スマートメータ計量向け低消費電力デルタシグマA/D内蔵マイコンと開発キット

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スマートメータ開発向けソリューション[前編] 電力の計量 「省エネ」が、新たなステップへと踏み出す

人類の未来をかけて、世界が取り組んでいる「省エネ」。さまざまな技術が生まれる中、その中核を成すデバイスとしてスマートメータに注目が集まっている。ルネサスが提供する、スマートメータ開発向けソリューションを全二回連載で解説しよう。スマートメータ開発に自社開発で取り組み、リファレンスデザインを検討する技術者にとって必読の連載となるだろう。

スマートグリッド、スマートメータがなぜ「省エネ」につながるのか?

世界中で、スマートメータの導入が進んでいる。スマートメータとは電気、ガス、水道の使用量を測るメータの中で通信機能を搭載したものを指す。リアルタイムにエネルギの利用量が把握できるため、省エネに欠かせない装置とされ、特に電力メータでの導入が急速だ。本連載でも、電力スマートメータにフォーカスする。

この[前編]では、スマートメータの役割や市場動向、そしてメータの要となる「計量部」を解説し、次回の[後編]で「通信部」を紹介する。

スマートメータは、供給側との通信(Aルート)と消費者側との通信(Bルート)の二種類の通信機能を有する(図1)。これまでは、通信と全く関係なかったメータだが、これからは供給側と消費者側の情報を発信、受信することで、省エネを次のステップに進めるための大きな役割を担うことが期待されている。

図1:電力スマートメータの通信

図1:電力スマートメータを中心にしたHEMS

スマートメータが導入されることで、まず変わるのは検針作業だ。これまでは、検針員がメータを目視で確認(検針)していたが、これを遠隔に行う事ができる。また、供給側から通信を介して開通、遮断の制御も行えるようになり、作業員の派遣などが不要になる。しかし、スマートメータの本領は、遠隔操作にあるのではない。

電力メータがスマート化する(スマートメータが導入される)ことは、家庭や建物の電力使用量を可視化するエネルギ管理システム「HEMS(Home Energy Management System)/BEMS(Building Energy Management System)」の実現にとって不可欠だ。従来は、消費者は個々の装置の消費電力を知ることはできたが、家庭(建物)全体の電力消費量を知る手立ては無かった。スマートメータの導入で、リアルタイムに電力消費量を知ることが可能になり、その結果、消費エネルギの目標値と実際の差分が判明し、エネルギ管理のための対策を打つことができる。

例えば、消費者がある電気装置を使おうとしたとする。エネルギ管理システムは、スマートメータから得た情報で、現在の電力消費量が契約上限値に近ければ、このままでは容量オーバーで遮断されることを警告したりする。電力管理の自動化が進んでいれば、他の装置の電力消費量を下げて、全体としては契約容量以内に収めるような電力管理、調整が行われる。

また、今後の電力自由化に伴い、電力消費状況に合わせた最も廉価な供給元を選択する事も可能になる。従来の省エネが、各機器レベルでの最適化とすれば、スマートメータの導入後は家庭、または建物全体での最適化が図れるようになるのだ。

さらに、スマートメータを起点にした、送電網(グリッド)全体のスマート化も期待されている。電力供給を動的に最適化するスマートグリッドに、電力消費量とその変化をリアルタイムに把握するスマートメータは欠かせない。電力の生産量や供給経路の効率化に大きく貢献するだろう。

太陽光発電などの再生可能エネルギから、電力が大量に送電網に供給されるようになると、送電網のスマート化は電力の安定供給のためにも必要になる。スマートグリッドを構成する、まさに要とも言える要素がスマートメータだ。

急拡大する、スマートメータ市場

世界が注目するスマートメータ、ではその普及状況はどうだろう。日本では、2014年4月の省エネ法改正によって、国内電力大手10社がスマートメータの導入を決定した。最も早い東京電力では、2020年までに、全国では2025年までに置き換えは完了する予定になっている。

米国では、すでに5,000万台を越える電力用スマートメータが設置されており、世帯普及率は40%を越えている(図2)。欧州(EU)では、欧州議会から電力メータのスマート化指令(指令2009/72/EC)が2009年に発出された。加盟国にスマートメータ化に係わる法制度の整備を求めるものだ。2014年時点で、スウェーデンでは100%、イタリアでは95%のスマート化が達成されている。先進国ばかりではない。新興国でもスマートメータへの関心は高く、各国で導入が進んでいる(図3)。

今後、スマートメータの導入はさらに加速するだろう。その成長市場を見据えながら、スマートメータの開発に課題を抱えるお客様は少なくない。ルネサスが多くのお客様の声を聞き、スマートメータ開発の課題を的確に解決するために用意したソリューションを解説しよう。

計量はスマートグリッド機器の要。 ルネサスのスマートグリッド機器向けソリューション ― 電力の計量 ―

(1)圧倒的低消費電力

スマートメータの特長が通信機能にあるのは確かだが、メータの要は何と言っても電力量を測定する計量部にある。ルネサスは、開発効率を最大限に高めるキットソリューションを用意している。

計量部のキットは、スマートメータ用に開発されたマイコン「RL78/I1B」を中核に各種開発を行える。RL78/I1Bは、低消費電力化を徹底しており、メータ自体が電力を消費することを極力抑えている。

計量した時間帯などを電力会社や消費者に報告する必要があるため、スマートメータの計量部は時刻機能を有しており、また、停電に備えて時計(RTC:リアルタイムクロック)を電池でバックアップしなければならない。従来は、マイコン内蔵のRTCは消費電力が大きいため、外付けの低消費電力型RTCICが使用されていた。RL78/I1Bでは、新開発の超低消費電力型RTCを内蔵しているため、部品点数を減らし、工数も含めてコスト削減が可能だ。また、RL78/I1Bのオンチップオシレータは、32KHzの外付け発振子を使ってクロックの周波数を自動的に±0.05%に補正可能な機能を搭載しているため、高精度の高速発振子を外付けしなくても高精度の計量を実現可能となっている。この発振回路は雷等で発生するサージへの耐性も高く、スマートメータに求められる屋外等の厳しい環境下でも安定動作を実現している。

低消費電力化により、バックアップ用電池も小型のもので対応可能となった。そのうえ、RL78/I1Bはバックアップ電源への切り替え回路も内蔵しており、バックアップ関連の回路は大幅に簡略化できる。

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(2)すぐに使える開発キット

RL78/I1Bを用いた電力メータ用開発キットは、「アナログ特性評価キット」と「単相メータリファレンス」の二種類がある。アナログ特性評価キットは、お客様が採用している電流センサを使って計測を行うもので、センサとRL78/I1Bの適合性を確認し、RL78/I1Bに搭載されている計量用のアナログ機能の特性評価を行なうことを主目的としている。お客様が使っている現在採用しているセンサを使って簡単に評価が開始できるため、お客様の電力計測ノウハウをRL78/I1Bに取り込む際に、最初に使って頂くキットになる(図4)。

図4:アナログ特性評価キット

図4:アナログ特性評価キット

単相メータリファレンスは、電力計測のための基本機能を全て盛り込んだリファレンスデザインで、これだけで電子式電力計量の国際規格であるIEC62053に準拠した計量部を構築できる。規格が定める0.5%精度の測定を実現している。このリファレンスデザインを用いれば、極めて短期間にスマートメータの開発が可能だ。

図5:単相メータリファレンス

図5:単相メータリファレンス

いずれのキットにも、ルネサスが豊富な経験を生かして開発した電力測定ファームウェアやセンサ読み取り値のキャリブレーション用ファームウェアなどが付属する。また、キットから受信した情報をパソコンに表示したり、キットにパラメータを簡単な操作で送ることができるGUIソフトも用意してあり、データの可視化やパラメータの変更が容易に行える。

ルネサスのスマートメータ開発ソリューション解説、前編の本稿では、スマートメータの市場動向と計量部開発向けソリューションを紹介した。後編では、スマートメータの通信機能開発の課題とルネサスが提供するソリューションについて解説する。