたいくつかのシステムは長い将来に渡り新しい車両設計に残存します。十数年前では既存の独自プロトコルと標準ベースのプロトコルを、単一の新しいプロトコル(CAN)に置き換える強力なトレンドがありました。それ以来、CANは自動車システムで普及していますが、またそれと同時に特定のニーズを満たすため新たなプロトコルも生まれ、その結果、今日の車載ネットワークはLIN、CAN、CAN FD、FlexRay、からMOST、それ以上のより多くのネットワークプロトコルが混在します。

車載における画一的なネットワークインフラの実現自体は画期的な変革ではなく、昨今の車載イーサネットの導入は単一バスシステムへの再構築を彷彿させ、今回はIP ( Internet Protocol )への統一です。 幅広い通信レート(10Mbpsから10Gbpsまで)とより高度かつ柔軟なQoSのための真新しいタイムセンシティブネットワーキング(TSN)に関する標準規格によって、車載イーサネットはプロトコル統合の実現に寄与する可能性を秘めています。

ただそこにはシステムを変更することとイーサネットへアップグレードしていくことに、ビジネス的な障壁があります。従来の自動車関連企業では、既存の電子機器を改造して機能を追加または変更する必要がない限り、古い電子制御ユニット(ECU)の設計資産はある車両世代から次の車両世代へと引き継がれています。いくつかのバスシステムの組み合わせは、テスラのような新規参入企業のE/Eシステムなど、考慮すべき従来システムが存在しない "白紙の状態"からのE/Eアーキテクチャ開発であっても起こります。どちらの場合も、異なるバステクノロジ間のブリッジやあるプロトコルからデータを変換するためにネットワークゲートウェイが必要です。このバスブリッジの考え方は、多くのネットワークプロトコルが集約されていく中であっても引き続き必要となります。

将来的にはこれらの ゲートウェイ ECU は新たな課題に直面します。過去の車載ゲートウェイは、CANおよびCAN  FD 、LIN、およびFlexRay間の通信をブリッジしていました。これらプロトコルのデータレートは20kbpsから10Mbpsの範囲であり、ルネサスのRH850/F1Kxファミリのマイクロコントローラ(MCU)のような現在のリアルタイムプロセッサで処理できるイベント発生周期とデータスループットでした。しかし、通信データ量の急増によって、必要とされる通信ビットレートは10 Gbpsまで上昇し、また通信フレーム長は従来CANのようなわずか10 バイトから1000バイトまで拡張されていきます。 それと同時に低速プロトコルとの接続には、単純なプロトコル変換だけでなくバックエンドでのデータ変換も必要です。これらの市場の変化に対し、ルネサスは、新たなプロセッシングデバイスのコンセプトと、統合されたハードウェアアクセラレータ開発によって、これらの新たな挑戦に取り組んでいます。

ルネサスでは、高度な車載ゲートウェイシステムの構築とその評価のために、第3世代版となるビークルコンピュータ(VC3)をマルチプロトコルゲートウェイ評価キットとして開発しました。

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図1:ビークルコンピュータのロードマップ

最初のバージョン(第一世代)はルネサスのパートナーであるCETITEC GmbHと開発し、R-Car H3(SoC)とそれにRH850/F1KH-D8(MCU)を組みあわせたゲートウェイソリューションとして拡販していました。最新世代(第三世代)のルネサスビークルコンピュータでは、内製のイーサネットスイッチ搭載し、ルネサス単独で開発されました。ルネサスビークルコンピュータ3またはVC3と呼ばれるバージョンは、R-Car H3(SoC)、IP開発部門によって開発された内製のR-Switch2イーサネットスイッチ、およびRH850/U2A(MCU)で構成されています。この評価キットのチップセットは、近年ルネサスと一緒になったIDT社とIntersil社の製品ポートフォリオに沿った多数のデジタル半導体とアナログ半導体の組み合わせによって構成、実現されています。

上記の開発ロードマップは、今日での自動車ネットワーク技術の急速な進歩と連動しています。最初のビークルコンピュータはIEEEのオーディオビデオブリッジング国際標準(AVB)をサポートし、 8チャネルのCAN FDと100Mbpsイーサネットを備えていました。現世代では、CAN FDのチャネル数は16本に拡張され、最新の TSN 国際規格をサポートするイーサネットスイッチ(R-Swtich2) に3ポートの 1000BASE-T1ギガビットイーサネットインターフェイスを持ちます。さらに、別のギガビットイーサネットインターフェイスは  AVBをサポートし、ソフトウェア開発とそのデバッグを容易にします。

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図2:堅牢な筐体を持つルネサス ビークル コンピュータ3

VC3は、LINからFlexRayやMOSTのような高速かつ特化したものまで、一般的な車載のインタフェースの全範囲をサポートしています。プロトタイピングプラットフォームとして使用されることのあるビデオ(HDMI)、USB、オーディオ、さらにはWi- Fiなどのインタフェースも利用できるように設計されています。これらのインタフェースがユーザビリティや柔軟性を提供していく中、主要な第一のユースケースは将来の自動車に向けた新たなE/Eアーキテクチャのためのネットワーク戦略を開発評価することです。R-Carファミリから強力な演算能力を持つSoCと、リアルタイム処理が可能かつ16MB Flashメモリを搭載した最先端のRH850/U2Aとの連携によって、数多くの通信インタフェースを処理する十分な演算能力が備わっています。

表1:ルネサスビークルコンピュータによるマルチプロトコルゲートウェイの主な特徴

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システムの中心部はルネサスが開発したイーサネットスイッチとルーティングエンジンであるR-Switch2です。IEEEのTSNに関する最新の 国際標準に準拠し、強化されたQoS機能と共に、ノンブロッキングでストア/フォワードを行うアーキテクチャを提供しています。統合されたフォワーディング エンジンには OSIレイヤ2からレイヤ4までのルーティング機能とフィルタ機能のほか、VLAN サポートも含まれています。 これらによりR-switch2を従来のレイヤ2だけはなくOSI上位レイヤまでのイーサネットスイッチングを実現するレイヤースイッチ(fully autonomous IPv4/IPv6 router)としてコンフィグレーションすることができます。

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図 3: VC3 ブロックダイアグラム

3つの主要な要素であるR-Car H3(SoC)、RH850/U2A(MCU)およびR-Switch2によって、VC3のアーキテクチャはハイエンドの車載ゲートウェイプラットフォームを再現しています。  MCUはリアルタイムドメインのアプリケーションと安全に関する通信トラフィックを処理している中、それと同時にSoCはパフォーマンスを必要とするアプリケーションに対応します。車載アーキテクチャの評価とPoC(Proof-of-concept)開発を可能にすることに加え、お客様は、VC3を試作機として早い段階でゲートウェイシステムの性能評価に着手可能となり、また、ルネサスの次世代R-Carデバイスのファーストサンプル入手よりも前に、一部特定ユースケースのソフトウェア開発に着手できます。

VC3は、数量限定で2020年8月から順次顧客に出荷されています。2021年初頭からより多くのVC3が顧客へ出荷され、利用可能となります。本評価システムは次世代車のためのE /Eアーキテクチャを定義する自動車OEMやTier1の車載ネットワーク開発を対象とし、支援します。

イーサネットTSNを含むすべての主要な自動車通信インターフェイスに向けたルネサスマルチプロトコルゲートウェイソリューション の技術的な詳細につきましては、関連の当社ウェブサイトをご覧ください。使用したR-Car SoCおよび RH850 MCU に関する情報も掲載されています。

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