ルネサスのソリューションでスピーディに開発

USB PD 徹底解説:5 of 5

これまで4回に渡ってUSB PDの技術的な背景と、ルネサスのソリューションを紹介してきました。では、実際の開発に移るにはどのようなステップが必要なのでしょうか。今回は、製品開発を念頭に説明します。

USB PDが電源状況を大きく変える

これまで紹介してきたUSB PDは、PCや周辺機器の電源状況を大きく変えるでしょう。すべての機器がUSB PDに対応すると、ACアダプタから供給される電力を、ハブを経由して、PCやモニタ、ハードディスクに給電できます。各装置間をつなぐのはUSB Type-C™(以下、Type-C)ケーブルです。これまで、バスパワーで駆動される一部を除いて、データ通信を担当するUSBケーブルと、電力供給を担当する電源ケーブルの2本が装置につながっていました。これからは、Type-Cケーブル1本ですみます。複雑に走るケーブルから解放されるでしょう。

ルネサスでは、USB PDに対応した様々なソリューションを用意しています。ソリューションには、規格が求める安全対策などを組み込んであるので、製品の設計負担が軽減されます。では、どのように開発を進めるかを見ていきましょう。

製品企画からソリューション選択へ

まず、製品企画の段階で、電力の供給パターンを確定させます。USB PDについては、開発する製品が給電側(ソース:ACアダプタやDC/DCモジュールなど)なのか、受電側(シンク:各種機器の受電部分など)なのか、あるいは需給電両対応(DRP:HUB、PowerBankなど)なのかが、最初に決まる部分です。その上で、対応させる電圧・電流の値(ソースなら給電能力、シンクなら受電要求の決定)、C-AUTHを適用するか、といったことを決定します。企画している製品が充電に関わるならば、細かく電圧・電流を変化させるPPSに対応させて高速充電機能を盛り込むかも検討事項です。PPSを使えば、エネルギーの無駄を減らせますから、製品の熱設計が緩和されますし、充電時間の短縮も謳えて、販売時の訴求点が増えるかも知れません。

こうして、開発する製品の概略が決まったら、より詳細な設計に入ります。ルネサスは「Renesas USB Power Delivery ファミリ」として、いくつものソリューションを提供しています。その中で、まずUSB PDコントローラ(PDC)を選択し、製品がソース機能を持つのであればさらに電源ICとしてルネサス製あるいはIntersil製の中から機能にあったものを選択することができます。

開発のステップ

ルネサスのソリューションを用いた開発には、PDCに所望の機能を定義する作業(ファームウエア書き込み)と実際の基板などを作製する作業があります。ルネサスの評価ボードセット、デザインキット、ファームウエア作製ツールを使用して両作業を行う様子を紹介します。なお、評価ボードとデザインキットを総称して、ここではRDK(Reference Design Kit)と記します。

RDKを使った開発は、以下のようなステップを踏むこととなるでしょう。

  1. 販社経由で使用ICのRDKを入手する
  2. ファームウエア作成ツールでパラメータをカスタマイズし、評価ボード上で所望の動作をするかを検証する
  3. デザインキットを参考にしてUSB PDの回路を組み込んだ実基板を開発する
  4. カスタマイズしたファームウエアを実基板上のUSB PD用ICに書き込み、動作を評価する

では、それぞれのステップをもう少し詳しく見ていきましょう。

ステップ1:RDKの入手

ルネサスUSB Power Delivery ファミリのRDKは、販社より入手頂けます。なお、RDKに含まれる評価ボードは、現在は貸し出しのみの対応です。デザインキットには、取扱説明書、回路図、部品表、パターンレイアウトが含まれています。

RDKには、「汎用USBコンバータ(シンク製品開発用)」、「DC/DCモジュール(ソース製品開発用)」、「PD HUB(シンク・ソース両対応製品開発用)」などがあり、新たな開発も進んでいます。また、認証機能付評価ボードと認証機能が無い評価ボードが用意されています。開発する製品に合わせて、認証機能の有無を選択できます。上記のRDKのうち、ソース側の機能を持つRDKには、前回紹介したRAA230161やIntersil製品の電源ICを搭載しています。

ステップ2:ファームウエアの変更

評価ボードに搭載されたPDCの動作は、ファームウエアで設定します。PDC動作の核となる部分は出来上がっており、製品毎に合わせる部分をカスタマイズ可能です。このためのツールとして「PDC Image Generator」が用意されています。ツールを起動しプロジェクトを作成する際、PDCに設定する機能を選択します(図1)。更に、ピンアサインのカスタマイズ(図2)や、パワールールなどの各種パラメータのカスタマイズなどが、簡単なGUI操作で行えます。

図1:新しいプロジェクトを生成する際、PDC(ここでは「R9A02G011」)の機能を選択する

図1:新しいプロジェクトを生成する際、PDC(ここでは「R9A02G011」)の機能を選択する

図2: PDC Image Generator

図2: PDC Image Generatorでは、ピンアサインが可能。

必要な機能をピンにアサイン(ここでは、温度アラーム出力をピン3に設定)していないと、当該機能をPDCに定義できないようになっている

企画した製品の機能を設定したら、PDC Image Generatorが生成する「フラッシュメモリ・イメージデータ」をPDCに書き込みます。
書き込みは図3の通り、複数の方法から選択が可能です。

書き込み後、評価ボードにて動作を検証します。

図3:Image Generatorで定義したファームウエアは、色々な方法でフラッシュメモリに書き込める

図3:Image Generatorで定義したファームウエアは、色々な方法でフラッシュメモリに書き込める

ステップ3:実際の基板の開発

次に、実基板の開発です。デザインキットに回路図、部品表、パターン図がありますので、これを参考に開発する製品にUSB PD機能を追加します。

デザインキットのデータを参考に作りこめば、ハードウェアは完成です。

ステップ4:実際の基板での確認

ステップ2で作製したファームウエアをステップ3で開発した実基板上のPDCに書き込みます。書き込み方は、評価ボードステップ2と同様です。ファームウエアを書き込んで、希望通りの動作を確認できれば、完成です。

RDKで工数短縮

これまでに、多くの製品開発が、RDKを活用して行われています。既にルネサスのUSB PDソリューションを使用した経験がある場合、評価ボードを用いず、直接デザインキットから回路とパターンを起こしてもよいでしょう。

デザインキットにある回路図、パターン図はルネサスで開発し、動作を確認したものです。使用するICのマニュアルを見ながら回路図を描き、基板パターンを起こす手間を考えると、デザインキットの利用で、大幅に工数を節約できます。半導体のみならず、製品を作る上で必要な技術、情報を包括的に提供するルネサスのソリューションを製品開発に是非ご活用下さい。

これまで、5回に渡ってUSB PDの解説とルネサスが提供するソリューションの紹介を行って来ました。USB PDは、Type-Cケーブル1本でデータ通信と同時に給電や充電ができるため、機器周辺が整頓されるばかりか、製品個別のACアダプタを不要にし、地球環境の保全にも貢献します。今後、給電用途としてのUSB PD利用が加速していくなか、いち早く製品化を行うために、ぜひルネサスのソリューションの活用をご検討下さい。