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インダストリ4.0 次なる産業革命か?

グローバルウォッチ

インダストリ4.0 次なる産業革命か? 第1次産業革命の引き金は、18世紀における蒸気機関の発明と手作業の機械化であった。第2次産業革命は20世紀初頭、大量生産技術の実現に伴って生じ、第3次産業革命は電子システムとコンピュータ技術による生産自動化とともに進展した。ドイツ政府の取り組む「Industry 4.0」プロジェクトは、第4次産業革命の幕開けを意味するのか……。ドイツを拠点に活躍する、産業用ネットワーク技術の専門誌『Industrial Ethernet Book』の発行人Leopold Ploner氏がその真価を語る。

成熟が進む工業を再活性化する

ヨーロッパでは、ドイツをはじめとした先進工業国が、今後も長期的により高い競争力を維持していくことが経済成長にとって重要だと考えている。そのため、ドイツ政府は早くから「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」の分野に積極的だった。初期の取り組みは「高度技術戦略」と呼ばれ、さまざまな研究により技術イノベーションを生み出し、競争力を高めることを目指していたが、それらの多くの研究を統合して発足したのがIoTを基盤にした「Industry 4.0」プロジェクトだ。2013年には2億ユーロ(約280億円)もの大きな予算が割り当てられた。

「インテリジェント監視システムや自律システムの開発を推し進め、インターネットにより工場内外のモノとモノ(IoT)が連携することで、新しい価値やビジネスモデルの実現を目指す」

ドイツ政府が「Industry 4.0」プロジェクトの立案に踏み出すのには自然な流れがあった。自動車産業を筆頭とした組み込みシステムの分野で高い技術力を誇り、「Industry 4.0」のベースとなる「CPS(Cyber Physical Systems、サイバー・フィジカル・システム)」の実現に取り組んでいたからだ。

CPSとは、実世界とIT(情報技術)を緊密に連携させるシステムのことだ。実世界(Physical System)におけるセンサネットワークなどのさまざまな情報を、仮想空間(Cyber System)の高いコンピューティング能力と連携させ、より効率的でスマートなシステムを実現しようとするものだ。生産現場においては、設計や開発、生産などのあらゆるデータをセンシングし蓄積、分析することで、自律的に動作するインテリジェントな生産システムが構築される。例えば、視覚システムや各種センサを搭載した作業ロボットをネットワークでコンピュータに接続することにより、何も指示を与えなくても自分で考えて作業を行えるようにするものだ。

このCPSを進化させ、インテリジェント監視システムや自律システムの開発を推し進め、インターネットにより工場内外のモノ(IoT)と連携することで新しい価値やビジネスモデルの実現を目指すのが、ドイツ政府の戦略的施策、「Industry 4.0」プロジェクトだ。

「Industry 4.0」では生産プロセスのすべての要素、例えば製品の部品や製造装置などにIPアドレスを割り当てることで、個別にリアルタイムな情報を取得し、管理する。そして、市場ニーズや物流状況など、さまざまな外部環境の変化に柔軟に対応し、開発や製造、生産管理などのプロセスの最適化を実現する。これにより、工場の生産性を高め、在庫を減らし、製造とサプライチェーンのコストを削減し、収益の増加が期待される。

写真:ドイツのアンゲラ・メルケル首相(左)とイギリスのデービッド・キャメロン首相(右)
(提供:Industrial Ethernet Book、
撮影:Bundesregierung/Denzel)

「Industry 4.0」プロジェクトのワーキンググループは2012年1月に発足した。議長職にはSiegfried Dais 博士 (Robert Bosch 社) とHenning Kagermann 教授(German Academy of Science and Engineering)が就任、産官学からさまざまな有識者が参加し、ドイツ政府に対して施策を提言している。

産業界は現在、この戦略的施策を実践し、具体的な成果を導き出そうとしているところだ。Roland Bent氏(Phoenix Contact 社、Managing Director)は、ドイツのニュルンベルグで開かれたFA業界の展示会「SPS/IPC/Drives」の基調講演で、次のように語っている。「今後われわれには、高度な適応能力を備えた生産設備が必要となる。現時点で想定している範囲で調整が可能という程度の適応性にとどまらず、予期しない事態にも柔軟に対応できるような生産設備だ。FA産業ではネットワーク技術が、現在にも増して重要になっていくだろう」

世界に広がる第4次産業革命、生み出す利益とは?

図1:「 Industry 4.0」に取り組む工場は、相互に通信可能なコンポーネントのネットワークを基盤として構成される。

アメリカでも同様の取り組みを、主としてFA産業の大手企業がけん引している。Rockwell Automation 社、Cisco Systems 社、Panduit 社が、世界の主要FA企業で構成される非営利団体ODVA(Open Device Net Vendor Association)と協力して創設した業界団体「Industrial IP Advantage」は、産業分野の顧客が人、プロセス、データ、モノをネットワークに接続し、生産性の向上と競争力を高めることができるように、標準的なイーサネットとインターネットのプロトコルを使用する高セキュリティな通信の確立を目指している。

また、General Electric社は、航空機や電車、ガスタービンなどさまざまな産業機器にセンサを搭載して、個々の機器の状態に関するリアルタイムな情報を送信し、そのデータの分析により燃料の削減や、消耗品の適時保守、また稼働率の向上などにより運用の最適化を図る「Industrial Internet」を推進している。Bernd Heinrichs 氏(Cisco Systems社、Managing Director、Borderless Networks)は、2013年10月にオーストリアで開催された「IHS Industrial Automation Conference」の基調講演で、スマートオブジェクト(IoTによってネットワーク化されるさまざまなモノ)の数が現在の125億から2020年までに500億に増えると指摘した。電気や電話に比べ、普及率は5倍の速さで増加している。

「その潜在的な利益は、今後10年間で3兆8800億米ドル(約400兆円)に及ぶと見積もられている」

一方、「産業用ネットワークに接続されたデバイスが話題になると、プログラマブルコントローラに注目する傾向があるが、これは製造に使われるデバイスの半分に過ぎない」と、Paul Brooks 氏(Rockwell Automation 社、Business Development Manager)は語り、「目標は、単一のネットワークアーキテクチャで、今はコントローラに接続されていない、残り約50%のデバイスも統合できるようにすることだ」と続けた。

世界中で進む第4次産業革命、その潜在的な利益は莫大だ。業界団体「Industrial IP Advantage」の見積もりによると、世界中の製造業が生み出す、あるいは業界間で移転する潜在的経済価値は、2013年から2022年の10年間で3兆8800億米ドル(約400兆円)に及ぶという(図2)。

図2:業界団体「Industrial IP Advantage」の見積もり

(提供:Industrial Ethernet Book、
Source:Industrial IP Advantage)

  • 資産の活用:コストの削減など(6,750億ドル)
    ビジネス・プロセスと生産効率を改善することで、 販売間接費と売上原価を削減する。
  • 社員の生産性:労働効率の向上など(6,750億ドル)
    工数の削減や生産性の向上を実現し、人件費を削減する。
  • サプライチェーンとロジスティクス:無駄の排除など(7,290億ドル)
    サプライチェーン全体での無駄を排除し、コストを削減する。
  • イノベーション:市場投入までの時間短縮など(8,100億ドル)
    R&D 投資利益率を上げ、製品やサービスの市場投入までの時間を短縮し、新しいビジネスモデルとビジネス機会から収益を拡大する。
  • カスタマーエクスペリエンス:顧客の増加など(9,990億ドル)
    顧客のライフタイムサイクル価値を高め、顧客を増やすことによって収益を拡大する。

障壁はテクノロジより人にあり

「課題は、いかにして縦割り型の業務形態を打破し、より高い視点からネットワーク管理を集約していくかということだ」とDan McGrath 氏(Panduit社、Industrial Automation Solutions Manager)は言う。「IT側に対しては、指揮系統の統合にどのようなビジネス価値があるか、何を優先させるべきかを理解し、より先導的な役割を果たしてくれるよう希望する。OT(Operational Technologies)側は、IT側とより緊密に連携し、こういった技術を活かす必要があることを理解しなければならない。データの価値や、プラント運営に対する影響を考えれば、プラントのトップが先頭に立って、さまざまな障壁を打破し、縄張り争いを回避する必要がある」

言うは易く行うは難し、という言葉がある。明らかに利点があるにもかかわらず、「Industry 4.0」プロジェクトが現実のものになるには時間がかかる理由のひとつであろう。

20年の進展が革命につながる

Peter Herweck 氏(Siemens 社、Head of Corporate Strategy)は進化の積み重ねが革命につながると考えている。

本稿の最後に彼の言葉を紹介しよう。「我々は20年程度のスパンで考えている。少しずつ進化して20年積み重ねた時、現在と比べてまさしく革命が起こったと言えるだろう」

[寄稿]
Leopold Ploner
Industrial Ethernet Book 発行人
http://www.iebmedia.com/

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