話題のルネサス製品:光学式手振れ補正用LSI

ソリューション: 7 of 20

スマホにも光学式手振れ補正 ルネサスの光学式手振れ補正用LSI

スマートフォンに光学式手振れ補正の搭載が始まり、話題を呼んでいる。従来方式の電子式では、補正データの増大と高演算処理が求められる高画質化への対応が困難であり、レンズの位置補正による光学式手振れ補正が高く評価されている。ルネサスでは、すでに、高性能な光学式手振れ補正用LSIを提供しており、ソフトウェア等も合わせて「プラットフォーム」として提供することで、お客様製品の光学式手振れ補正搭載を支えている。また、内蔵するフラッシュメモリに制御用ファームウェアを格納することで、製品の仕様や制御パラメータの変更に柔軟に対応し、製造時における自動チューニングはお客様製品の製造コスト削減に大きく貢献する。お客様から高い評価を得ている、ルネサスの光学式手振れ補正プラットフォーム、その開発をリードした二人の担当者、ルネサスの樫村雅彦とルネサスデザインの奥野浩秀に特長を聞いた。

ルネサスの「光学式手振れ補正用LSI」の実力

ルネサスでは、2000年代の早期から、光学式手振れ補正用LSIを開発し、多くのデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラに採用されてきた。この技術をもとに、スマートフォンに向けた光学式手振れ補正用LSIを開発し、すでにご採用いただいたお客様の製品出荷が始まっている。

ルネサスが提供する光学式手振れ補正用LSIである「R2A30515BM」は、出力段のドライバ回路に加え、ホール素子用のアンプやLSI 周辺に接続される多くのアナログ回路を内蔵し、さらには、ルネサスの誇る超低消費電力マイコン「RL78」と独自設計となる32ビット型DSPを搭載し、デュアル・プロセッサ構成としている(図1)。特に、専用開発されたこのDSPコアは、高速演算に適したアーキテクチャを有し、その消費電力の低さから社内では「GREEN DSP」と命名されている。

図1:「R2A30515BM」(ルネサス製光学式手振れ補正用LSI)のシステムブロック図。

図1:「R2A30515BM」(ルネサス製光学式手振れ補正用LSI)のシステムブロック図。

「RL78」の超低消費電力と「GREEN DSP」の相乗効果で、本体消費電力をわずか35mWに抑えている。

「『R2A30515BM』は、その駆動性能と制御アルゴリズムが相まって、優れた手振れ補正性能を発揮します。たとえば、通常の光学式手振れ補正用LSIは0.5 度までの振れ角に対応するのが一般的ですが、『R2A30515BM』は2度まで対応しています。また、DSPの単位時間当たりの処理能力が高いので、手振れ補正用の処理に加えて、ジャイロセンサ特有の温度ドリフトや、レンズや撮像素子を動かす際にアクチュエータから発生することがあるノイズ(鳴き)を低減させる処理も同時に実現することが可能です。アクチュエータの鳴きについては、他社の光学式手振れ補正用LSIと比べて10dB以上低いというデータも出ています。」(奥野)

実際に、ルネサスが行った実験データで、「R2A30515BM」の補正効果を見てみよう(図2、3、4)。

図2:実験は2Hz~10Hzの振動を作りだす振動機器を用いて行われた。

図2:実験は2Hz~10Hzの振動を作りだす振動機器を用いて行われた。

図3:0.5度、1.0度の手振れ補正結果。「R2A30515BM」による手振れ補正機能をオンにすると(下)、手振れはほとんど認められない。

図3:0.5度、1.0度の手振れ補正結果。「R2A30515BM」による手振れ補正機能をオンにすると(下)、手振れはほとんど認められない。

図4:1.5度、2.0度の手振れ補正結果。手振れ補正機能がオフ(上)では大きく手振れしている。

図4:1.5度、2.0度の手振れ補正結果。手振れ補正機能がオフ(上)では大きく手振れしている。

「R2A30515BM」による手振れ補正機能をオンにすると(下)、手振れは大きく抑えられた。

図5:「ルネサス光学式手振れ補正LSI」製品展開

図5:「ルネサス光学式手振れ補正LSI」製品展開

「R2A30515BM」を搭載したお客様製品は、すでに出荷が進んでいる。従来の電子式手振れ補正に比べて高画質なその機能は、ユーザ様の話題の的だ。

お客様の自由な製品設計を実現する

すでに量産に入っている第一世代のLSI「R2A30515BM」を皮切りに、いくつかのモデルが用意されルネサスの光学式手振れ補正シリーズが構成される。本シリーズでは、補正性能の高さと消費電力の低さに加えて、お客様の製品設計に高い自由度を提供する。 「たとえば、レンズや撮像素子を動かすためのさまざまな駆動方式に対応しており、手振れ補正LSIの側で駆動方式を制約するような事は起きないようにしている。もちろん、これらの駆動方式に適合するソフトウェアも用意しています。」(奥野)

「光路の補正も、レンズバレル方式とモジュールチルト方式に対応しています。四隅の歪など、それぞれに特長がありますが、撮像部分がどちらの方式であっても、ルネサスの光学式手振れ補正シリーズで駆動が可能です。」(奥野)

このように機械部分の方式や、駆動方式の選択の幅が広いことに加えて、ルネサスの光学式手振れ補正シリーズはフラッシュメモリを内蔵した自己完結した構造であることも他社製品との違いだ。CPUのコード用とデータ用にフラッシュメモリを搭載しており、電源投入時に、システムのROMからプログラムをダウンロードしてくる必要は無い。LSIの中にあるコードとデータですぐに処理に取りかかれる。また、SRAMも内蔵している。DSPについても専用のSRAMを内蔵している。このため、お客様が外付けのEEPROMを用意する必要は無く、少ない部品で手振れ補正を実現できる。なお、アナログドライバ回路、CPUにDSPとフラッシュメモリ、SRAMを内蔵した「R2A30515BM」のチップサイズは、縦2.7mm 横2.9mmという超小型だ。「チップ部品のように実装できる。」(樫村)

プラットフォームでトータルサポート

ルネサスが提供する光学式手振れ補正とは、光学式手振れ補正を実現するためのプラットフォームであり、機能を実現するためにお客様に提供する統合的なパッケージである。光学式手振れ補正用LSIに加えて、これを駆動するアルゴリズム(ソフトウェア)、製造時の自動チューニング方式、そしてルネサスによる高品質サポートという4つの総合的支援体制から成っている。特に、製造時の自動チューニングはお客様製品のコストダウンへの貢献が見込め、「お客様に大きな利益をもたらすものであると自負している」(樫村)という。

進化を続けるルネサスの光学式手振れ補正、その先に

ルネサスの光学式手振れ補正シリーズの、これからの展開について聞いた。「『R2A30515BM』の次には、第二世代の製品である『RAA305190GBM』を準備しています。こちらは、さらなる柔軟性が特長となっており、第一世代の『R2A30515BM』ではPWM駆動のみだった光学式手振れ補正のメカ部分の駆動が、PWM(パルス幅変調)とリニア駆動の両方が使用可能です。」(奥野)

PWMは、消費電力を少なくできるので、電源の容量が少ないスマートフォンなどには向いているが、カメラシステムの都合でリニア駆動を望むお客様も多い。そこで、これらのお客様の要望に対応すべくリニアとPWM 両方の駆動方式を取れるように対応した。手振れ補正を使用中に駆動方式を切り替えても、オートフォーカスなどがずれない対策も施されている。リニアとPWM駆動が切り替え可能になることで、ビデオ撮影時はPWM 駆動、スチル撮影時はリニア駆動といった使い分けにも対応する。

スマートフォンの普及は、今後も続くだろう。現在のスマートフォンがハイエンドとすれば、今後はより普及を狙った製品が増えてくるに違いない。普及型のスマートフォンには、こなれた画素数の撮像素子が搭載されるだろう。その際、有効画素数を減らさない光学式手振れ補正のメリットが際立ってくる。また、スマートフォンに加えてルネサスの光学式手振れ補正シリーズはスポーツカム(アクションカム)への搭載が考えられる。現在のスポーツカムは、手振れ補正を搭載していないか、電子式手振れ補正を搭載したものがほとんどだ。しかし、動きの激しいスポーツカムにこそ、光学式手振れ補正は有効だ。

現在は、手振れ補正用の光学部品を駆動しているこの技術だが、他の対象を駆動するアプリケーションも考えられる。「多方面のお客様の声をうかがう」という樫村の言葉に、ルネサスの光学式手振れ補正シリーズの幅広い用途への適用を確信した。

図6:「 RAA305170GBM」チップ外観

図6:「 RAA305170GBM」チップ外観