ルネサスのソリューションでUSB PDはお任せ!

USB PD 徹底解説:4 of 5

USB PDは、注意深く練り上げられた規格により安全性と利便性を実現しています。そのため、USB PD対応製品を作るときは、規格の詳細までを読み込み、理解した上で製品に反映させなければなりません。これは、なかなか大変なことです。でも、ご安心下さい。ルネサスが提供するソリューションを使えば、簡単にUSB PD対応製品を作ることができます。

2つのキーデバイス

USB PDの便利な機能は、規格に沿って設計した安全な機器により実現できます。前回までに、USB PDの規格がどのように安全を確保してくれているか、また、偽造品対策としてC-AUTHという強力な機器間認証機能がUSB PD規格に備わっていることを説明しました。

安全が十分に考えられた上に利便性も高いUSB PDですが、なかなか複雑です。例えば、USB PDは、ソースとシンクの間で通信をして役割や電力量(電圧や電流など)を決定しています。通信や情報を得た後の判断まで、多くの段階での処理が必要です。また、機器間認証C-AUTHのためには、暗号処理や電子証明書の処理も必要です。さらに、安全性確保のために過電圧、過電流、過熱状態を常に監視し、異常時には規格に定められた処理をしなければなりません。これら一連の処理を、すべてはじめから正しく作り上げるのは容易なことではありません。

そこで、ルネサスは、2つのキーデバイスを中心としたソリューションを用意しました。USB PDコントローラICとUSB PD専用の電源ICです。USB PDコントローラICは、USB PDとしての必要な情報処理を担当します。USB PD専用の電源ICは、パワールールで供給が決められている4つの電圧(5V、9V、15V、20V)を出力できる高効率電源ICです。この2つのICを使って、USB PD対応製品を設計することができます。規格の実現の多くの部分をICに任せてしまうことができるのです。

C-AUTH対応の決定版「R9J02G012」

R9J02G012は、2017年5月にルネサスが発表した最新型のUSB PDコントローラICです(図1)。USB PDの規格USB PD2.0はもちろんのこと、最新規格のUSB PD3.0にも対応しており、電力を供給するUSB PDとしての基本的な動作はもちろん、ソースとシンクの役割(ロール)を瞬時に入れ替える「FRS(ファスト・ロール・スワップ)」のような特徴ある機能も実現します。

R9J02G012は、USB Type-C™のCCピンを通じて、接続先のUSB PDコントローラと通信し、種々の決定をします。自分の側がソースになるのか、シンクになるのかというロール決定や、ソースの場合は何Vで何Aまで供給するのかといったパワールールの決定が代表的なものです。役割や電力量が決まり、電力の授受が始まったら仕事が終わりということにはなりません。過電圧、過電流、過熱状態の監視をロールに応じて行います。異常を見つければ、規格に定められている措置を実施し、障害の拡大を防止します。

R9J02G012の最大の特徴は、単体でC-AUTHに対応したことです。C-AUTHイニシエータとしてもC-AUTHレスポンダとしても動作します。R9A02G011などの従来のコントローラICの場合、セキュアマイコンを外付けしてC-AUTHを実現したので基板面積が大きくなりましたが、セキュアマイコンの機能を内蔵したことで、同じ機能を実現するための実装面積は従来の50%以下に削減されました。

C-AUTHに対応したR9J02G012は、実装面積が充分小さくなったことで、USB PDデバイスだけでなく、USB PD対応のケーブルに内蔵するのにも適しています。USB PD対応のケーブルが搭載を義務づけられているeMarker機能も持ち、ケーブルを機器間認証の対象とするシステムもR9J02G012を使うことで容易に実現が可能です。R9J02G012はフラッシュメモリを内蔵しており、製品の仕様が変更されても、フラッシュメモリの内容を書き換えるだけで容易に対応できるのです。

図1:ルネサスのUSB PDコントローラIC R9J02G012は、C-AUTH機能に対応し、多方面に活用可能

図1:ルネサスのUSB PDコントローラIC R9J02G012は、C-AUTH機能に対応し、多方面に活用可能

省スペース型電源IC「RAA230161」

RAA230161は、USB PDに必須の5V、9V、15V、20Vの4電圧を発生するDC-DCコンバータICです。電力制御用のMOSFETを内蔵しており、60W(電流は3A)まで出力できます。電源効率は95%と高く、発熱を抑えた製品をつくることができます。従来は、4つの電圧に対応するため、4つのDC-DCコンバータを使用していました。これを一つにまとめることで、従来の個別部品による構成に比べて基板面積を半減できます。

RAA230161が内蔵する保護回路は、過電圧、過電流、過熱状態だけではありません。短絡保護(ショートサーキット・プロテクション)やウォッチドッグ・タイマーも内蔵しています。短絡保護は、RAA230161からの出力電圧が急激に低下すると短絡(ショート)が発生したと判断し、電力供給を停止するものです。ケーブル内でのショートで大きな電流が流れ続けて、部材が過熱することを防止できます。ウォッチドッグ・タイマーは、一定時間毎に監視機能を起動し、システムが異常な状態に陥っていないかを監視します。システム異常時には、システムをリセットするための信号を発します。

RAA230161は、前出のR9J02G012と組み合わせて使用すると、基板面積削減や開発期間の短縮で大きな効果を発揮します。もちろん、R9A02G011など他のUSB PDコントローラICと組み合わせて使用することもできます(図2)。

図2:RAA230161は、USB PDに必須の4電圧を出力し、最大60Wまでの電力を供給可能

図2:RAA230161は、USB PDに必須の4電圧を出力し、最大60Wまでの電力を供給可能

充電管理やPPS対応のICも

ルネサスのグループ企業である米Intersil社からは、USB PDを使った電池の充電を指向したICが出荷されています。Buck-Boost Charger IC (BB Charger)は、昇圧・降圧両方に対応したDC-DCコンバータICで、出力電圧幅が広く、1セルから4セルのリチウムイオン電池の充電を制御します。USB PDより電力供給を受けて、リチウムイオン電池に充電するとき、このICが活躍します。このBB Chargerは、電源アダプター等からの入力電圧の異常を監視するだけでなく、充電する電池の電圧が異常になることも監視し保護しています。過電流および過熱状態からの保護も内蔵しています。

Bi-Directional Buck-Boost Voltage Regulator(BB VR)は20Vまでの電圧を供給する昇圧・降圧両方に対応したレギュレータICです。前回、供給する電圧および電流を細かく制御するPPS(プログラマブル・パワー・サプライ)を説明しました。この機能に対応するレギュレータで、要求に応じて電圧および電流を変化させられます。PPSの利点は、受電側が必要な電圧を過不足なく供給することで、受電側での変換ロスと無駄な発熱を抑えられることです。

また、USB PDの特徴の一つであるFRSに対応しており、装置のロールが変わっても、すぐにそれに対応した動作を実施します。たとえば、このBB VRがPCに内蔵され、USB PDにて供給された電力をPC内部用に電圧変換していたとしましょう。ここではPCはシンク機器です。ところが停電が発生しPCが内蔵する電池から外部への給電するようになりました。PCがシンクからソースになったのです。先ほどまでは外部電源からPCの方向に電力を渡していましたが、今度はソースとなったPCから外部の方向に電力を渡すことが可能です。このとき、USB PDが求める電圧に変換しなければなりません。BB VRは、双方向性を持ったICなので、どちら向きに電圧を調整するかというロールの入れ替えに対応しますし、もちろん、過電圧、過電流、過熱状態の保護機能が搭載されています。また、過少電圧保護の機能もあり、規定以下に電圧が下がるような事態にも対応します。

このように、ルネサスはUSB PDで利用できる多様なICを用意しています。次回の本シリーズ最終回ではこれらのICを用いて行うソース、シンク機器の開発をご説明します。

USB PDコントローラIC「R9A02G011」のUser’s Manualをダウンロード

(本文中の「R9J02G012」とは、セキュリティの一部機能を除いて、全く同じ使い方が可能です)