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Akasaka Yuta
Akasaka Yuta
Staff Application Engineer
掲載: 2022年4月27日

私たちの身の回りには、エアコン、掃除機、扇風機など、モータが搭載された製品が数多くあります。将来、社会に大きな変化を及ぼすと期待されているロボット、ドローン、電気自動車などの実用化が進むと、さらに多くのモータが使われることになるでしょう。

さて、このように身近な存在であるモータですが、構造の違いによりいくつかの種類に分類されます。そのなかでもブラシレスモータが家電/産業用途などで広く普及してきています。ブラシレスモータの主な特徴は高効率性・保守性・制御性です。環境問題に対する関心が高まっている昨今では、高効率で駆動できるブラシレスモータの利用が望まれています。また、"ブラシレス"モータという名称の通り回転子との接点となるブラシが無いため、ブラシが摩耗してしまう心配がなく、メンテナンスの頻度や費用が少なく済みます。さらに、ブラシ付きモータではブラシと整流子の構造的な仕組みにより、駆動回路が無くても常にトルクが発生しますが、ブラシレスモータにはブラシや整流子はありません。その代わりに、回転子の位置に応じて流れる電流の向きや大きさをMCUが調整することでトルクが発生し、さらに、負荷が変化しても一定の速度を保って制御するなど、高い制御性も実現することができます。

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Fig1 Motor, Inverter, Converter and Power (ja)

ブラシレスモータでよく用いられる制御方法として、120度通電制御とベクトル制御の2種類があります。120度通電制御は6方向の電圧パターンを利用してモータを駆動する制御方法です。この制御方法は、MCUで必要な演算量が比較的少ないですが、回転子に働くトルクの角度が一定でないため、振動や駆動音などを大きく生じることがあります。一方、ベクトル制御は回転子に対して常に垂直方向にトルクを発生させる制御方法です。MCUで必要とされる演算量は120度通電制御に比べて多くなりますが、回転ムラが小さいことが特徴です。これより、特に精度の高い制御が求められるアプリケーションでは、ベクトル制御が利用される傾向にあります。

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Fig2 Two types of control methods (ja)

RL78は低消費電力が特徴の8/16ビットMCUです。RL78製品のうち、モータ制御用MCUとして使用される主な製品はRL78/G1F, RL78/G14, RL78/G1GRL78/G1Mです。以下に各MCUの特徴を記載します。

  • RL78/G1F: モータ制御向けアナログ周辺機能を搭載した多機能MCU
  • RL78/G14: ピン数やメモリサイズ、パッケージ種類を豊富に取りそろえた汎用MCU
  • RL78/G1G: アナログ周辺機能を内蔵した小システムMCU
  • RL78/G1M: モータ制御に必要な最小機能のみを実装した小型MCU
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Fig3 Motor and RL78 (ja)

必要とされる演算量が少ない120度通電制御は、これら4種類のMCU全てで利用することができます。一方、演算負荷が大きなベクトル制御は、上記のMCUの中では比較的演算能力の高いRL78/G1FとRL78/G14で実現しております。さらに、これらの制御方法以外にも、RL78/G1Fのアナログ周辺機能を活用することで、センサを使わずに回転開始前の回転子の角度を推定する初期位置検出や、コンパレータを利用して120度通電制御を行う高速回転ソリューションなども開発しております。
 
弊社では、これら各制御方式を実装したサンプルソフトを提供しています。120度通電制御を利用したサンプルソフトでは、ホールセンサを使用して、あるいはセンサを使用せずに、速度制御を行うことができます。また、ベクトル制御向けに、1つまたは3つの電流検出用シャント抵抗を使用してセンサレス速度制御を行う2種類のサンプルソフトを用意しております。この他にも、特定アプリケーションで活用できるサンプルソフトとして、上述の初期位置検出や高速回転ソリューションも用意しております。さらに、高電圧向けのセンサレスベクトル制御サンプルソフトのリリースも予定しております。このサンプルソフトは、株式会社デスクトップラボ製の高電圧向けインバータボード"T1003-A"(入力電圧範囲:AC 85 ~ 265 [Vrms]、定格出力電流:AC 1 [Arms])で動作し、冷蔵庫、シーリングファン、ベルトコンベアなど高電圧を使用したアプリケーションの開発にご活用いただけます。

モータ制御ソリューションの開発をサポートする開発支援ツールも各種提供しています。モータ制御評価ツールであるRenesas Motor Workbench (RMW)では、モータの特性パラメータの測定や、MCUの内部RAMに記録されている変数情報の波形表示などを行うことができます。また、Configuration File Generator (CFG)と呼ばれるポーティングサポートツールを利用することで、お客様がご用意された開発環境を使用してモータを駆動する際のパラメータの再設計を自動で行うことができます。これらの開発支援ツールの使用方法については、チュートリアルビデオをご覧ください。

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Fig4 Renesas Motor Workbench

詳細な情報につきましては、RL78 モータ制御ソリューションのwebページをご覧ください。

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