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Seiji Mochizuki
Senior Principal Engineer
Hirotaka Hara
Senior Distinguished Engineer

CASE時代の車載システム開発における課題

現在、自動車業界では、次世代自動車の開発においてCASE(*1)に代表される新たな要件に対応するため、車載システムの開発手法の変革が必要とされています。

(*1) CASE : Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric

ネットワーク接続や自動運転に対応するためには、高い通信・センシング能力、認知・判断機能と制御機能の高度な連動、機能安全とセキュリティの充実などが必要とされ、システム、特にソフトウェアが大規模化・複雑化しています。このような複雑化に応じて、半導体デバイスおよびソフトウェアの個々の充実のみならず、システム全体のトータルソリューションの重要性も高まっています。

車載システムの開発プロセスは、車両開発、ECU(*2)開発、半導体(SoC(*3))開発の3レイヤーから成り、各レイヤーが連携して開発を進めていく必要があります。ここで、先に述べたシステムの大規模化・複雑化により、車両・ECU開発におけるSoC仕様の要件検討、そしてそれに対応するSoC開発におけるSoC仕様検討の長期化が進んでいます。また、車両・ECU開発において、SoCサンプルを用いて行うソフトウェア設計およびシステム検証も長期化しています。このような開発期間の長期化が進んでいくと、最新技術をタイムリーに製品に適用することが難しくなってしまいます。また、システム検証で不具合が発生し、その対策がSoC仕様にまで遡って対応が必要となる場合には、より多くの時間を遡らなければならず、手戻りリスクが増大しています。

(*2) ECU : Electronic Control Unit
(*3) SoC : System on a Chip

これらの課題を解決するため、SoCベンダーには、SoC開発期間の短縮とともに、車載システム全体の開発期間短縮を実現するような施策が期待されています。
ルネサスは,ソフトウェア開発およびシステム検証のシフト・レフトにより、

  • 車両・ECU・SoCの各開発が同期し並行に実施可能な手法を確立すること
  • 複雑化していくユースケースを開発早期に検証し大きな手戻りのない開発を実現すること

これらにより開発期間の短縮に貢献できると考えており、そのためのキー技術としてR-Car Virtual Platformを提案しています。

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R-Car Virtual Platform (VPF)の狙い

ルネサスは、デバイスの機能を仮想的に模擬するモデルであるR-Car VPFを提供することで、以下の実現を目指しています。

1.    プレシリコンでのソフトウェア開発による並行同期開発
従来、ソフトウェアの開発はSoC開発の成果物であるサンプルを用いて設計・検証を行っていたため、SoCとソフトウェアはシリアル開発になっていました。R-Car VPFを活用することで、SoC開発完了前にソフトウェア設計に着手し、SoCとソフトウェアを並行して開発することで開発期間を短縮することができます。

2.    上流でのシステム検証による手戻り抑止
従来、システム検証は車載システム開発における最下流で行っていたために、不具合による手戻り工数が大きくなっていました。R-Car VPFを活用してソフトウェアを早期に開発することで、システム検証をSoC開発完了前へとシフト・レフトし、手戻り工数を削減することができます。
また、従来はSoCとソフトウェアをシリアルに開発することから、SoCの設計時にソフトウェアの仕様が十分に検討されておらずSoC要件が確定していない、また、SoCの検証時にソフトウェアが存在せず実ソフトウェアで検証できない、というリスクを孕んでいました。R-Car VPFを活用しSoCとソフトウェアの設計・検証を同期して行うことで、SoC設計段階での要件漏れ抑止、および、実ソフトウェアでのユースケース検証によるSoC品質向上が期待できます。これは、SoC仕様にまで遡る手戻りの抑止、および、車載システムの仕様劣化のリスク回避へとつながります。

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R-Car Virtual Platform (VPF)の概要

R-Car VPFは、デバイスサンプルなしにソフトウェア設計が可能なシミュレーション環境です。R-Carの機能をレジスタインタフェースで模擬し、デバイス使用時と同じ感覚でソフトウェア開発が可能です。

想定用途(期待される効果)

  • デバイスサンプルの提供前にソフトウェア設計に着手可能、かつ、デバイスサンプルを用いたソフトウェア設計にシームレスに移行できます。
  • デバイスサンプルの提供前に、デバイスと制御ソフトウェアが協調動作するシステム検証を可能とします。
  • デバイスサンプルの提供後についても、ソフトウェアのリグレッションテストに活用頂けます。

主な特徴

  • CPUモデルを実装しており、ソフトウェアをそのCPU上で実行することができます。
  • DRAM などのメモリ空間への R/W アクセスが可能です。
  • アドレスマップおよび演算精度は、対応するデバイスと完全に一致します。
  • 各種IPのモデルを、市場要求に応じて順次追加しています。

R-Car VPFに内蔵されるSoCモデルは、デバイスに準じた構造になっており、CPUモデル上でソフトウェアを実行し、バスモデルを介して各種IPモデルを制御します。R-Car VPFとデバイスはバイナリ互換であり、プレシリコンでのソフトウェア開発とデバイスサンプルでのソフトウェア開発をシームレスに実行することを可能としています。IPモデルは、バスモデルを介したレジスタへの書き込みに応じて動作し、バスマスタ動作によるメモリアクセスや割り込み出力をサポートします。

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R-Car VPFは、デバイス上でのソフトウェア開発と同様の使用感を狙い、以下のソフトウェア開発向け機能を搭載しています。

  • CPU上で動作するソフトウェアとのユーザインタフェースとして、UART(*4)コンソールを装備しています。
  •  一部通信インタフェースは、実行マシンのリソースに接続して動作させることができます。すなわち、実行マシンのリソースを対向モデルとして、ソフトウェア開発を行うことができます。
  •  各種ソフトウェアデバッガと同期動作させソースコードデバッグすることが可能です。

(*4) UART : Universal Asynchronous Receiver/Transmitter
 

R-Car Virtual Platform (VPF)の開発状況

自動車用SoCであるR-Carシリーズは、現在第3世代品を量産中です。2021年以降、新規開発製品についてR-Car VPFの提供を目指し開発中です。
既に、R-Car VPFのプロトタイプを社内ソフトウェア開発へと適用開始しています。従来、デバイス開発と並行して机上にて設計を行い、デバイスサンプルの完成後にデバッグを行っていたのに対し、R-Car VPFを用いてプレシリコンでデバッグまで行うことで、お客様へのソフトウェア提供時期の早期化を狙っています。

今後、次世代自動車の開発におけるソフトウェア開発およびシステム検証のシフト・レフトを支援するため、お客様におけるプレシリコンでのソフトウェア開発を実現するR-Car Virtual Platform (VPF)を提供していきます。

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