水資源を守る

人口増加や経済成長に伴う生活水準向上により、世界の水の需要は今後さらに増加し、世界的に水資源が枯渇するリスクが顕在化しています。一方で、半導体の製造工程では、大量の水を必要としており、水資源の枯渇が起これば、生産の停滞を招くことに加え、原材料の調達にも影響を与える可能性があります。

ルネサスにおいても、特に生産拠点において工業用水などから精製した超純水を半導体ウエハの洗浄や装置の冷却など、さまざまな用途に使用しており、安定的な操業を維持するために十分な量の水(淡水)の確保は不可欠であると考えています。また、サプライチェーン上において水の供給が滞った場合でも、半導体を製造する材料の購入が遅れ、その結果、当社製品の製造とお客様への配送が遅れるリスクがあると考えています。

ルネサスは、水資源保全は世界的な課題であるとともに安定した操業に不可欠であると認識し、全生産拠点において水源別の取水や使用量、排出先別の排水量などの情報の定期的なモニタリングや、地域や行政の法令や条例を遵守した排水の水質管理を行っています。また、リサイクル率を積極的に向上させ水の効率的な使用に努め、当社グループ全体で総使用量の原単位での改善を進めています。

水リスクがあると想定されている地域に位置する生産拠点においては、水使用の原単位での改善目標を設定し履行することで、当該地域の生態系に与える影響を最小限にする努力を続けています。また、水資源を育み、生物多様性の保全につながる森林の保護活動として、植樹も行い、水資源を守る森林づくりにも貢献しています。

水資源保全の方針と目標

ルネサスは水資源保全の方針として3つの方針と目標を掲げています。

方針

  1. グローバルな水資源保全として水の利用効率を改善する
  2. 効率的な水の使用としてリサイクル率を拡大する
  3. 水リスク地域(近隣等で水の十分な供給が危ぶまれる地域)における水資源保全を推進する

目標

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水総使用原単位の改善
  1. ルネサス全体の水の利用効率 を33%改善(原単位改善、2030年目標、2021年比)する
  2. 水の効率的な使用として、リサイクル率35%を目標に、那珂工場におけるリサイクル率を30%へ拡大させるため現場検証を開始する(2025年度目標)
  3. 水リスクに所在する生産拠点において、水使用量原単位(出荷金額ベース)の改善目標を設定し、水資源の保全に努める


ガバナンス

ルネサスは、水資源保全を事業戦略上の重要な観点の一つとして認識しています。よって、水資源保全に関連する活動のすべての全社的責任は、CEOにあります。水資源保全に係る方針や重要事項、機会・リスクは、CEOおよびCEOが指名する執行役員、サステナビリティ推進室により定期的に議論、見直しを行い、取締役会に対して、定期的に報告を行います。

サステナビリティ推進体制はこちら
環境マネジメントシステム体制はこちら

水資源の効率的な使用

ルネサスは、生産効率化や節水による使用量の削減を図ると共に、積極的にリサイクルし活用することで、水の効率的な使用を行いグループ全体における総使用量の原単位での改善を推進しています。

2022年度は、効率的な水使用に向けた改善活動に加え、国内の山口工場の閉鎖影響もあり、取水量は15,806千㎥と前年から約2%減少しました。リサイクル率はリサイクル比率の高い生産拠点が閉鎖したことなどにより約3%減少しました。水総使用量は23,403千㎥と前年から約6%減少しました。水総使用量の売上高原単位は売上高の大幅増もあり、2022年度は前年比で38%改善しました。

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総使用量推移
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総使用量原単位推移

ルネサスの生産拠点における水資源の有効活用

ルネサスの水資源使用は、95%以上が生産拠点であり、さらにその約90%を前工程(ウエハ製造工程)で使用しています。下図(ルネサス水循環概要図)はルネサスの前工程生産拠点における水循環システムの一例です。生産工程で使用された排水は当社内にある水リサイクル設備を通して純水プラントに送られ、再度精製されます。再度精製された水は生産工程での再利用や冷却塔で装置の冷却水として使用されたのち、排水プラントで安全な状態まで浄化処理を行い、排水されます。ルネサスは水循環システムにおいて、適応可能な範囲で最新の設備や技術を使用することに努めています。

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ルネサス 水資源循環概要図(代表例)

水リスクへの対応

水リスク地域の特定と生産拠点の水リスク評価

ルネサスグループの生産拠点における水リスク評価は、世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が提供している世界地図・情報ツール「WRI AQUEDUCT」を使用し、拠点毎に地理的に渇水などの水リスクの高い地域を特定しています。

評価の結果、当社の生産拠点のうち中国の2工場(北京、蘇州)で水リスクが高い地域に該当しており、今後、対策の必要性を含めた検討を進めます。尚、水ストレス(水需給の逼迫度)の高い地域に該当している中国の2工場(北京、蘇州)の2022年度の使用量は計385,572㎥であり、当社グループ全体の使用量の約2%です。

水リスクが高い地域の生産拠点における水資源保全対策

水リスク評価により特定された水リスクが高い地域に所在する当社の生産拠点(北京、蘇州)では、水使用の原単位の改善目標(出荷金額を分母とした原単位)を設定し、継続的に改善することで水リスク地域の水資源の保全に努めています。

中国拠点の水資源保全実績および目標

Renesas Semiconductor (Beijing) Co., Ltd.の2022年度の水使用原単位は2021年度比28%の改善となりました。2023年度は2021年度を基準年として10%の改善を目指します。

Renesas Semiconductor (Suzhou) Co., Ltd.の同期間の水使用原単位は2021年度比22%の改善となりました。2023年度は2021年度を基準年として22%の改善を目指します。

原単位(水使用/出荷金額)改善率 2022(実績) 2023(目標)
Renesas Semiconductor (Beijing) Co., Ltd. 28% 10%
Renesas Semiconductor (Suzhou) Co., Ltd. 22% 22%

水使用原単位改善施策                                       

  Renesas Semiconductor (Beijing) Co., Ltd. Renesas Semiconductor (Suzhou) Co., Ltd.
水使用削減施策
  • 量産効果による水使用原単位(水総使用量/売上高)の改善
  • メッキ・水洗工程での洗浄効率化により純水の使用量を低減
  • 生活用水及び緑化用水の節水活動の継続
  • 冷却塔の高効率化(冷却効率向上)により冷却水の補水量を低減
  • 純水の再生頻度の改善により一次純水の洗浄使用量を低減
  • 量産効果による水使用原单位(水総使用量/売上高)の改善
  • 生活用水の水圧の適切な調整による水使用量の低減
  • 冷却水配管(冷却水端末低圧力化)交換による冷却水使用量の低減
  • テスタ設備冷却方式変更による水使用量の低減
  • 生活用水及び緑化用水の節水活動の継続
效率化施策
  • メッキ・水洗工程の排水のリサイクル化により、メッキ工程の水使用量を低減    
  • BG研磨廃水、ダイシング冷却水、真空ポンプ冷却水のリサイクル化
  • 純水のRO膜の活用より水使用量を低減

中国拠点の使用(取水)、総使用(リサイクル含む)、排水量推移                                       

    2019 2020 2021 2022
Renesas Semiconductor (Beijing) Co., Ltd. 使用(取水)(㎥) 211,743 166,348 220,532 226,663
総使用(㎥) 254,680 190,061 246,189 256,273
排水(㎥) 169,394 133,078 154,501 181,331
Renesas Semiconductor (Suzhou) Co., Ltd. 使用(取水)(㎥) 128,850 134,917 144,818 158,909
総使用(㎥) 155,060 162,892 169,870 190,339
排水(㎥) 90,195 94,442 101,367 111,235

水資源の保全に向けたサプライヤーや地域との協働

サプライヤーとの協働

ルネサスは2021年にResponsible Business Alliance (RBA) 加盟すると共に、「ルネサスサプライヤー行動規範」を改定しました。本行動規範に定めた項目のうち、水の管理として以下を定め、これらへの賛同をサプライヤーにお願いしています。本行動規範について、すべての重要取引先(64社)からの同意、賛同をいただくと共に、多くのサプライヤーからも同意、賛同をいただいています。

  • 水源、水の使用・排出を文書化、特性化、監視、節水機会の発掘、汚染経路を制御する水の管理プログラムの実施
  • あらゆる廃水は特性化、監視、制御され、排出または廃棄する前に必要な処理を実施
  • 廃水処理システムと水槽・タンクの動作の定期的な監視および最適な動作と規制の遵守を確保

ルネサスサプライヤー行動規範はこちらをご覧ください。

地域社会との協働

ルネサスは水資源の保全に向けて、当社の生産拠点の流域関係者との協働を通じて、当該地域の水課題解決に努めています。特に、Renesas Semiconductor (Suzhou) Co., Ltd.では、地域における水資源の保全および排水における安全対策として、廃水排出に関する流量やpHなどの情報をオンラインモニターで毎時当社から環境保護局に報告し、共同管理しています。
事例:廃水排出をオンラインモニター管理
(環境保護局へネットデータ発信、1時間に1回)
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<事例>廃水排出をオンラインモニター管理


排水管理について

ルネサスは、排水時における周辺環境への影響の最小化するため、排水の水質に配慮しています。ルネサスグループのすべての生産拠点において各国および地域の法律、規制などを遵守するとともに、規制レベル以上の排水自主基準を設定し、管理しています。

関連法令への対応状況

排水関連法令に対する違反、環境事故、苦情件数 2019 2020 2021 2022
法令、条例違反 0 1 0 0
苦情 0 0 0 0


イニシアティブへの賛同

環境省ウォータープロジェクトに参加

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環境省ウオータープロジェクトロゴ

ルネサスは水資源保全の取り組みの一環として、2022年2月に「ウォータープロジェクト」に参加しました。「ウォータープロジェクト」は、2014年に施行された水循環基本法に基づき、健全な水循環の維持又は回復を目的とした取組の促進等を推進するため、日本の環境省が官民連携の活動として発足しました。
ルネサスは、本イニシアティブを通して当社の水資源保全への取り組みを紹介すると共に、水資源の重要性や保全に向けた当社の貢献について情報発信していきます。


SDGsへの貢献

ルネサスグループの水資源に対する取り組みは、以下のSustainable Development Goalsに貢献しています。

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6 CLEAN WATER AND SANITATION

6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。

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6 CLEAN WATER AND SANITATION

6.4 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取および供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。

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6 CLEAN WATER AND SANITATION

6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。

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6 CLEAN WATER AND SANITATION

6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。