~世界最大10MBの内蔵RAMによりWXGAサイズの画像表示を外付けメモリなしで実現~
2013年6月20日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:鶴丸哲哉、以下ルネサス)は、これからのスマート社会に必要なヒューマン・マシン・インタフェース(以下HMI)の高度化を実現するソリューションとして 「RZ/A1グループ」の「RZ/A1H」「RZ/A1M」「RZ/A1L」計15品種をこのたび製品化いたしました。これらは当社が「制御とITの融合」をキーワードに、2012年10月に発表した新しいハイエンドマイコン「RZファミリ」の第一弾製品で、当社は本日からRZ/A1HおよびRZ/A1Lの10製品のサンプル出荷を開始します。

 新製品は、世界最大(注1)となる10MB(メガバイト)の大容量RAMおよびHMIに必要となる、カメラ入力、グラフィックス出力、オーディオ機能を搭載していることが最大の特長です。

 外付けメモリ(DRAM)が不要となるため、新製品の採用によりユーザーは、DRAMの長期調達不安の解消やシステムの高性能化・低消費電力化・システムコストの低減が可能なほか、DRAMを外付けすることなくWXGAサイズ(1280×768画素)の画像表示を実現できるようになります。また、英ARM®社のCPUを採用することによりARMエコシステム(注2)が活用できるため、ユーザーのシステムの開発期間短縮および開発費削減に貢献いたします。

 ICT(情報通信技術)と半導体の進化により、家電・産業機器・ビル管理・電力網・自動車・交通など人々の生活に関わるあらゆるものがネットワークにつながり、クラウドと連携して生活を豊かにする「スマート社会」が実現しつつあります。また、スマート社会と人間とのインタフェースではスマートフォンやタブレット端末の急速な普及により、身近な家電製品や産業機器においても高精細なディスプレイとタッチ・インターフェースの要求が急速に高まっています。

 このような高度化したネットワークやHMI機能の実現には、マイクロコントローラ(以下MCU)では達成困難な高性能・高機能が必要であり、従来は組込み用マイクロプロセッサとそのための外付けメモリ(DRAM)でそれらの機能を実現していました。しかし、この実現方法には、DRAMの動作周波数向上に伴いシステムの設計難易度が上がってきていること、DRAMインタフェースの世代交代が早いため特に産業機器市場においては長期安定調達に不安があること、さらに実装面積や消費電力・輻射ノイズの増大、機器の高度化によるソフトウェア開発負荷の増大などの課題があります。

 そこで当社はこのたび、これらの課題を解決するソリューションとして新製品を市場投入することにいたしました。

 新製品の特長の詳細は以下の通りです。

(1)大容量RAM搭載によるDRAMレス・ソリューションにより、外付けDRAMにまつわる不安解消やシステムの高性能化・コスト低減に貢献

 新製品は、マイコンとしては世界最大となる10MBの大容量RAMを搭載。この内蔵RAMにより、プログラム実行時の命令コードやグラフィックス処理などHMI用途に必要な大容量の画像データを内蔵メモリだけで処理可能なため、外付けDRAMが不要となる。またDRAMの調達不安を解消すると共に、総チップ数減少による実装面積低減、低消費電力化、輻射ノイズ低減、プリント基板コストの低減、DRAM用の電源供給が不要なことによる電源コスト低減によりシステムコストを大幅に低減できる。

 さらに、内蔵RAMはLSI間の端子数によるバンド幅制約を受けないため、広帯域・短レイテンシでのメモリアクセスが可能となり、システム全体の性能を30%から50%向上(注3)できる。

(2)ARMCPUとルネサス独自の周辺機能の組み合わせによるスケーラビリティーの提供

 今後ますます高度化するネットワーク機能や高精細化が進むHMI機能の実現には、ハードウェア以上にソフトウェアとその開発環境の充実が重要になる。このため新製品は、開発環境やソフトウェアのエコシステムがグローバルに広がっているARM CPUを採用すると共に、CPU以外の周辺機能についてはHMI用途で数多くの市場実績を持つ当社従来品「SH7260シリーズ」を継承・強化している。これにより、新製品を採用するユーザーは、システム開発において当社従来品で培った技術資産を活かすことができる。

 また当社は、従来ルネサスのマイコンをサポートしていたツールベンダ各社との協業により、今まで以上に幅広く柔軟性に富んだ開発環境をユーザーに提供する。

 さらに業界初の試みとして、ルネサスとARMの共同開発により、「Cortex™-M」用のリアルタイムOSであるCMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)-RTOS「RTX」(注4)を、スループット処理性能に優れる「Cortex-A」に実装。これにより、「Cortex-M」で開発したアプリケーションソフト資産の「Cortex-A」への移行が容易になり、リアルタイム性能が要求される分野に対応する性能スケーラビリティーを提供する。

 「ARMはルネサスが今回、ARMプロセッサベースの製品ポートフォリオを拡大したことを大変嬉しく思います。」ARMのプロセッサ部門組み込みプロセッサ担当バイスプレジデントのKeith Clarke氏は述べています。「車載・産業機器の市場は大変重要なものと認識しており、ARMとルネサスはCMSIS-RTOS RTXを初めてARM Cortex-Aシリーズプロセッサに実装しました。ルネサスの組み込みビジネスでの経験と、ARMの低消費電力プロセッサ技術、および生産性を向上させるソフトウェア開発ツールの組み合わせにより、私たちの共通のお客様は、より魅力的なソリューションを開発し、車載・産業機器市場へ提供することが可能になるでしょう。」

 ルネサスはRL78ファミリ、RXファミリ、RH850ファミリといったマイコン製品群に今回RZファミリを追加する事で、スマート社会の実現に必要なソリューションとそれらを支えるマイコン製品のフルラインナップを提供してまいります。今後もハイエンドからローエンドまで新製品の開発を進め、市場ニーズにタイムリーに対応させていく計画です。

 新製品の立上げパートナー40社の一覧および新製品の主な仕様は、以下URLをご参照ください。

立ち上げパートナー
http://japan.renesas.com/products/mcumpu/rz/rza/peer/eco_system.jsp#partner

仕様概要
http://japan.renesas.com/products/Microcontrollers&Microprocessors/rz/rza/index.jsp

RZファミリの製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/microcontrollers-microprocessors/rz.htmlをご覧ください。

以 上

(注1)2013年6月時点、ルネサス調べ。主記憶メモリとして使えるマイコン内蔵RAMとして世界最大。(マイクロプロセッサのキャッシュメモリは単独で主記憶メモリとしては使えないため除外)

(注2)同一CPUアーキテクチャを軸にしてOS、コンパイラ、デバッガなどの開発環境やデベロッパー、ソリューションプロバイダなどが集まり大きなビジネスを形成している集合を指す。語源である「生態系」をITビジネスに見立てて「エコシステム」と表現している。

(注3)外付けDRAMを使ったシステムに対するアプリケーション性能での比較

(注4)CMSIS(CortexMicrocontroller Software Interface Standard)-RTOS「RTX」はロイヤルティフリー・BSDライセンス・ソースコードでARM Development Studio5(DS-5™)ツールチェーンの一部として提供されます。

*ARM、Cortex、DS-5はARM Limitedの登録商標または商標です。その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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