工場における技術的課題

現在の生産工場では、ネットワーク通信のオープン化/イーサネット化を基にして、工場の生産性や安全性を向上させるための高機能化が進んでいます。

工場で使用される機器に要求される技術的な項目を、いくつかピックアップすると、以下の様な項目が考えられます。

  • オープンネットワークを実現する通信プロトコルの対応
  • 高生産性を実現する、高速リアルタイム性の実現と低消費電力化
  • 安全を実現する、機能安全への対応

産業機器ベンダーはこれらの項目に対応する機器を開発する必要があり、そして使う側のユーザーはそれらの機器を導入し運用する必要があります。

R-INコンソーシアムでは、ルネサスエレクトロニクスが提供する技術とパートナーが提供する技術を組み合せて、これら項目に対応する機器の開発やシステムの構築に貢献する事を活動の一つとしています。

ここでは、R-INコンソーシアムが紹介可能な内容を、概要として記載しています。

産業イーサネットプロトコル

産業ネットワークの分野で使用されるプロトコルは、複数存在します。ここでは、代表的な産業用イーサネットプロトコル規格について、概略を紹介します(アルファベット順)。

R-INコンソーシアムには、産業イーサネットプロトコルのベンダーやプロトコル実装を行うパートナーが入会しています。ソリューションやパートナー情報をご覧ください。

CC-Link IE

推進団体 CLPA (CC-Link Partner Association)
Web Site http://www.cc-link.org/
概要 2007年に公開されたプロトコルです。
1Gbpsの通信帯域をI/O制御用通信に使用し、高速・大容量通信を実現します。
工場内基幹通信向けの CC-Link IE Controlと フィールドバス向けの CC-Link IE Fieldが用意されています。
開発にあたり CLPAへの入会が必要です。(レギューラー会員、エグゼクティブ会員、ボード会員)
また、通信実現にあたっては専用ASSP(あるいは専用ASSPを搭載した通信モジュール)の適用が必要と成ります。
ルネサス製品例 R-IN32M3-CL (インテリジェントデバイス局対応)
R-IN32M4-CL2 (インテリジェント デバイス局対応)

EtherCAT

推進団体 ETG (EtherCAT Technology Group)
Web Site http://www.ethercat.org/jp.htm
概要 2003年に公開されたプロトコルです。
1ノードに対して、1つのEthernetフレームを送信するのではなく、一つのフレームに、複数ノード向けのデータを格納し、各ノードがフレームを通過させる際に、該当ノードのデータ読み書きをする事で、高速性、リアルタイム性を確保します。
EtherCATマスタは標準のEthernetコントローラを使用しておりASICなど他の専用チップは必要ありません。したがってEtherCATマスタはEthernetポートをもつコントローラであればOSやアプリケーション環境に依存せずに実装が可能です。
開発にあたり ETGへの入会は無料です。入会すると、VendorIDや仕様書、技術情報の入手など様々なメリットを受けられます。
また、通信実現にあたっては、マスタはASSPは不要ですが、スレーブには専用ASSP(あるいは専用ASSPを搭載した通信モジュール)の適用が必要と成ります。
ルネサス製品例 R-IN32M3-EC, RZ/T1

EtherNet/IP

推進団体 ODVA (ODVA Inc.,)
Web Site http://www.odva.org/
http://odvatagjapan.iinaa.net/
概要 2001年に公開されたプロトコルです。
標準のTCP/IPプロトコルの上に、CIP(Common Industrial Protocl)と呼ばれる制御プロトコルを組み合わせて実現します。このCIPは、DeviceNetやCompoNetとも共通の通信プロトコルであり、各ネットワークとのシームレスな相互通信が可能になっています。また、仕様定義に、CIPが規定するオブジェクトモデルとデバイスプロファイルを用いることにより、マルチベンダー間の互換性を実現しています。さらに、IEEE1588に準拠した厳密な時刻同期や多軸モーション制御、安全ネットワークが構築できます。
開発にあたり EtherNet/IP対応機器を開発にあたって、ODVAの会員となることは必須ではありません。認可ベンダとして登録する事で開発可能です。
ただし、会員には仕様書の購入費用や、コンフォーマンステスト費用の優遇などのメリットがあります。 また、通信機能の実現にあたっては、専用のASSPは不要です。
ルネサス製品例 R-IN32M3シリーズ, RZ/T1(R-INエンジン内蔵品)

PROFINET

推進団体 PI (PROFIBUS and PROFINET International )
Web Site http://www.profibus.com/
http://www.profibus.jp/index.htm
概要 1999年に公開されたプロトコルです。
工場内のすべてのアプリケーションに1本のバスで汎用的に対応するよう設計された通信規格です。標準TCP/IP通信を利用し、リアルタイム性の要求度によって、RT(Real-time)と IRT(Isochronous Real-time)を定義しています。 IRTでは、専用の機能によりイーサネットの通信帯域を分割することにより、高いリアルタイム性の保証をしています。
開発にあたり 開発にあたってはPIへの入会は必須ではありません。
ただし、メンバにはPIが保有する特許の使用権が与えられるなどのメリットがあります。
また開発に当たっては、RTレベルでは専用ASSPは不要ですが、IRTレベルに対応するに専用ASSPあるいはFPGAなどでの対応が一般的です。
ルネサス製品例 R-IN32M3シリーズ, RZ/T1(R-INエンジン内蔵品), TPS-1
高速リアルタイム性と低消費電力に向けてのアプローチ

高速リアルタイム応答性を実現にするには、"通信"と"制御"の両面での対応が必要です。 ハードウェア、ソフトウェア各種方法での取り組みが可能ですが、ルネサスエレクトロニクスでは 特徴的な技術を用いてリアルタイム性と低消費電力化に貢献しています。

"通信"を強化するR-INエンジン

R-INエンジンは、多種のプロトコルやバージョンアップに対応できる柔軟性を持ちつつ、OS処理やTCP/IP通信をアクセラレートするエンジンです。

従来 CPU自身が、RTOS処理やイーサネット通信に関する各種処理を実行しておりましたが、R-INエンジンでは、OS処理およびイーサネット通信に関する共通的な処理機能をハードウェア化し、アクセラレートする事により、CPUの処理負荷を軽減し、高速化を実現しています。

そして、このR-INエンジンに搭載された、RTOSアクセラレータおよび、イーサネットアクセラレータによって、以下を実現しております。

  • 安定した処理時間 (ロージッター)
  • 高速なイーサネット通信

各種OS処理の処理時間比較

この安定した処理性能と、高速性は、従来のイーネット通信の際に大きな部分を占めていたOS処理時間や、処理の揺らぎを吸収するためのマージンの削減に大きく貢献し、リアルタイム性を向上いたします。
特に、産業の分野では、少サイズのデータを頻繁に通信するため、この効果の影響は大きく、この生産性の向上、低消費電力化、多機能化へと繋がります。

なお、このR-INエンジンは、以下のルネサスエレクトロニクス製品に搭載されています。 詳細は下記よりご参照ください。

R-IN32シリーズ RZ/T1

 

制御のリアルタイム性を向上させる密結合メモリ(TCM)

制御のリアルタイム性を向上させるためには、オーバーヘッドを削減する事が必要です。そのため、CPUからキッシュを経由せずにアクセス可能な、密結合メモリ(TCM = Tightly Coupled Memory ) を搭載する事によって、高速処理と確定的なリアルタイム応答を両立を実現しています。

この、密結合メモリ(TCM)は、以下のルネサスエレクトロニクス製品に搭載されています。 詳細は下記よりご参照ください。

RZ/T1