光MOS FETの導通時「電流-電圧」特性は3種類ある

1. 光MOS FETの導通時「電流-電圧」特性は「直線型」と「S字型」と「逆S字型」

光MOS FETが導通したときの「接点」の電気的特性は、それが「半導体」であるがゆえに、用途や設計に応じて「直線型」と「S字型」と「逆S字型」の3種類があります。

あらかじめこの点を理解して、用途に最適な品種を最適な条件でお使いください。

なお、ここでの説明は、データ・シート標記の規格および「特性曲線」に準じた標準的な動作条件におけるもので、高温低温や、パルス大電流などに対しては異なる特性様態を示す場合もあります。

あらかじめご了承ください。

(1)直線型

光MOS FETは、基本的にはMOS FETの特性そのままに、「接点」を通過する信号に対して、次の図のように、順逆双方向に直線性の良い、理想的な純抵抗特性を持ちます。

 

負荷電流vs.負荷電圧の例(1)

図1 負荷電流vs.負荷電圧の例(1)

(2)S字型

しかし、中には、電流の伸びが途中で鈍ってしまう、S字型特性の品種もあります。
これは、光MOS FETに使用しているMOS FETが、基本的には次図のようにいつかは電流の伸びが鈍る特性を持っているからです。

NチャネルMOS FETの順方向特性の例

図2 NチャネルMOS FETの順方向特性の例

傾向としては、低ON抵抗だが大電流用ではない品種にそのようなものがあります。
特性曲線からは分かり難い場合もありますが、このような品種では、大電流に対しては小電流のときよりも大きなON抵抗値(=導通時端子間電圧/負荷電流)を持ちますので、小電流と大電流それぞれに対して異なる値のON抵抗規格が規定されている場合があります。

(3)逆S字型

さらに、次のように逆S字の特性を持つ品種もあります。

負荷電流vs.負荷電圧の例(2)

図3 負荷電流vs.負荷電圧の例(2)

一般的に、ON抵抗が大きめになりがちな高耐圧品にこのような特性を持つものが多く、そのような特性の光MOS FETでは、小電流と大電流それぞれに対して異なる値のON抵抗規格が規定されている場合があります。
しかし、このような特性曲線は、「図2 NチャネルMOS FETの順方向特性の例」のような通常のMOS FETを通常に使っている限り、目にすることはありません。

ではなぜ、光MOS FETにはこの奇妙な特性を持つ品種があるのでしょうか?
以下、その理由と使用上の注意事項について説明します。

 

2. 光MOS FETは2つのMOS FETを逆直列につないでいる

光MOS FETは、通常2つのMOS FETを、次の図のように逆直列に接続して「接点」を作っています。

光MOS FETの内部接続

図4 光MOS FETの内部接続

MOS FETは基本的には直流制御素子ですから、ゲート-ソース間にチャネルがピンチオフする値のバイアスをかけていてもドレイン-ソース間を逆バイアスにすると、次図のように、いともあっさりドレイン-ソース間に逆電流が流れてしまいます。

ピンチオフ状態のNチャネルMOS FETの逆導通特性の例

図5 ピンチオフ状態のNチャネルMOS FETの逆導通特性の例

これは、「図4 光MOS FETの内部接続」のように、MOS FETはそのドレイン-ソース間に「必ず」並列の寄生ダイオードを持っているからです。

この寄生ダイオードはMOS FETの構造自体に由来するもので、ドレイン-ソース間が順バイアスであれば遮断していますが、逆バイアスになると導通するので、交流スイッチとしても使う光MOS FETではMOS FETを2つ逆直列につないで、電圧が順逆どちらの方向になっても、いずれか一方のMOS FETで遮断状態を保てるように作られているのです。

そのため、光MOS FETが導通するときは、どちらか一方のMOS FETは順方向に導通しますが、もう一方は逆方向に導通します。

順方向に導通している方のMOS FETは「図2 NチャネルMOS FETの順方向特性の例」のとおり、ゲート電圧が十分であれば、広い電流範囲に渡って直線性が良好なON抵抗が得られます。

一方、MOS FETは一般的にドレイン-ソース間が逆バイアスでも小電流領域では順方向とほとんど変わらない導通特性を持つことが知られていますが、逆電流が大きくなり、ドレイン-ソース間逆電圧が「図5 ピンチオフ状態のNチャネルMOS FETの逆導通特性の例」のように常温でおよそ0.6 Vを越すと、寄生ダイオードが導通して、ドレイン-ソース間に並列に入ります。

したがって、電流がある方向に流れているときを考えると、光MOS FETは次のような等価回路になります。

光MOS FETの導通時接点等価回路

図6 光MOS FETの導通時接点等価回路

この等価回路では、本来であれば「R1+R2」の順抵抗特性であるところを、電流が大きくなって、端子間電圧が常温でMOS FET1本あたり0.6 V、2本でおよそ1.2 Vを越えると寄生ダイオード(上図接続ではD2)が導通し、そこから端子間電圧の上昇が鈍ります。

つまり、逆導通のMOS FET側だけダイオードによるレベルクランプがかかった状態になります。

そのため、これを順逆双方向について連続で観測すると「図3 負荷電流vs.負荷電圧の例(2)」のような逆S字型になります。

 

3. 逆S字品でMOS FETを並列接続して直流に使うときは大電流でも小電流のON抵抗値

逆S字特性の光MOS FETの場合は、当然ながら、ON抵抗値(=導通時端子間電圧/負荷電流)が小電流領域と大電流領域とで異なりますので、それぞれに規格を規定しています。

用途としては、低電圧大電流の用途よりも、高電圧であっても小電流な用途の方が接点歪みが小さく、適しています。

しかし、直流に対して、次図のような接続で使うときは、MOS FETは2つとも順方向で動作するので、寄生ダイオードが導通することはありません。

直流用途の並列接続

図7 直流用途の並列接続

したがって、この場合は大電流使用であっても、小電流におけるON抵抗の規格値を適用しなければなりません。
規格は2つのMOS FETが直列の場合の値ですから、このような並列接続の場合には「小電流における」規格値の1/4が、実際に得られるON抵抗の期待値となります(保証値ではありません)。
これは逆S字品だけに特有の、特に注意が必要な点です。

4. 大電流で使うときは周囲温度にも注意

そのほかに、逆S字型ではON抵抗が大きめの品種が多いので、大電流領域では端子間電圧も大きくなりやすく、内部損失(発熱)も大きくなりがちです。

そのため、導通特性だけでなく、次図のような「最大負荷電流 vs. 周囲温度」特性をよく見て、最大使用温度において許容電流を越えないように注意することも大切です。

「最大負荷電流 vs. 周囲温度」特性の例

図8 「最大負荷電流 vs. 周囲温度」特性の例