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Yusuke Ojima
小嶋勇介
課長
掲載: 2021年12月6日

みなさま、こんにちは。ルネサスエレクトロニクスの小嶋と申します。車載・産業パワーデバイスのマーケティング・お客様サポートを担当しています。

ルネサスブログではパワーデバイス製品をリレー方式で紹介しています。前回は、マイルドハイブリッド車向けのパワーMOSFET製品について紹介しました。(見逃した方はこちら)今回は産業用パワーMOSFET製品を使ったリチウムイオンバッテリー向けソリューションについてお話しします。

2019年末からのCOVID-19の影響により、在宅等の新生活様式が浸透しました。これに伴いDIY傾向も高まり、電動工具や芝刈り機の需要が伸びています。これまではどちらかというと仕事用(=プロフェッショナル用途)のイメージでしたが、最近は個人用を意識してホームセンターなどの売り場でも商品が目立つようになりました。これらの工具は、従来はACタイプ(コードで電源供給)の製品が主流でしたが、作業範囲の制約が無く、また作業性も良いことからDCタイプ(リチウムイオンバッテリーで電源供給)の製品が増えています。実はこのバッテリーに異常が発生した時に保護する回路が搭載されており、そこで活躍するのがパワー半導体です。ではこれらの電動工具製品を企画・製造しているお客様が期待していることや困っていることは何でしょうか?

お客様の期待・課題:“壊れない” そして “低発熱”

  • 壊れない:バッテリーに異常(=過電流等)が発生した時に電源ラインを遮断するキーデバイスであるため、壊れにくいことが要求されます。
  • 低発熱:数10Aの電流を流すため、バッテリー内の電流経路の損失が発熱となり、リチウムイオンバッテリーの安全性を脅かします。そのためこのバッテリー内の電流経路の損失をいかに低減させるか?が課題となっています。この遮断用に使用されるパワー半導体も低損失(=低オン抵抗)が要求されます。
  • BOM低減:既存製品と同じ安全性を確保しつつBOM低減が要求されます。
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これらの期待・課題に対して、ルネサスのパワーデバイスで解決できることはないのでしょうか?

ルネサスの考えていること:パワー半導体だけでなく周辺部品も含めた課題解決

車載用途・産業用途問わず、高破壊耐量・低損失の市場ニーズに対し、ルネサスでは製品ラインナップを準備しています。またお客様にも評価をいただき広くご採用いただいています。ご興味のある方はぜひご覧ください。(車載用途はこちら。産業用途はこちら。)パワー半導体における特性改善(=低オン抵抗)を目指して次世代製品の開発に取り組んでいますが、この性能改善にもいつか限界が来ます。
そこで着目したのが、同じくバッテリー内の電流経路に挿入されている電流検出用抵抗(=シャント抵抗)です。電流が流れた時には、このシャント抵抗もパワー半導体と同じくらい発熱します。 このシャント抵抗での発熱を軽減するためには抵抗値を小さくしないといけないのですが、副作用があります。抵抗値が小さいことでシャント抵抗からの信号レベルが小さくなり、信号を検出する側の回路・製品の見直しが必要(最悪の場合、コストUp)となります。またこのシャント抵抗も「抵抗値をゼロにできない」という限界があります。そのため、パワー半導体の性能改善によるシステム全体の性能改善に依存しているのが実情です。

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このトレードオフの関係にある課題に対し、MOSFETに電流検出の機能を搭載し、BMIC(Battery Management IC: 製品紹介はこちら。今回のケースではRAJ240100GFPを使用。)との組み合わせでこの電流値を読み取る、つまりシャント抵抗レスソリューションを検討・開発中です。発熱の要因の1つである“シャント抵抗”を削減することが可能となり、温度を大幅に下げることができます。またMOSFETとシャント抵抗のBOMに対し約6%の低減も可能です。これによりリチウムイオンバッテリーのさらなる安全性への貢献、もしくは同じ発熱でもより高出力化への対応が可能になるなど、適用できるアプリケーションの幅が広がると考えています。

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今回は産業用パワーMOSFETで取り組んでいる開発製品の例を紹介させていただきました。これとは別に、量産中の製品を組み合わせたトータルソリューションを“Winning Combination”で紹介していますのでこちらもぜひご覧ください。(車載用はこちら。産業用はこちら。)ルネサスのパワーデバイスに興味を持たれた方はぜひお問い合わせください。

パワーデバイス製品のリレー紹介は今後も配信していきます。次回もどうぞお楽しみに!

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