RZ/T1: ユーザーの声

Part 3

市場も技術も急速に変化する中、3年後のビジネスを想像できるでしょうか。

「IoT大航海時代! 未来を企画するエンジニアに向けた提案書」では、3年後を見据えた企画を実現するためのヒントとなる記事を掲載します。

サーボモータ制御の第一人者たちが感じたRZ/T1の可能性

第1回・第2回の特集では、IoT(Internet of Things)/M2M(Machine to Machine)時代を迎え、FA(Factory Automation)の現場でどのような変革が起きているのか、特にサーボモータ制御関連を中心に見てきました。

第3回では、この変革に向き合う業界トップランナーの声として、モータ制御分野で最先端の研究を進める国立台北科技大学 YEN-SHIN LAI教授と、ドイツの大手FA機器メーカーであるK社の研究開発マネージャーの方、お二方にお話を伺いました。

ルネサス エレクトロニクスの「RZ/Tシリーズ」を実際に使われてみてどのように感じたか、研究開発の現場のリアルな声を紹介します。

The possibilities of RZ/T1 as seen by authorities on servo motor control

最先端のサーボモータの研究に欠かせないRZ/T1 ~ 国立台北科技大学 YEN-SHIN LAI教授インタビュー ~

-まず、どのような研究をされているのかお聞かせいただけますか。

 この20年間、私たちはFA関連の分野で、主にサーボドライブの制御や制振に関わる研究を行ってきました。具体的には、ACドライブのPWM制御・ホールセンサ内蔵/非内蔵のブラシレスDCモータドライブ・誘導モータドライブの弱め界磁制御、SMPMSM*1とIPMSM*2両方のMTPA*3およびMTPV*4制御などです。

-ルネサスのRZ/T1を使ってどのようなシステムの研究開発を行っているのか、詳しくお話しいただけますか。また、そのシステムにRZ/T1はどのように適合しているのでしょうか。

 現在取り組んでいる研究では、17ビットのアブソリュートエンコーダを搭載した750WのSMPMSMを使用する高帯域サーボドライブを設計・実装しています。電流ループ・速度ループ・位置ループなどのすべての制御を、RZ/T1で実現しています。

 私たちがサーボドライブを開発する目的の1つは、高帯域コントローラの研究です。浮動小数点演算、動作周波数 600MHzのCPUコア、AD変換時間の短さ、高分解能PWM出力といったRZ/T1ならではの機能は、スイッチングサイクルごとのデュアルサンプリングと、8マイクロ秒での電流ループ制御計算の実現に役立っています。

 これまでに私たちが行った検証(テスト、実験)により、RZ/T1のArm®Cortex®-R4 Processor with FPUだけを使って、次のような結果を得ることに成功しています

  1. スイッチング周波数10kHzでは、1.5kHzの電流ループ帯域幅と200Hzの速度ループ帯域幅を実現
  2. スイッチング周波数20kHzでは、2.6kHzの電流ループ帯域幅を実現(速度ループの帯域幅については評価中)

*1 SMPMSM(Surface Mounted Permanent Magnet Synchronous Motor):表面取付永久磁石型同期型モータ

*2 IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor):埋込永久磁石型同期型モータ

*3 MTPA(Maximum Torque Per Ampere):単位電流当たりの最大トルク

*4 MTPV(Maximum Torque Per Voltage):単位電圧当たりの最大トルク

YEN-SHIN LAI, Distinguished/Chair Professor

YEN-SHIN LAI

Distinguished/Chair Professor, Fellow IEEE Founder, Center for Power Electronics Technology National Taipei University of Technology Department of Electrical Engineering

POINT: 高帯域コントローラが実現できると何が嬉しい?

制御ループを高い帯域(短い周期)で回すことができるため、サーボをより高速・高精度で動かせるようになります。

サーボを指定した位置まで素早く正確に回す(行き過ぎずピタッと静止するのが理想です)ことができると、例えば産業用ロボットの生産効率は飛躍的に向上します。

Development of servo drive

-RZ/T1を実際にお使いになって、どのような点が優れていると思われますか。

 サーボドライブの開発において、以下の優れたポイントがあります。

  1. 最大動作周波数600MHzのFPU搭載CPUコアにより、演算処理時間を大幅に短縮
  2. 動作周波数60MHz、逐次比較型ADCにより、サンプリングの遅延を低減
  3. マルチプロトコル・エンコーダインタフェースのハードウェアアプローチにより、エンコーダのデータ処理に必要なCPUの負荷を低減

-サーボシステムの将来のトレンドに対して、RZ/T1はどのように貢献できるとお考えでしょうか。

 サーボシステムの重要な機能、例えばFFTや制振などに、RZ/T1が大きく貢献すると考えています。

 私たちは、電流および速度制御ループの評価に続けて、位置制御の評価を始めます。この結果を加味した上で、RZ/T1を使ったサーボドライブ向けリファレンスキットを開発することを計画しています。このリファレンスキットは、業界の要求に応えるものになると考えています。

 これに加え、RZ/T1の持つ性能を引き出すために、例えば、内蔵されているマルチプロトコル・エンコーダインタフェースの利用、振動数の特定と抑制、パラメータの自動決定などの研究もしていく計画です。RZ/T1により高性能サーボドライブ制御技術の開発は更に進むものと期待しています。

-貴重なお時間をありがとうございました。RZ/T1を活用いただいた研究で、サーボドライブ制御技術の更なる高性能化が望めるとのこと、研究成果を楽しみにしています。

高度に統合されたデバイスが、設計の複雑さを大幅に低減 ~ ドイツFA機器メーカー K社 研究開発マネージャーインタビュー ~

-まずは自己紹介をお願いいたします。どの市場向けにどのような製品を開発されているのでしょうか。

 私はK社で制御エンジニアリング分野の研究開発マネージャーを務め、マイクロコントローラの選定を担当しています。K社はドイツのFA機器メーカーで、モータ・ギヤ・クラッチ・ブレーキのような電気機械製品と、周波数インバータ・サーボドライブ・PLCコントローラ・モーションコントローラのような電子製品を手がけています。当社の製品は、プラスチック機械・繊維機械・木工・再生可能エネルギー分野など、様々な機械メーカーで使用されています。

-どのようなアプリケーションにルネサスのRZ/T1を導入しているのでしょうか。RZ/T1を選んだ理由もお聞かせください。

 RZ/Tシリーズのコントローラは、周波数インバータとサーボドライブで使用する予定です。当社では、ルネサスのコントローラをH8/3048から使用しており、最新の製品にはSH-2Aシリーズのコントローラを搭載しています。H8マイコンの幅広い製品ラインアップ、SHマイコンの高い性能、そしてルネサスの製品は総じて品質が高いという点が、採用を続けている決め手です。次の開発では、性能を更に高めるためにRZ/T1を選びました。RZ/T1は、リアルタイムイーサネット通信専用の周辺機能・エンコーダインタフェース・デルタシグマ型電流センサインタフェースなどが高度に統合されたデバイスです。従来これらの機能は、FPGA等の外部デバイスで実装していた部分でした。RZ/T1を使うことで、外部デバイスが不要となり、この部分の設計の複雑さを著しく低減することができます。もちろん、総材料コストの削減にもつながります。当社の場合、総材料コストの25%以上の削減に繋がると試算しています。

-RZ/T1を実際に使用して、どのような印象を持たれましたか。

 まだ評価の初期段階にありますが、一般的なプロセッサに採用されているCortex®-A7やCortex®-A9ではなくCortex®-R4コアを採用したという判断を特に高く評価しています。これにより、SHマイコンのシステムに近い割り込み応答性能が得られ、競合他社製品に比べて非常に優れたリアルタイム性能が得られます。さらに、Cortex®-M3ベースのR-INエンジンとの組み合わせにより、サーボシステムのモーション制御部から通信とユーザインタフェースのタスクを切り離すことが可能となります。また、ルネサスの開発ツールがRZ/Tシリーズに対応していることも重要で、H8マイコンやSHマイコンを使っていたユーザが、RZ/T1ベースのプロジェクトへ移行する際の負荷が軽減されます。

-次世代のRZ/T1とルネサスに対して、どのようなことを要望されますか。

 ソフトウェア開発者として真っ先に望むのは性能の向上です。次世代のRZ/T1では、Cortex®-R4のクロック数が上がることを期待しています。私が考えるに、サブコントローラであるR-INエンジンの性能向上も重要です。なぜなら、IoTとインダストリー4.0の要件を満たすためには、アプリケーションのうちR-INエンジンによって処理される部分が増えるからです。これには、オペレーティングシステムへの対応も含まれます。ソフトウェアプラットフォームへの対応も含まれるかもしれません。リアルタイムイーサネットインタフェースの統合という点では、POWERLINKへの対応も重要になるでしょう。

-実際の製品開発視点からの声をありがとうございました。当社次世代製品への貴重なご提言も踏まえ、引き続き製品企画者・開発者の方の要求に応えられるように製品開発を行っていきます。

最先端のサーボモータ研究者から高い評価を受けたRZ/T1、その詳細はこちらから!

RZ/T製品紹介資料

My Renesas に登録すると、RZ/T1に関する資料をダウンロードできます。

My Renesas の新規登録はこちら

関連情報

短期開発を支援する「RZ/T1モーションコントロール・ソリューションキット」

高速・高精度なACサーボドライブや産業用ロボットシステムを短期に開発可能な「RZ/T1モーションコントロール・ソリューションキット」の機能拡張版を販売開始しました。

特長

  • サーボモータの駆動に必要な環境一式を同梱、すぐに試せる
  • 基板の設計情報・制御用ソフトウェアのソースコードも同梱、開発期間を大幅短縮
  • 付属のモーションコントロールソフトウェアにて、PCからサーボモータの制御・状態モニターが可能
  • EtherCATやPROFINET、Ethernet/IPなどの産業用プロトコルの評価も可能

拡充内容

ファームウェア、ユーティリティツールの機能追加

  • アブソリュートエンコーダに対応 (ニコン A-format™、 BiSS-C、 Endat2.2、多摩川精機)   
  • 独TMG社製 PROFINETプロトコルスタックの評価版および、Ethernet/IP プロトコルスタックの評価版を同梱
  • EtherCATおよび、CiA402ドライブプロファイルに対応

ドキュメントの拡充

  • ファームウェア・アプリケーションノートの追加
  • 速度プロファイル生成ライブラリ・ユーザーズマニュアルの追加

キットのご紹介動画(2分50秒から実際にキットを使用しています)

ソリューションキットに同梱されるハードウェア・モーションコントロールソフトウェアのマニュアル、ファームウェアのアプリケーションノート等を以下から特別にダウンロードいただけます。キットの概要確認や、事前検討にお役立てください。

 ソリューションキット各種マニュアル