ルネサスが創る新市場「センサネットワーク」特集Part 1

ソリューション: 1 of 20

ルネサスの新市場開拓部は、近い将来に大きく成長すると見られる新しい市場に向けたソリューションの開発をリードする部署だ。ルネサスの強みをソリューションとして提供することで、新市場の創出と成長を促す。現在、新市場開拓部が大きな期待を寄せているソリューションのひとつが「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」である。本シリーズでは、ルネサスが業界に先んじてソリューション提供を進める「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」を全5回の連載で解説する。第1回目である今回は、新市場開拓部部長の豆谷智治がシリーズ全体を概観する。

ミッションは新市場の「創出」

高い技術力とグローバルな拠点を結ぶ連携を生かして、さまざまな国や地域に合わせ環境に配慮した製品やソリューションを提供して業界をリードしているルネサス。そのルネサスにおいて、近い将来に大きく成長すると見られる新しい市場を創出し、リードする役を担っているのが新市場開拓部だ。顧客のニーズを十分にくみ上げて、そのニーズに合わせてルネサスの強みを結集し、顧客志向で次世代製品を提供し、新市場の創出と成長を促すのが特長だ。そのため、さまざまな製品や技術を横断的に捉える必要があり、マーケティング本部に属している。下の図1はマーケットの成長曲線と代表的なソリューションを表している。新市場開拓部のミッションはAの「誕生期」の創出と推進だ。その新市場開拓部が、現在、大きな期待を寄せているソリューションのひとつが「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」である。

ルネサス エレクトロニクス マーケティング本部 汎用システム統括部 新市場開拓部 部長 豆谷 智治

豆谷 智治

ルネサス エレクトロニクス マーケティング本部
汎用システム統括部 新市場開拓部 部長

図1:マーケットの成長曲線。Aの「誕生期」の創出と推進が、まさに新市場開拓部のミッションと言える。

図1:マーケットの成長曲線。
Aの「誕生期」の創出と推進が、まさに新市場開拓部のミッションと言える。

スマート社会の「インフラ」、ワイヤレス・センサ・ネットワーク

数多くのセンサが協調して環境や物理的状況などのデータを採取するワイヤレス・センサ・ネットワーク、その中核となるのは、センサと無線送受信回路(RF回路)が一体となったワイヤレスなセンサ・モジュールだ。

データをやり取りする通信手段には有線(ワイヤード)と無線(ワイヤレス)がある。特に、センサ・モジュールが移動体である場合が多く、有線通信では実装がほぼ不可能になってしまう。

数多くのセンサが協調して環境や物理的状況などのデータを採取するワイヤレス・センサ・ネットワーク、その中核となるのは、センサと無線送受信回路(RF回路)が一体となったワイヤレスなセンサ・モジュールだ。

データをやり取りする通信手段には有線(ワイヤード)と無線(ワイヤレス)がある。特に、センサ・モジュールが移動体である場合が多く、有線通信では実装がほぼ不可能になってしまう。

ワイヤレス・センサ・ネットワークとは:

数々のセンサ付無線ノードが協調し、環境や物理的状況を採取することを可能とする無線ネットワーク

ワイヤレス・センサ・ネットワークのコア技術

  • 情報技術(IT): データ蓄積・管理・解析
  • センシング技術: 多種多様な状況を人に代わってデータへ変換
  • 通信技術: ノード間の通信経路を自律構築、再構築可能

図2:スマート社会のインフラ「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」

図2:スマート社会のインフラ「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」

ワイヤレス・センサ・ネットワークが重要視されるのは、今後、私たちの生活を支える基盤(インフラストラクチャ)になると期待されているからだ。安全で、安心で、豊かな生活を実現するスマート社会は、ワイヤレス・センサ・ネットワークが支えるだろう。

例えばすでに、気象観測ではワイヤレス・センサ・ネットワークが大いに活用されている。百葉箱や気象観測船、気象ブイなどに加えて気象衛星、レーダー、アメダスが気象に関連するさまざまなデータを採集し、そのデータをクラウド上で扱うことにより、気象データの新しい使い方や活用術が生まれようとしている。

標準化が進む無線ワイヤレス技術

ワイヤレス・センサ・ネットワークの普及には、技術仕様の標準化が欠かせない。開発企業がそれぞれ独自仕様のセンサ・モジュールを設計していたのでは、相互の通信に余計な手間がかかり、開発効率が悪い。そこで、各種標準化組織による技術仕様の策定作業が進んでいる。

加えて、無線通信は標準化の一方で、周波数帯域の割り当ては、国や地域によって異なるため、無線送受信回路の開発は、コスト低減とグローバル化の阻害要因とされている。現在、2.4GHz帯が世界各国で共通に利用できる周波数帯域である。このため、Wi-Fi®やZigBee®、Bluetooth®などのさまざまな無線通信規格がこの帯域を利用している。その反面、2.4GHz帯域は電波特性面、特に通信距離の問題がクローズアップされている。昨今、その改善策としてサブGHz帯域の標準化がグローバルに始まった。

図3:ワイヤレス・センサ・ネットワークの3要素と標準化の一例 ルネサスはワイヤレス・センサ・ネットワークに不可欠な3つの要素「ネットワーク」「ワイヤレス」「センサ」に対して注力している。

図3:ワイヤレス・センサ・ネットワークの3要素と標準化の一例
ワイヤレス・センサ・ネットワークに不可欠な3つの要素
「ワイヤレス」「センサ」「ネットワーク」に注目している。

ルネサスの新たな通信技術「ボディ・エリア・ネットワーク/可視光通信」を提案

前章で紹介したように、飽和状態にある2.4GHz帯を利用した無線通信に加えて、ルネサスは、二つの新しい無線通信技術を提案することで新市場の成長を後押しする。

 

(1)人体近傍を通信経路に利用する

人体の表面、内部又は周辺で動作する通信技術として、ボディ・エリア・ネットワーク(BAN)がある。BANではこのように通信範囲が人体近傍に制限されるためセキュリティ性が高い特徴を持つ。BAN技術は本シリーズの第2回目で詳しく解説する。

図4:BANに期待される応用

図4:BANに期待される応用

(2)可視光LEDの普及を通信に活かす

もう一つは、「可視光通信(VLC:Visible Light Communication)技術」である。可視光通信とは、人間の眼に見える「可視光」を利用した通信技術のことだ。何らかの理由によって電波利用が制限されている場所(水中、病院、航空機など)や、壁等により光が遮蔽される効果を利用した特定の場所(路上、屋内、車内など)で、ワイヤレス通信を実現する手段として期待されている。

可視光通信に期待がかかる大きな理由に、可視光発光ダイオード(可視光LED)の普及がある。LEDは高速な点滅が可能な光源であり、光ファイバ通信の光源に利用された実績がある。可視光通信では光ファイバではなく、空間内の通信に可視光を利用する。例えばオフィスに設置済みのLED照明を高速に点滅させることで、データを送受信する。可視光通信技術は本シリーズの第5回で詳しく解説する。

図5:可視光通信に期待される応用

図5:可視光通信に期待される応用

消費電力対策は、「省エネ」に加えて「創エネ」+「蓄エネ」

ワイヤレス・ネットワークの特長に、ロバスト性(頑丈さ)がある。自律的に通信経路を構築し、通信中に不具合が生じても、すぐに別の通信経路を構築するために、センサ・モジュールはネットワークの末端の機器であるだけではなく、ネットワークを構成する通信経路上のノードとしての役割を果たさなければならない場合もある。こういった自律的なネットワークを形成する必要がある場合、通信データの単位であるパケットの中で本来のデータ以外に付加する情報が増える。結果として通信のオーバーヘッドが増加し、ここのセンサ・ノードの消費電力が増加してしまう。

消費電力対策に対する取り組みが、エネルギ・ハーベスティングという考え方である。これまでは捨てられていたエネルギを利用して発電する技術であり、エネルギを創る「創エネ」と呼べる。太陽光エネルギや風力エネルギなどはもちろんのこと、メカニカル・スイッチを動かす力やドアを手で開閉する力、人間の歩行、工場やオフィスなどの排熱、工場における機械的振動といったエネルギを電力に転換し、必要なときに使えるように蓄電し利用する。

ワイヤレス・センサ・ネットワークではセンサ・モジュールの主電源へエネルギ・ハーベスティング技術の導入が進むだろう。詳しくは本シリーズの第3回で紹介する。

既存のセンサ・モジュール資産と新しいセンサ・デバイスを生かす

センサ・ネットワークでこれから急速に拡大するのはワイヤレスの領域だが、すでにワイヤード(有線)で構築されたセンサ・ネットワークが存在しており、有線ネットワークを前提にした標準のセンサ・インタフェースが利用されてきた。これら既存のセンサを今後も活用していきたいというお客様は少なくない。ルネサスはこのような要望に応え、既存のセンサの活用も支援していく。

また、人の感覚に近いセンサが数々誕生している。そのような新しいセンサの製造時の特性補正や、経時劣化を動的に(ダイナミックに)補正することを支援するツールとして「SmartAnalog」を提供している。

ルネサスの取り組みと応用事例

ワイヤレス・センサ・ネットワークは、人に代わって24時間監視するような場面で多く活用事例がみられる。 特に、コミュニケーションがとりづらい人(乳幼児や重病患者)や動物(家畜やペット)の生体モニタリングや、気象に加えて土地の状態などを含めた環境モニタリングのニーズがある。 ルネサスはそういったモニタリングのニーズに応えられるよう、ワイヤレス・センサ・ノードのソリューションを開発し、産学連携して実証実験を行っている。本シリーズの第4回で取り上げる予定だ。

最後に、ルネサスの「ワイヤレス・センサ・ネットワーク」に対する取り組みを解説する本シリーズの今後の予定をご紹介しよう。第2回が「ボディ・エリア・ネットワーク技術」、第3回が「エネルギ・ハーベスティング技術」、第4回が「ワイヤレス・センサ・ネットワーク応用市場の紹介」、第5回が「可視光通信技術」となる予定だ。ご期待ください。

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