自律分散型エネルギー・システムをスマートにするソフトウェア・ソリューションを「Renesas Synergy™ プラットフォーム」が支援

事例紹介:Renesas Synergy

自律分散型電源あるいは自律分散型エネルギー(太陽光発電や風力発電、地熱発電、燃料電池など)と呼ばれる新しいエネルギーに注目が集まっています。自律分散型エネルギーを使ったシステムでは、情報通信ネットワークによって複数の機器を接続し、効率的かつ最適な運用を可能にします。一方で接続される機器や情報の多様化により、異なる機器を同じように管理・運用する仕組みの構築が課題としてあります。また自律分散型エネルギーの分野では、情報通信技術に詳しい技術者があまり存在しておらず、開発のネックとなっていました。

そこで、組み込み開発ソリューションのリーディングサプライヤーの一つであるイーソルは、自律分散型エネルギー・システム向けソフトウェア・プラットフォーム「eSOL SEAP(Smart Energy Architecture Platform)」を開発しました。「eSOL SEAP」の開発でイーソルが注目したのが、ルネサスの「Renesas Synergy™」です。イーソルの開発エンジニアとルネサスの担当者に、「eSOL SEAP」の概要と開発の経緯を聞きました。(文中敬称略)

イーソル株式会社 植田氏

イーソル株式会社
ソリューションエンジニアリング事業部
第5技術部  部長
植田 修司 氏

株式会社グレープシステム 今敷氏

イーソル株式会社
ソリューションエンジニアリング事業部
第5技術部
中内 雄大 氏

株式会社グレープシステム 今敷氏

ルネサス エレクトロニクス株式会社
グローバル・セールス・マーケティング本部
日系戦略・マーケティング部 エキスパート
漆間 耕治 氏

事例の詳細

ー まずはそれぞれの担当を教えてください。

植田: イーソルの植田です。受託開発部門でプラットフォーム開発の責任者になります。今回のテーマを含めて様々なプラットフォーム開発を担当しています。

中内: イーソルの中内です。これまでにはUSBやイーサネットなどのドライバやミドルウェアの開発をしてきました。今回のテーマとなるプラットフォームの開発では開発リーダーを担当しています。

漆間: ルネサスの漆間です。「Renesas Synergy™」の日本国内マーケティングを担当しています。

自律分散型エネルギー・システム向け機器のソフトウェア開発コストを削減

ー 早速ですが、ソフトウェア・プラットフォーム「eSOL SEAP」(SEAPは「シープ」と発声)の狙いを教えてください。

植田: 自律分散型エネルギー・システムでは、EV、蓄電池、太陽光パネルなど、つながる機器やその機器を開発するプレーヤーが多種多様で、その要求も様々です。その中で共通の部分を見つけてプラットフォーム化しました。通信ネットワークにつながる様々な“モノ”を「同じように制御したい」、「同じように管理したい」、というご要望に応えられるようになっています。

図1 「eSOL SEAP」の構造

自律分散型エネルギー・システム向けソフトウェア・プラットフォーム「eSOL SEAP」のアーキテクチャ概要。
ソフトウェアモジュールを疎結合化し、独立性を高めることで、ソフトウェアの資産化を容易にした。機器の動的な接続/切断、および扱うデータの動的な変更にも対応できる。

 

ー 「eSOL SEAP」を利用する顧客は、どのような会社なのでしょうか。

植田: 自律分散型エネルギー・システムを構成する機器の開発企業すべてです。例えば、パワーコンディショナー(パワコン)の開発企業です。

ー パワコンは、発電された電気を家庭などで利用できるように電力を変換する装置ですね。最近の自律分散型エネルギー・システムだと、パワコンにも通信基盤が不可欠になっています。

植田: パワコンは、電力の変換を担うコンバータと、クラウドおよびノードとデータ通信のやり取りを担うゲートウェイで構成されています。コンバータは従来から存在していた機能なので、パワコンの開発企業には技術的な蓄積があります。しかしゲートウェイは新しい機能なので、技術的な資産を持たない企業が少なくありません。

ー 「eSOL SEAP」の有無で、パワコンの開発にどのような違いが生まれるのでしょうか。

中内: 「eSOL SEAP」の利用によって開発期間を短縮できることがまずは大きな違いです。パワコンが必要とするソフトウェアを構造化および部品化して提供していますので、お客様のソフトウェアのシステム構成(アーキテクチャ)検討をサポートするだけでなく、開発範囲の集約化によりソフトウェア開発そのものの負荷を軽減できます。

植田: 電源技術には詳しいけれども、通信技術にはあまり詳しくない。こういった企業のために開発したプラットフォームだともいえます。

中内: パワコンは機種によって機能の違いがありますし、新しい機能を付け加えたり、古い機能を外したりといった変更があります。パワコンの運用を現場で開始してから、機能を変更する作業は非常に手間がかかります。「eSOL SEAP」はソフトウェアモジュール間を疎結合化し、独立性を高める仕組みを提供していますので、特定の機能を取り外したり、新しいパワコンを追加したりといった作業が容易なシステムを、設計しやすくなります。

通信系ドライバがそろう「Renesas Synergy™」を活用

ー イーソルはもともと、ソフトウェア開発を得意としています。そして「eSOL SEAP」はソフトウェアの集まりです。そうしますと「Renesas Synergy™」を開発に採用した理由がよく分からなくなってきます。

漆間: それについては、開発者が本来ソフトウェア開発のどの部分に重点を置きたいか、ということに関わってきますね。

植田: 「Renesas Synergy™」に含まれているドライバやスタックなどを、弊社が作ることはもちろんできます。ですが、その部分は、本来我々がやりたいことではありません。ドライバ上で動く「eSOL SEAP」そのものの開発に注力したかったのです。通信部分に関して言えば、情報をやり取りしたいだけで、情報をやり取りする経路を作ることに工数をかけたくないのです。「Renesas Synergy™」には通信系ドライバなど各種ドライバが揃っているため、我々はドライバ開発に工数をかけずに、その分「eSOL SEAP」の開発に充てることができます。本来我々がやりたい開発にすぐに取り組めること、それが採用した一番大きな理由ですね。

ー よく分かります。開発期間はあらかじめ、決められていますから。

植田: 我々が「Renesas Synergy™」を採用することに決めた理由は主に3つあります。1つ目は、先ほども述べたとおり通信系のドライバ・ソフトウェアがすべてそろっていた。2つ目は、評価・開発に使用するためのキットが安価で入手できること。3つ目は、開発環境が無償で使えることです。お客様が「eSOL SEAP」を導入するコストも併せて低減できる、といったメリットもあります。

漆間: それらがまさに、「Renesas Synergy™」がユーザーに提供する価値の一部です。

「Renesas Synergy™」のソフトウェア部分

図2 「Renesas Synergy™」のソフトウェア部分。ルネサスが動作保証するパッケージ「Renesas Synergy™ Software Package(SSP)」があり、安心して利用できる。

※ 本記事の内容はインタビュー当時の情報です。Renesas Synergy™ ソフトウェアの最新情報はこちらをご確認ください。

 

プラットフォームの理解を助けるデモを素早く構築

ー 「Renesas Synergy™」の採用により、本来やりたいことに、時間をより多く配分できるようになった。具体的にはどのようなことがありますか。

植田: 例えば、デモ(デモンストレーション)があります。ソフトウェアのプラットフォームは、お客様には分かりにくいので、デモが大事になってくる。我々としては、デモをどういうふうに見せたら、お客様の目を引けるかを検討するために時間を使いたい。ですから、デモ・ボードを組むための時間はなるべく短くしたい。「Renesas Synergy™」を利用すると、デモ・ボードをものすごく早く組めるのです。

「eSOL SEAP」のデモ・システム

図3 「eSOL SEAP」のデモ・システム

太陽光発電パネルを屋根に載せた住宅をイメージしたデモ・システム。住宅の模型に太陽電池パネルのミニチュア(ダミー)を貼り付けてあり、太陽電池の電力で蓄電池(住宅模型の右側面に置かれた黒い箱)を充電するというイメージである。住宅模型の前には「Renesas Synergy™」の開発キットがあり、「eSOL SEAP」もこのボードに搭載されている。住宅模型の左側の2枚のボードは、上が太陽電池の制御をシミュレーションするボード、下が蓄電池の制御ボード。右側のクラウドに見立てたノート・パソコンでは分散型エネルギー・システムの状況を可視化し、円グラフや矢印などでグラフィック表示している。「Renesas Synergy™」の開発キットの右手前に接続されたタッチパネルは、住宅模型の内部に設けられた照明のスイッチである。スイッチをオンオフすることで、住宅模型内の負荷を軽減させ、その結果を表すノート・パソコンの表示がリアルタイムに変化する。

ー なるほど「Renesas Synergy™」を採用していただいた意図がよく理解できました。そうすると、顧客が「eSOL SEAP」を導入する場合も、「Renesas Synergy™」を有力候補のひとつとして前向きに検討していただけそうですね。

植田: 「eSOL SEAP」はハードウェアに依存しないため、お客様のご要望に沿って自由に選択していただけます。「Renesas Synergy™」は実際の製品開発を念頭においた最適な開発環境に合わせて提供されるので、弊社が採用を決めた大きな理由と同様に、お客様もアプリケーション開発に注力できるのが大きな魅力だと思います。

漆間: ぜひとも「Renesas Synergy™」をご採用いただければ、ありがたいです。「Renesas Synergy™」はマイコン、動作保証された基本ソフトウェア、開発環境に至るまですべてそろっていますので、お客様は本来の目的であるアプリケーションの開発に専念できますし、導入に関わる初期費用なども大幅に削減できます。またハードウェアもソフトウェアもサポートの窓口がプラットフォームとして一元化されているのも大きな利点です。

「Renesas Synergy™ プラットフォーム」の全体像

図4 「Renesas Synergy™ プラットフォーム」の全体像

「Renesas Synergy™プラットフォーム」の全体像。ソフトウェア、マイクロコントローラ、開発環境、ソリューション、ギャラリーで構成されている。

※ 本記事の内容はインタビュー当時の情報です。Renesas Synergy™ プラットフォームの最新情報はこちらをご確認ください。

迅速なサポートが開発作業の円滑な進行に貢献

ー 「Renesas Synergy™」を導入されて実際に開発を進めたときの印象はいかがでしたか。

中内: 問合せに対する回答が非常に早く、翌営業日には回答が来るので助かりました。

漆間: 「Renesas Synergy™」の専任サポートチームも設置しており、お客様の開発が滞らないように、お問合せに対しては可能な限り迅速に回答することを徹底しています。ほとんどのケースで1営業日以内に最初の回答ができていると思います。

中内: その迅速なサポート体制のおかげで、開発は非常にスムーズに進みました。一般的には、2~3営業日以内の回答がほとんどだと思います。

ー 迅速なサポートは非常に大切ですね。トラブルがあると、その間、開発が止まってしまうわけですから。

植田: 開発期間に制約がある中で、開発が止まってしまうのは致命的です。ルネサスさんの迅速なサポート体制には、随分助けられました。

漆間: お褒めの言葉、誠にありがとうございます。今回、「Renesas Synergy™」の価値をご理解いただき、実際に採用していただいたことで、時間が限られた中での開発に貢献できたことをうれしく思います。御社のお客様が「eSOL SEAP」を導入される場合にも、併せて「Renesas Synergy™」を選択していただければ、「eSOL SEAP」と「Renesas Synergy™」という2つのプラットフォームの相乗効果で、全体として非常に短期間での導入が可能になり、メリットが最大化できると確信しています。

組み込み機器向け統合プラットフォーム「Renesas Synergy™」とは

Renesas Synergy™は、組み込みシステム開発に向けた業界で初めてのソフトウェア・ハードウェアの統合プラットフォームです。ソリューションギャラリーでは、ルネサスおよびパートナー企業が提供するRenesas Synergy™ プラットフォームに対応したすべてのソフトウェア、ハードウェア、キット、ツール、およびサービスを豊富に取り揃えています。

Renesas Synergy™ ソフトウエアのコアを成すのは、「Renesas Synergy™ Software Package(SSP)」と呼ぶソフトウエア群です。リアルタイムOS「ThreadX®」、ファイルシステム、アプリケーション・フレームワーク、機能ライブラリ、HALドライバ、BSPなどが含まれます。このほかアドオン・ソフトウエアとして、ルネサス自身が提供しSSPと同様に動作保証する「QSA(Qualified Software Add-ons)」と、同社のパートナー企業が本プラットフォーム向けに供給する「VSA(Verified Software Add-ons)」もあります。今回採用いただいたきっかけとなりました、MQTTプロトコルもVSA「SDKPac for Synergy」(米Cypherbridge Systems社製)にてサポートされています。組み込み機器メーカーは、これらを入手いただき実装するだけでよく、基本的な検証作業は不要になります。

プラットフォームを構成する要素として専用に開発されたマイコンは「S1」「S3」「S5」「S7」の4つのシリーズで、いずれも英Arm社のCortex®-Mコアを搭載しています。