~ユーザニーズに合わせたソフトウェアや開発環境、マニュアルなどの提供により、開発工数を削減可能~
2015年11月25日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:遠藤 隆雄、以下ルネサス)は、このたび、高機能化が進むスマートフォン搭載カメラ向けに、高精度かつ広範囲に位置決めを実現する高機能な光学式手振れ補正(以下、OIS: Optical Image Stabilizer)ドライバIC「RAA305315GBM」を新たに開発し、本日よりサンプル出荷を開始します。

 新製品は、(1)当社のOISドライバICとして初めて高性能32ビットCPUを搭載し、DSP(Digital Signal Processor)とのデュアルコアを実現しました。これにより、3サーボ制御が可能となり、各種アクチュエータ駆動に対応し、幅広いオートフォーカス駆動方式のサポートが可能になります。さらに今回、(2)光学式手振れ補正の開発で課題となる、レンズ位置を制御するソフトウェアの開発工数を削減するため、ユーザニーズに合わせて、リファレンスソフトウェアや開発ツール、各種評価ボードやマニュアルなどを提供します。また、(3)量産工程での固体のバラツキに対応するため、8,000万個以上のOISドライバICの出荷実績に基づく個体差調整パラメータを提供します。これを、内蔵のフラッシュメモリに記憶しておくことにより、ソフトウェアを書き換えることなく固体バラツキ調整が可能です。

 新製品「RAA305315GBM」のサンプル価格は1,000円/個 (税別) です。量産は2016年7月より開始し、2017年7月には月産1,000万個を計画しております。

 近年、スマートフォンに搭載されるカメラの高性能化が進み、カメラ機能はデジタルスチルカメラ並みに高精細で高画質な静止画や動画が求められるようになりました。それに伴い、従来の電子式の手振れ補正機能だけでは、高画質化ニーズに応えるには不十分となってきており、光学式の手振れ補正技術との併用や使い分けるケースが増えています。これに対しルネサスは、これまで培った光学式手振れ補正技術を活かし、CPUやDSPの性能向上や周辺部品の1チップ化、低消費電力化を実現しました。さらに、ノウハウと経験を活かして、ユーザニーズに合わせて、リファレンスソフトウェアや開発ツール、各種評価ボードやマニュアルを用意しました。これにより、高精度かつ広範囲にレンズの位置決めを実現する高機能な光学式手振れ補正機能を、短期にスマートフォンに搭載可能となります。

 新製品の主な特長は以下のとおりです。

(1) 32ビットCPU、DSP、フラッシュメモリの搭載により、3サーボ制御が可能になり高度な制御を実現

 高性能32ビットCPUとサーボ制御の処理に適したDSPを搭載することにより、3サーボ制御が可能。これにより、ボイスコイルモータ(VCM: Voice Coil Motor)(注1)やピエゾ(piezoelectric element)(注2)のほか、形状記憶合金(SMA:Shape Memory Alloy)(注3)方式のアクチュエータを駆動可能。またオートフォーカス機能では、オープンループ(注4)のオートフォーカス方式に加えて、新たにBi-Direction方式(注5)、クローズドループ方式(注6)に1チップで対応。カメラモジュールの小型化にも貢献。

(2) ユーザニーズに応じた各種ソフトウェアや開発ツールなどの提供により、開発工数の短縮が可能

 ユーザニーズに合わせた各種ツールや開発環境などを提供。さらに評価ボード(別売)も提供するため、直ぐに評価を開始でき、開発工数を短縮可能。

  1. 制御ソフトをユーザが開発する場合
    サンプルソースや各種マニュアルなどを提供することにより、ユーザは短期に制御ソフトを開発可能。
  2. ルネサスの提供するリファレンス制御ソフトを、ユーザがカスタマイズして使用する場合
    リファレンスソフトウェアやアプリケーションノート、またカスタマイズに使用する開発ツールやマニュアルを提供。これにより、ユーザは短期に制御ソフトをカスタマイズ可能。
  3. ルネサスの提供する標準制御ソフトウェアを、ユーザがそのまま使用する場合
    標準制御ソフトウェアを使用するための、アプリケーションノートやツール使用マニュアルを提供。これにより、早期に光学式手振れ補正機能を搭載可能。

(3) 量産工程における固体バラツキに対して、個体差調整パラメータの提供により量産工程の負荷を軽減

 8,000万個以上のOISドライバICの累積出荷の実績をベースに、量産時におけるカメラモジュールの個体バラツキを自動調整する個体差調整パラメータを提供。これを内蔵のフラッシュメモリに記憶しておくことにより、ソフトウェアを書き換えずに、固体のバラツキ調整が可能となり、量産工程の負荷を軽減。

(4) レンズシフト、レンズチルト、モジュールチルト方式など多様な手振れ補正(OIS)方式に対応可能

 フラッシュメモリに搭載するソフトウェアを置き換えることで、レンズシフト方式(注7)、レンズチルト方式(注8)、モジュールチルト方式(注9)の手振れ補正方式に柔軟に対応。

ルネサスは、高機能化が進むスマートフォン搭載カメラ市場向けに積極的な拡販活動および製品投入を計画しており、今後も、ユーザのニーズに応えてまいります。

新製品の主な仕様は 別紙(132KB)をご参照ください

製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/ics-for-motor-actuator-driver/ics-for-ois-driver.htmlをご覧ください。

以 上

(注1)ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor):スピーカコイ ルと似た仕組みで動くアクチュエータの一方式。

(注2)ピエゾ(piezoelectric element):電圧を加えることで動く圧 電効果を利用したアクチュエータの一方式。

(注3)形状記憶合金(SMA: Shape Memory Alloy):変態点以下の温度 で変形させても、その温度以上に加熱すると、元の形状に戻る特性 を有する合金を用いたアクチュエータの一方式。

(注4)オープンループ方式:フォーカス用レンズを1方向のみに駆動す るAFの一方式。駆動構造が簡素化されているためコスト的に優位な 方式。

(注5)Bi-Direction方式:フォーカス用レンズを駆動範囲の中間位置を 起点として駆動するAFの一方式。低消費電力駆動のフォーカス制御 に優位な方式。

(注6)クローズドループ方式:フォーカス用レンズの位置をホールセン サで位置検出するAFの一方式。高速で高精度なフォーカス制御に優 位な方式

(注7)レンズシフト方式:カメラモジュール内のレンズをメカ的にシフ トさせる手振れ補正の一方式。モジュールの小型、薄型化に優位な 方式。

(注8)レンズチルト方式:カメラモジュール内のレンズをメカ的に傾け て制御する手振れ補正の一方式。モジュールの小型、薄型化に優位 な方式。

(注9)モジュールチルト方式:カメラモジュール全体をメカ的に傾けて 制御する手振れ補正の一方式。光学的歪み(レンズ移動に伴うディ ストーションなど)が生じないため、高画質、広角度化に優位な方式。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に 属する商標または登録商標です。


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