ルネサスの品質向上への取り組み 「ノウハウ」を駆使して、砂粒一つを見つけ出す

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ルネサスの品質向上への取り組み 「ノウハウ」を駆使して、砂粒一つを見つけ出す 半導体の用途が広がり、お客様のデバイスへの要求も多様化している。しかし、共通して求められる不変の要求は品質であり、信頼性だ。お客様の求める品質を提供するために、ルネサスでは製品の開発段階から品質と信頼性の向上に取り組み、同時に、生産プロセスの改善を図っている。

真の「品質向上」に向けた、ルネサスの取り組み

ルネサスでは、お客様に最適なソリューションを提供するためには、お客様の求める品質と信頼性を提供することが重要だと考えている。お客様の受け入れ検査では、製品不良率「ppm(parts per million:100万個あたりの故障個数)」や「FIT(Failure In Time:総使用時間の間に起きる故障個数)」といった数値を、その半導体の用途に合わせて定めている。高い品質や信頼性を求められるお客様のために、半導体をスクリーニング(欠陥を持った製品の除去)し、故障する潜在的な要因を持った半導体を出荷しないノウハウをルネサスは長い経験によって培ってきた。

製造後の検査だけでは十分に不良を発見できず、出荷されてしまわないように、不良が発生するかもしれない原因を生産プロセスの中で見つけることが肝心だ。不良原因をつきとめ、修正できれば歩留も高まり、不良を低減させ、その両方で品質を向上させる。ルネサスでは、品質低下要因の削減を図るプロセス検証をループ化して、止まることなく継続的に取り組んでいる(図1)。

図1:ルネサスの品質改善の取り組み

図1:ルネサスの品質改善の取り組み。 品質改善のためのプロセス検証に、ループを描くように継続的に取り組んでいる。

「品質向上」を実現するノウハウ① ―ウエハテスト―

半導体の生産プロセスと不良発生の関係を簡単に説明しよう。半導体の生産工程ではさまざまな処理を行うが、この処理過程で不純物が混ざったり、異物がウエハに乗ってしまったりして回路形成が予定通りに行えないことがある。これが不良に通じる。ウエハとは、回路を形成する超高純度のシリコンの基板で、大きなものでは直径300mmもある。ここに多数の回路を形成し、完成後に個々のチップ(ダイ)に切り出し、これをパッケージに収める。

試作段階で問題を探り出すために、さまざまなテストをウエハに対して行う。量産に取りかかるまでに生産工程を安定させるため、欠かせない作業だ。そのために、設計の段階からテストを考慮して、検査用の回路を埋め込み、情報を取り出す方策を用意している。

デジタル回路は、順序回路(フリップフロップ)と組み合わせ回路に分かれるが、順序回路のテストをチェインテストと呼び、組み合わせ回路のテストはスキャンテストと呼ぶ。チェインテストのためのテストモードでは、フリップフロップとフリップフロップの間にある組み合わせ回路をスキップするように回路を作ってある。そのため、このテストモードでは、フリップフロップの動きが計画通りか、迅速に判定できる。一方のスキャンテストのためには、テスト用の入力パターンが用意されており、組み合わせ回路が正しく動作しているかを判定している。このパターンは膨大な量であるため、すべてを行うとコストが上がってしまう。ルネサスでは長年の実績から、コストを抑えつつ、効率よく問題を発見できるようにテストするノウハウを蓄積してきた。

「品質向上」を実現するノウハウ② ―TEGの有効活用―

半導体の開発では、量産の開始前にテストウエハを生産工程に投入する。そして出来上がってきたウエハに対して前述のテストを行う。このテスト結果を分析すると不良の種類が分かる。そして対策を立て、再度テストウエハを投入する。生産には何週間もかかるため、対策が有効かどうか判明するまでは時間が必要だ。

品質保証のために使われるもう一つの道具に「TEG(テグ:Test Element Group)」がある。ウエハ上に特別に配置する、生産上の問題を分析するための回路だ。このテスト回路は、デバイスの特性分析に非常に有効だ(図2)。

図2:TEG活用のメリット。有効活用には相当のノウハウが必要だ

図2:TEG活用のメリット。有効活用には相当のノウハウが必要だ。

テストウエハとTEGの活用により、生産工程での問題を見つけて対策を打つ。現在のLSIは1チップ上に1億個のトランジスタが乗っていることも珍しくない。例えて言うならば、東京ドーム球場の芝の一本一本がトランジスタだ。この中に一粒だけ落ちている砂粒、これが不良の原因ということもある。その場合は、その砂粒のような問題を取り除いただけで、不良が激減することもある。前述のスキャンテストと同様に、これも、ルネサスの貴重かつ強力なノウハウの一つだ。

ノウハウを生かして、社外生産品も同品質に

東日本大震災以降、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点から社外の生産設備(製造専業メーカー)への製造委託を行うようになった。ルネサスは、社内、社外どちらの生産設備で製造した製品でも、同じ品質を維持するように管理している。

製造専業のメーカーに生産委託する場合、図面を渡せば委託元の仕事は完了し完成を待つだけ、という事ではない。委託先は製造には責任を持つが、テストは委託元、つまりルネサスの責任になっている。生産委託先とルネサスが、共同で解決すべき事項は多い。

生産委託先ごとに異なる装置が使われ、異なる生産方法がある。そして、生産時に発生する問題点には、委託先に独特のものもあれば、共通するものもある。品質管理を担当するルネサスは、これまでの知識と経験を活用して問題を分析し、対策を立てる。その際には、生産プロセスのみならず、装置、設計など、より上流部分に関する経験が大いに役立つ。「ファブレス」との言葉があるが、生産工程、設計工程の知識無しに高い品質を実現するのは非常に難しい。

設計図だけを渡す委託元の場合、問題点の指摘はできず委託元は良品を選別するだけになる。これでは、製品の品質は高められない。ルネサスでは、生産委託とは言っても製造に関してすべてを委託するものではなく、問題が発生すれば共に解決する。こうして、社内、社外のいずれの設備で生産しても同じ品質を実現している。

お客様の求める品質をご提供

品質向上に向けたルネサスの取り組みの成果を顕著に表しているのが、マイコンの不良率(ppm値)向上だ。毎年、ほぼ一貫して不良率が低下している(図3)。また、お客様が使用している間に発生する故障(FIT値)も低減すべく努力を重ねている。

ルネサスが半導体を供給する業界は多岐にわたる。自動車、産業用機器、家電製品など、それぞれの分野ごとにお客様が半導体に求める品質基準が異なる。ルネサスは、長年の経験から得たノウハウを駆使した業界随一の品質向上技術を、時には余裕を持って、時には最先端の技術を駆使して、お客様が求める品質で製品を供給している。高レベルの品質向上技術を有するからこそ、お客様のさまざまな要求にお応えすることが可能だ。

図3:ルネサスの自動車用マイコンの不良率(ppm)

図3:ルネサスの自動車用マイコンの不良率(ppm)。着実に高レベルで改善が進んでいる。

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